第四章 義姉兄妹と精霊と親友
第72話 義兄妹とトライド王国冒険者ギルド
俺たちはセカン王国を出発して多少の魔物との戦闘をこなし、約一週間と立たずにトライド王国に着いた。
「ここが、トライド王国の王都かぁ。すごいね、セカン王国よりもすごく発展してる」
姉さんは馬車から街の風景を楽しそうに見ている。
前の世界で家の中という閉鎖された空間でしか過ごせず、この世界に来ても悪魔が治めていた奴隷の国で過ごしていた、だからこそ見る物すべてが新しく感じているのだろう。
「確かトライド王国は流行の先端であり、多くの人が行きかうので多くの目新しい物を一早く見ることが出来るんですよね」
そう、師匠から聞いた話だがトライド王国は流行の先端。
「あ、あれって銅像かな?」
姉さんの目に留まったのは、両手にガントレットを装着した銅像。
「あれは、過去に召喚されたガントレットの勇者ですね」
銅像のモチーフとなっているのは三回目に召喚されたガントレットの勇者だ。
そのガントレットの勇者は戦闘というよりは、魔道具の作成などを主に行い、この世界の魔道具技術をは百年進めたと言われているらしい。
この勇者の存在が、トライド王国を流行の先端としている理由の一つであることに間違いないだろう。
そして、おそらくこのトライド王国に召喚された勇者もガントレットの勇者だろう。
「そっか、今からわたしと同じ勇者と会いに行くんだよね。なんか緊張するね」
「姉さん少し気が早いですよ。兄さん、たしかギルドマスターから依頼を受け取っていましたよね」
「あぁ。とりあえず王城よりも先にギルドに向かいたい」
一応王城に行ってもファスト王国の王様に書いてもらった紹介状があるので勇者に会うには会えると思うが、時間が掛かる可能性が高い。それにギルマスの依頼だ、どうせなら早めに終わらせておきたい。
「了解です。では冒険者ギルドに向かいましょう」
月奈はゴーレムに命令を出し、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
_______________
冒険者ギルドに着いた俺たち。ゴーレムを消し、馬車を腕輪にしまう。
「そうだ。姉さんこれを」
俺は腕輪から出したイヤリングを姉さんに渡す
「これってイヤリング?」
姉さんは突然渡されたイヤリングに驚きながらも身に着ける。
「兄さん。そのイヤリングって普通のアクセサリーというわけではないですよね?」
俺は月奈の疑問に頷く。
「それは月奈の帽子と同じ認識阻害の魔道具。黒髪は目立つからな」
ちなみに俺もいつまでもフードを被るのも面倒なのでネックレス型の魔道具をつけている。
「なるほどね。どう?似合ってるかな?」
「あぁ、似合ってる」
「はい。とても似合ってます」
姉さんは俺たちの言葉に喜びながら、俺たちはギルドに入った。
中に入ると、セカン王国とは違い、とてもきれいで大きな内装に、数多く様々な種類の人に武器、さすがは大国なだけあって数も質もすごい物だ。
「す、すごい。セカン王国とは大違いだ!」
姉さんはそんな冒険者ギルドの違いを見て、「ここ本当に冒険者ギルドなの!?」と言った風な驚いた表情をしている。
「さすがは大国と言ったところですね。私たちが行ったどの冒険者ギルドよりも大きくて綺麗な場所です」
「あぁ。さて、じゃあ依頼をこなすとするか」
俺は二人を連れ、受付に向かう。
「ようこそ冒険者ギルドへ。冒険者カードの提示をお願いします」
俺たちは受付嬢に従い冒険者カードを差し出す。
「はい、確認しました。今日はどういったご用件ですか?」
「えっと、これをギルドマスターに渡してほしいって依頼されたんだけど……」
俺はセカン王国のギルドマスターから受け取っていた紙を受付嬢に渡す。
「お預かりします。………これは、すぐにギルドマスターを呼んでまいります!」
受付嬢はかなり焦った様子で、ドタバタと奥の方へ走っていく。
「どうしたんでしょう?」
「さぁな。ただ随分と重要そうなものをギルマスは持たせてくれたらしい」
俺たちは少しはけて、姉さんは物珍しそうにギルド内を見渡して時間を潰す。
しばらくして、受付嬢が戻ってくる。
「お待たせいたしました。どうぞこちらへ」
俺たちは受付嬢に案内され、冒険者ギルドの上階へ向かった。
「失礼したします。星空さま方をお連れしました」
受付嬢に案内された部屋、おそらくギルドマスターの部屋に着いた。
そんな部屋に入ると、金髪で鋭い眼をした男が立っていた。彼がこの冒険者ギルドのギルドマスターなのだろう。
「ご苦労、下がってくれたまえ」
受付嬢はその場で一礼をし、部屋を去る。
そして俺たちとギルドマスターの四人が部屋に残る。
「さて、まずは自己紹介をさせてもらおう。私はこのトライド王国王都ギルドマスターのギル=サードだ」
サードさんの自己紹介を聞き、俺たちも各々自己紹介をする。
「サードさんですね。俺は星空冷夜です。こっちが……」
「
「
姉さんは慣れていない名字を言い直しながら自己紹介をする。そうして名乗る姉さんはなんだか少し嬉しそうだ。
「さて、さっそくだが、セカン王国のギルドマスターからの手紙読ませてもらったよ。君たちが魔王軍の幹部を倒したことや、そちらのお嬢さんが勇者様であることなどが書いてあった」
サードさんは姉さんを見て、頭を軽く下げる。
やはり勇者なだけあって、扱いは変わってくるのだろう。
「そしてこの国の勇者様に会いたいということも。私としてはすぐにでもこの要望を叶えたいと考えているんが、さすがに王との対面は時間がかかってね」
サードさんは顔を少しうつむかせる。
そんな中、俺と月奈は顔を見合わせ、腕輪から一枚の紙を取り出す。
「これでどうにかなりませんかね?」
「これは、手紙?」
サードさんは紙を受け取りながめると、封を止めている紋章を見て目を開く。
「それはファスト王国の王様に書いてもらった紹介状です」
「ファスト王国の!?なるほど、これならすぐに。……とりあえず一日時間を貰えるだろうか?これがあれば、早ければ明日にでも会うことが出来ると思う」
俺たちはサードさんの言葉に了承し、俺たちは冒険者ギルド後にした。
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