第一章第五節
<
それは以下のように定義づけられる現象の総称である。
世界に存在するあらゆる物理法則、現象法則の一部を無視する形で自然発生的に発現、一定領域に影響を及ぼす現象。影響範囲は一定せず、これまでの最大領域は「世界」。
超越現象全体を指し示し、人物や事物などの物質として顕現することもあれば、自然現象の拡大解釈や指向的性質を有する思考、文化、概念などの非実体として発生することもある。
これまでに様々な<
まず、<
それは過去に発生した事件や事故、過去に存在した人物や事物といった、現象の発生源となるものが存在すること。全くの異能が唐突に発生した事例はこれまでに確認されていない。
このことは非常に重要な要素の一つである。<
また、<
こうして幾度も世界に発生してきた<
しかしながら、<
榊には、それがどこか遠い異国の物語に聞こえていた。
しかし眼前に座る玖城は真剣な面持ちで言葉を重ねていた。言葉遣いは穏やかだったが、不思議な圧があった。
「サンタクロースが、どうして」
「サンタクロースという概念には<
そんなことを聞いているのではない。榊は小さな苛立ちを感じた。玖城という男は捉えどころがない。何を考えているのかわからない。こちらは教え子の両親を探しているというのに。
「玖城さん。私はどうして、サンタクロースが黒川の両親を奪ったのかと聞いているんです」
「落ち着いてほしい、榊先生」
恐らく、これまでにもうんざりするくらいに同じ質問を向けられてきたのだろう。もしかしたら、同じことを自問し続けてきたのかもしれない。
「大きな地震、強い嵐に意味はない。しかし私たちはそこに意味を求める。どうして被害にあったのか、どうして死ななければならなかったのか。無論、人災として防ぐことができた事案もあっただろう……しかし、これだけは覚えておいてほしい」
玖城は身を乗り出した。
「<
違う、俺が欲しいのはそんな説明じゃない。
「聞いてください。サンタクロースといえば全世界の子供たちの夢でしょう。クリスマスイヴの夜、子供たちにプレゼントを贈る存在だ。そこにはこんな悲惨な事件は関係がない。それなのにどうして、サンタクロースがこんなことをすると言うんですか」
それまで黙って壁際に立っていた少女が、しびれを切らして数歩近づいてきた。
「玖城さん、それは私も疑問に思っていました」
少女は榊に同意しながら、自身の問いを言葉にする。
「サンタクロースが<
二人から問われた玖城は、机の上で指を組んで頷いた。
「その理由は、<
榊は言葉に詰まった。言い返せない。論理は成立している。
「<ミラのニコラオス>は人々を救いたかった。しかし救うには物が必要だ。何もないところから食べ物を、手をかざすだけで病を癒すなど、それこそ神でなければ不可能だ。実際、<ミラのニコラオス>は多くの人々を救った。その手段は、まず人を救うことができるだけのものを手に入れなければ、できないことだ」
それが、黒川の両親だというのか。
話が繋がりそうでいて、繋がらない。分かったようで、判らない。
榊の表情から、釈然としない思いを読み取った玖城は、微笑みながら立ち上がった。
「それは私も同じだよ。この<
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