第6話 王様の熱い思いに感動しました
通された部屋で王様と王妃と向かい合ってソファに腰掛ける。
「ようこそユースタリア王国へ。歓迎しよう。私は第24代国王アイザック・ユースタリア。こちらは王妃コレットだ。3人の息子と2人の娘がいる。クリスティアは末の娘だ。あなたの訪れを待ち望んでいた。」
クリスティアと同じどこか好奇心を隠せない瞳の王と金髪ゆるふわウェーブの王妃が挨拶する。
(美形家族…他の兄弟にも会いたい!!)
イケオジと美女を目の前に動悸が止まらないが必死で興奮を隠して冷静に(見えるように)実琴は返す。
「以前の聖女が作った至宝のメンテナンスをするようにと言われたのですが何をすればいいのですか?どんなものかも直し方も全くわからなくて…」
(というかそもそも私図画工作とか苦手だし、家電とかも適当に扱ってよく壊すし、取扱説明書読んでもチンプンカンプンだし、何より私文系!理系女子の出番じゃないの!?)
流されるままここまで来たが自分が不器用なことをすっかり忘れていたミコトは焦る。
(オカマにハグされて癒されるよりもっと他にやることあったー!)
「まずはこの国の成り立ちから簡単に説明しようか…
この国は女神エルカラーレが7部族と共に建国した国である。女神はそれぞれの部族に自身の分身とも言われる石を授けて天界へと帰っていった。それぞれの部族の長たちは石の守護者としてその土地の民と共に暮らしていたのだ。50年に一度、そなたの世界から聖女を呼んで石を磨き浄化してもらいながら…女神の分身である至宝は国中の瘴気を浄化し災厄を防ぐ。しかしながらその浄化作用は50年が限度でな。聖女による浄化、そなたの言うメンテナンスが必要であったのだ。
しかし50年に1度とはいえ、こちらの都合でうら若き乙女を呼びつけることに我々は心を痛めていた。最大限の配慮はしていたが向こうの世界での生活もあるしな…ある時代の聖女がこのシステムをどうにかしようと7部族の長たちを説得し、7つの至宝を集めた自動浄化装置を作ってそれ以来聖女を必要とせずに瘴気を浄化することが出来たのだ。今から300年ほど前の話である。」
(その聖女絶対理系だわ。開発職だわ。作ろう!って思い立って作れる才能がすごい…)
しかし自動浄化装置があるのならなんだって私が呼ばれたんだ?実琴は疑問に思う。
「身内ごとで恥ずかしいのだが、今から55年前に私の叔母、父の姉が第22代国王として即位した。叔母はこの国が大好きでな。国に一生を捧げる思いで“国との結婚”を表明したのだ。ひたむきな女王は国民から愛されていた。しかし叔母を誰よりも愛する男がおった。当時の宮廷魔導士だ。何度も求婚ししまいには既成事実を図ろうと無理やり…大事には至らなかったがその男は国外永久追放の処罰を受けた。全国民、そして愛する叔母からも嫌われて…自棄になった男は自動浄化装置を破壊し至宝を持ち逃げしたのだ。至宝を国外へ持ち出せば国は亡びる。それを狙ったのだろう。しかし隣国へと慌てて逃げていた男は足を滑らせて崖から転落、彼の遺体とともにあるはずの至宝は見当たらなかった。彼が隠したのか、それとも誰かが持っているのか、誰にもわからぬ。わかることは国が滅びていないことから至宝はこの国のどこかにあること、事件から49年…あと1年で災厄により国が滅びてしまうことだ…」
(わぁお…なんて迷惑なストーカー男…)
男の恋のライバルは王国そのものであった。壮大な悲劇だが、かといって無関係な国民を巻き込んではいけない。
「女王は責任を感じ、王位を弟、わが父へと譲位し神殿で女神への祈りをささげる巫女となった。王国には暗雲が立ち込めておる。滅びの恐怖に隣国へと亡命するもの、王家への不信感から反乱を企てるもの、至宝の場所がわからぬことから皆が疑心暗鬼になっておる。ギリギリの均衡であったのだ。ありがとう…王国へ来てくれて…感謝する…」
王は震える声で実琴に感謝の言葉を、そして手を握る。国民から信頼されていない中即位し、王政をしていくことに限界を感じていたのだろう。愛する国民を犠牲にしてしまった女王、そして滅びの足音を聞きながら頑張ってきた2代の王の思いを受け取り胸が熱くなる。
(間に合ってよかった…ってか後1年ってやばいじゃん!女神寝坊したとか言ってたな、どうしてくれんだおい!!)
「うまく言えないんですけど…私頑張ります。明日を信じてみんなが生活を送れるように。」
大変だったね。お疲れ様。そんな言葉をかけてあげられるほど私は何もしていない。何を言えばいいかわからないが労いの気持ちが伝わりますように…そんな思いを握りこめた手にそっと乗せる。
しんみりとした空気を換えるかのようにコンコンッとドアがノックされる。
「父上、失礼します。」
(ふぉー!!!めちゃくちゃキラキラした人たちが入ってきたよ!?)
3人の王子、そして王女が部屋へやってくる。
「初めまして。聖女様。第1王子のアークライトと申します。上から順に第1王女アイリス、第2王子リカルド、第3王子ジークハルト、そしてそちらにいる末っ子第2王女クリスティア。私たち兄弟はあなたの訪れを歓迎し、最大限の助力をすることを誓います。」
美形たちが頭を下げる。
「顔を上げてください!!」
焦る。めちゃくちゃ焦る。そして目の前の顔面偏差値に圧倒される。
「話を続けようか。あなたには至宝を探してきてもらいたい。」
気を取り直した王が話し始める。
「聖女は至宝と共鳴しあうという言い伝えがある。国中を周り、どこかに隠されている至宝を見つけてくれないか。すべて見つかったら自動浄化装置を作動させ浄化させる。1つ1つの至宝を浄化する儀式は1ヶ月かかる。捜索に費やす時間を考えるともう自動浄化装置を作動させる以外に方法がない。」
(方法がよくわからない浄化をするより、探し出すだけなら何とかなりそう…)
「わかりました。やってみます。それで共鳴の仕方というのは…?」
「…なんか感じる、呼ばれる気がするとかそういう不思議な感覚はないかね?
すまない、そこまでは伝わっていない………。」
(詰んだぁぁぁっ!!)
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