06 玄関



 逃げまどう人達が次に向かうのは玄関だ。


 そこは、最初に私達が踏み入れた場所。


 トラップがないのは、分かっていた。


 けれど、そこに踏み入れた者達が悲鳴をあげる。


 玄関に、無数の手形がついていたからだ。


 真っ赤なインク。

 ではない。


 鉄さびの匂いがするので、おそらく何かの生き物の血だろう。


 それが何の血なのかまでは分からない。というか考えたくない。


 ここで、気の弱いメンバーが倒れた。


 仕方のない事だ。


 閉じ込められてから、異常事態が起こりっぱなしだった。

 見回すと、脱出を諦めて呆然としている者達がへたりこんでいる。

 ここで、探索は一時中断。


 ゲームではしばらく、登場人物達の会話が続く。

 現実も同じだった。


 その後、ゲームでは場所を移動したり、キャラがたまに行動したりもするが、死亡者はでなかった。


 そこでいつまでもそうしているわけにはいかないので、私達は、犠牲者が出る前に、前もって安全を確かめていた部屋へ移動する事に決めた。


 医療品が供えられた、簡易的な救護室に向かう。


 その後は、動ける者達だけが行動する事になった。


 脱出口を探すもの、外への連絡手段を探すもの、と人数を分ける。


 あとは。

 この手の密室空間には、お約束がある。

 当然のように、携帯は繋がらない事だ。


 現実もその通りだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る