第74話  義姉兄妹と朝食

 寝落ちした俺たちは、ギルドから来たの使いの人の声で目が覚めた。

 さすがに目が覚めたばかりの月奈や姉さんを人前に立たせるわけにはいかないので俺が対応する。


「星空さまおはようございます。少しお時間よろしいでしょうか?」


「はい。えっと部屋の外でもいいですか?」


「えぇ問題ありません。これをお渡しするように言われただけなので」


 使いの人から手紙を受け取る。


「それでは私はこれで」


 使いの人はそのまま去っていく。

 それを見送り、俺は部屋に戻ることはせず二人に声だけかけ、二人が着替え終わるまで部屋の外で手紙を読む。


 内容としては昼前にギルドに来てくれというものだった。昨日の今日でもう準備が整ったということなんだろう。さすがはギルドマスターと言ったところか。


「兄さん着替え終わりました」


 着替えた月奈と姉さんが部屋から出てくる。


「あぁ分かったけど、二人ともその手に持ってるのは食材か?」


「はい。宿の人に厨房を借りて朝食を作ろかと思いまして。姉さんは……」


「わたしは月奈ちゃんのお手伝い。って言っても月奈ちゃんの料理の腕がすごすぎてあんまりやることはなさそうだけどね。あ、フィートとフクはお留守番させるからちょっと相手してあげてね」


 俺は楽しそうに厨房に向かう二人を見送り部屋に入る。

 手早く着替えを済ませ、寝落ちして散ら掛かっている魔道具を腕輪にしまう。

 そうしていると、寝ていたフィートとフクが起きてこちらに近づいてくる。


「ミャ―」


「ピェロー」


「おはようフィート、フク。姉さんと月奈は料理中だぞ」


 元気に鳴くながらもきょろきょろと辺りを見回す二匹に二人が部屋に居ないことを伝える。

 二匹は理解してくれたのか、辺りを見回すのをやめ、俺に近づいてくる。


「これは、暇だからかまえってことか?」


「ミャ!」


「ピェロ!」


 姉さんによるとフィートは外に出たりおもちゃで遊ぶことは出来なく、フクは長年神装が封じられた場所に一人きりだったらしい。

 そんな二匹ももう自由の身、これまで遊べなかった分遊びたいんだろう。


 俺は整理していた魔道具の中から、ボールのような魔道具を手に取り二匹に向かって放り投げる。


「ミャ!」


「ピロ!」


 二匹は目の前に飛んできたボールを取ろうとする、だがこのボール、見た目は普通だがあくまで魔道具。


「止まれ」


「ミャ!?」


「ピロ!?」


 二人は驚き、空中で止まる。ただ驚いたのは俺の言葉にではなく、空中で止まったボールにだ。

 このボールは魔力で動かすことが出来る物だ。あまり距離があると動かすことは出来ないが、部屋の中でなら動かせるし、ボールで部屋の中を壊すこともない。

 しばらく俺はこのボールで二匹と遊び、そして俺も二匹も飽きてきたころ、部屋の扉が開く。


「お待たせしました。朝ごはんです」


「あ、フィート、フク。おはよう。二人にも朝ごはんだよ~」


 部屋に入ってきた月奈と姉さん、二人の手には皿いっぱいに積まれたパンケーキが乗っている。


「今日は姉さんのリクエストでパンケーキです。はちみつやバターなどもあるので、お好みでどうぞ」


 俺はパンケーキを数枚皿に取り、月奈からはちみつを受け取りかけて食べる。


「うん、うん。……美味いな。パンケーキなんて久々に食べたが、おいしいよ」


 俺が感想を伝えると、月奈は嬉しそうに笑う。


「ありがとうございます兄さん!ですがその言葉は姉さんにも言ってあげてください。姉さんもすごく手伝ってくれましたから」


 そうなのか。なら姉さんにもちゃんと感謝しないとな。


 俺は二匹にパンケーキを食べさせてる姉さんの方を向く。


「姉さん、パンケーキすごく美味しいよ。ありがとう」


 姉さんはいきなりの感謝の言葉に驚いた表情をするが、すぐに笑顔をになる。


「そっか。パンケーキなんて初めて作ったけど、冷夜くんにそう言ってもらえてすごく嬉しいよ!」


 俺たちはゆっくりと朝食を楽しみ、しばらくしてギルドに向かった。








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