第11話 騎士様と友人になりました

 


 息苦しい部屋の雰囲気に何回目かのため息を吐きながら、ミコトは騎士に昨日のことで謝るタイミングを見計らっていた。


(うぅ…昨日大泣きしてから気まずいんだよな。なんか今日は過保護だし…)


 いや、気まずさは前からか…とミコトが考えていると


「昨日はすまなかったな。ついイライラしちまってぶつけちまった。」


「いや!騎士様は何も悪いことしてないよ!むしろ俺の方こそ魔力運用がうまくいかないことでいらだって当たり前の指摘に逆上して…ってうわぁ俺最悪じゃん。ガキじゃないんだし…困っていたよね、ごめんなさい。」


 存在感のある壁となっていた騎士がいきなり謝ってきた。驚きはしたがミコト自身も騎士に謝れたことですっきり出来た。そんなミコトを騎士は不思議そうに見つめる。


「12歳なんてまだガキだろ。おまえのその…なんだ…大人びている態度に惑わされて、知らず知らずのうちに期待を寄せてしまっていた。大の大人たちが情けねぇ話だよな。すまなかった。」


 騎士は再び頭を下げる。


「今すぐ信じろって言われても無理だと思うから仕方ねぇけど…俺は最後までお前の味方であろうと思う。お前が失敗したからって責めはしない。元々は俺たちの国の問題なんだ。無関係だったお前を巻き込んで騒いでることの方がおかしい。きっと今頃議会の方で至宝探しの件について話し合われているはずだ。自分たちでも出来る限りのことをしようって…」


 騎士の言葉にミコトは驚く。何かがこみあげてくる。


「嬉しい…ありがとう騎士様…」


 世界中が敵になろうともこの人は味方であるって言ってくれたんだ。何もないミコトにとって今できることは疑うことよりも信じること。急にやる気がみなぎってきた。


「それと…俺ずっと騎士団育ちで男ばかりで口悪いから…嫌な思いさせていたらすみません…」


 また騎士が謝る。


「全然気にならないよ!むしろ俺も庶民だし…ここ最近敬語ばかりで肩が凝っていたから普通に話せる人がいて嬉しい。ねぇ、もっと話してよ騎士様。」


(不愛想でもなんでもないじゃん、いい人じゃん!)


 友人になれそうな予感にミコトは嬉しくなる。


「そうか、それなら…。なぁその騎士様っていうのやめてくれないか。」


「確かに、役職名って距離があるもんね。えぇっとカルバン様?カルバン殿?」


「……様も殿もいらねぇ。ただのアルでいい。…親しい人はそう呼ぶ。」


「そっか、わかった。アル、これからよろしくね。それと俺からも。聖女様もお前って言われるの嫌だ。ただのミコトでいい。」


「…わかった。」


 ミコトとアルは固い握手を交わした。


(いってぇ!握力半端ねぇ!!)



 ♢♢♢


 それからミコトとアルはソファに座っていろいろ話した。

 アルはミコトの体調を心配していたが押し切った。アルは28歳、所属してる第3騎士団について(ちなみに第1騎士団は王城や町の警備を、第2騎士団は魔物討伐、第3騎士団はなんでもござれで第1と第2のフォローをする時もあれば特殊部隊になることもあるらしい。だから何が起こるかわからない俺の護衛になったんだね!)、花の都ラスカロッサと緑の都グラスノーラの間にあるのどかな村に家族がいること、去年妹が結婚してこの夏には甥っ子か姪っ子が生まれることなど話してくれた。

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