第8話死神

仮病大作戦をして、数日が経ったある日...死神は突然やってきた。


な、なんで...


なんで、あなたがここに居るんですかー!?



遡ること数時間前。



悲劇はティルが私を呼びに来た時から始まった。


「メラエルお嬢様。ルーバルクお坊っちゃまとテルフロード殿下がサロンでお待ちです。」


「え?ルークお兄様がですか?」


ふーん。なんの用だろう?


「はい。なので、お着替えしましょう。」


そう言うと、ティルは手早く私を普段着から来客用のドレスに着替えさしてくれた。


最初は、着替えさせてもらったりしたのにちょー抵抗あったけど...慣れって怖いわね。


ところで、なんで来客用なのかしら?誰かルークお兄様の他にいるのかしら?政略対象者じゃないといいなぁ。


「さあ、お嬢様。参りましょう。」


そうして、私は部屋からサロンに向かって行った。


しばらく歩くとサロンの扉が見えてきた。


ちなみに私、屋敷の構造が分かってきたんだよ?(ドヤッ)...まだ、半分も知らないけどね。


コンコン。


「お兄様、メラエルです。入ってもよろしいですか?」


しばらく待つと


「ああ。入っていいよ。僕の可愛いメラ。」


うっ!吐き気が...なんだよ、可愛いメラって...それに、僕のって私はお兄様のものになった覚えはありません!


「失礼します。」


吐き気と闘いながら、扉を開けるとお兄様ともう1人の美少年がソファーに座っていた。


ま、待って。あの美少年ってまさか...


「紹介するよ。テド、僕の妹のメラエルだ。

メラ、僕の友人のテルフロード・メルタリアだ。」


やっぱりーーーーーー!死神その1(攻略対処者のこと)来たー!!ちなみにお兄様は死神その2ね。


ていうか、ティルはあんたがいるって言ってな...ん?


脳内でリプライ中


「ルーバルクお坊っちゃまと殿がサロンでお待ちです。」


脳内でのリプライ終了


...ティル言ってたわ。


私は、テルフロードルートを思い出してみた。


テルフロード・メルタリア

メルタリア王国の第二王子

光の魔力保持者で、メラエルの婚約者。

金色のサラサラな髪に海のような綺麗な青色の瞳。

メラエルと同い年

王位後継者

第一王子が体が弱く、王位後継者はテルフロードだろう、と言われて小さい頃から勉強、勉強、勉強の毎日を送っていた。そんなある日、5歳の時にメラエルと婚約して、今度はメラエルに振り回されることになる。その合間を縫って勉強もしないといけないから、テルフロードのストレスは爆発寸前。そんな人生を送っていたテルフロードの前に純粋で誰にでも優しいヒロインが現れる。テルフロードは徐々にヒロインに惹かれ、それに気がついたメラエルはヒロインを虐め始める。ハッピーエンドならヒロインとテルフロードは結ばれ、メラエルは処刑。バットエンドなら、ヒロインとテルフロードは結ばれるが、メラエルが放った暗殺者によりヒロインは殺されかける、そして暗殺の黒幕であったメラエルは処刑。


とまー。こんな感じだったかな。

...ていうか、小さい頃から勉強、勉強、勉強って悲すぎ。子供なんだから、思いっきり楽しめばいいのに。


「はじめまして、フラード嬢。さっきルークから紹介があった通りテルフロードです。この間はお茶会に来られなくて残念でしたね。お見舞いにきました。もう、大丈夫ですか?」


そう言って、テルフロード殿下はニコッと笑う。女の子だったら、倒れるレベルなんだろうけど私はそうはいかないぞ!こいつに、将来断罪されるかもしれないんだから!

と言いますか...来れなくて、残念でしたねなんて絶対に思ってないだろう、こいつ。

お見舞いに来たって言ってるけど、多分お兄様が行ってあげてくれとかなんとか言ってたんだろ。


「はじめまして、テルフロード殿下。メラエルです。ご心配をおかけしました。もう大丈夫です。」


私がそういうと、テルフロード殿下とお兄様は驚いたように固まった。


「あ、あのー。どうかいたしましたか?」


私が声をかけると、テルフロード殿下が我に返ったように口を開いた。


「あ、ああ。大丈夫なら良かったです。これ、お見舞いの花です。ぜひ飾ってってください。」


そう言って殿下は薔薇の花束を差し出した。


きれーい!紫色の薔薇って初めて見た〜!すごーい!


「まぁ!ありがとうございますわ殿下。」


そう言うとまた、2人は固まってしまった。


ちょっと、2人とも固まりすぎじゃない?大丈夫?病気かなんか?


私が本気で心配し始めると、殿下の従者がやってきた。


「テルフロード殿下、そろそろお時間です。」


時間?殿下、今日なんか予定あったのかな?もしかして、その合間を縫って来てくれたとか?だったら、すっごい申し訳ないんだけど...


そう言うと、従者は殿下を屋敷を出て行った。


そう、抱えて。マジで、抱えて。あ、でも、脇に抱えてとかじゃなくて、お姫様抱っこね。


こうして、死神は嵐のように去って行った。


何事もなくて良かった。.....何事もなかったよね?












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