第64話 義姉兄妹とメイドと神装の在処

(メイティアの過去)


 私は故郷の村を出て旅をしていました。

 私の村はこの国からかなり遠い場所にあるかなり辺境の地です。

 だからこそ私は村から出て広い世界を見たかった、でもそのせいで私はこうなってしまいました。


 村から出た私は、旅の中で様々な村や国を回り、時に魔物や盗賊などとも戦いました。

 危険も多くありましたが、楽しいこともあり旅は順調でした。

 そんな日々が続いていたある日、私は大勢の人に襲われました。


 それも黒い瘴気を纏い虚ろな目をした人たちでした。

 私はそんな人たちの圧倒的な強さに敗北し、この国に奴隷として売られました。

 私は戦闘のセンス、そして他の人よりも魔力量が多いということからこの国のメイド奴隷として買われ、王のもとで働き、そしてカグラ様の専属メイドとなりました。





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「そして私は王の命令により、カグラ様を連れてこいとの命令を受け、みなさんに襲い掛かりました」


 俺たちはメイさんが泣きながら話すのを聞いていた。


「いくら奴隷として命令されていたとはいえ、ほんとうに申し訳ありませんでした……」


 メイさんは泣きながら頭を下げる。

 そんなメイさんを見て、姉さんはメイさんに近づき、


「メイさん、大変だったね」


 そっと、抱きしめる。


「頑張ったんだね。もう、大丈夫だからね」


「カグラ、様……」


 姉さんに抱きしめられたメイさんは静かに涙を流したのだった。








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「申し訳ありません。お待たせしてしまいました」


 メイさんは落ち着いたのか、俺たちお辞儀をする。


「落ち着いたならよかったです」


「うん。あとメイさん。そういうときは、ありがとうって言ってくれたほうがうれしいよ」


 月奈と姉さんの言葉に、メイさんは「では、」と姿勢を正し、


「みなさん、ありがとうございました」


 とお辞儀をする。

 そんなメイさんを月奈と姉さんが囲んで頭を撫でたり抱きしめたりとしている。

 見ていてとても心が温まる光景だ。


 だが、


「お二人ともそろそろ離れていただけると、それに冷夜様も助けてください」


 メイさんからの要請も出たし、そろそろ先に進まないといけない。


「月奈、姉さん。そろそろ。メイさんにも話してほしいことがありますし」


 俺の言葉に二人はメイさんから離れる。


「まず今の状況の整理をしたいんですが、メイさんの知っていることを教えてほしいんですが」


 俺の言葉に衣服を直したメイさんが頷き、話し始める。


「そうですね。まずはいま国中で起こっている奴隷が苦しんでいる現象ですが、知っての通り奴隷紋や奴隷の首輪から魔力を吸われています。ですがこれはすでに対象済みかと思われます」


 メイさんは俺の方を見る。

 そう思ったのは俺がすぐにネックレスを作り上げたからだろう。

 俺はギルドマスターに預けた呪いの緩和装置のことを説明する。


「……なるほどそんな魔道具を、さすがですね。なお吸われた魔力は王のもとに届き、王の力になっています。そして重要な王が何をしようとしているのかですが、」


 俺たちはゴクリと唾を飲み込み、メイさんの言葉を待つ。


「王の狙いは魔王の力の強化です」


 魔王、まさかここでその単語を聞くことになるとは。

 たしか魔王と邪神は同じ奴だって話だったな、ということはその魔王の手助けをしようとしてる王は……。


「兄さん。もしかして王様は、」


 どうやら月奈も同じ考えに行き着いたらしい。


「あぁ、たぶんそうだろうな。……メイさんいま王はどこに?」


「王は、城の最上階のホールにいます。ですが今のまま行っても勝ち目はないでしょう」


 勝ち目がないか……。


 メイさんの真剣な眼と言葉が何よりも本気で言ったということを物語っている。


「ですがカグラ様が神装を手に入れることが出来れば別かもしれません」


 その言葉に、その場に居る全員が反応をする。


「メイさん。それって、知ってるの神装の場所!?」


 メイさんは姉さんの言葉に頷き、指で下を指す。


「はい。神装は、この城の地下にあります」


 城の地下か。

 これまでいろんな場所に神装を探しに行ったが、まさか城の地下にあるなんて灯台元暮らしなんてレベルじゃないぞ。


「地下かぁ。このお城、地下なんてあったんだね」


 姉さんも知らなかったということは、やはり王が意図的に隠していたということだろう。


「なら、すぐに行きたいが、神装って手に入れるために試練があるから時間がかかる可能性もあるんだよな。さすがにその間王を放置するわけにはいかないよな」


 俺の意見にメイさんも頷いてくれる。


「はい。なのでここからは二手に分かれてカグラ様が神装を手に入れるまで王を止める必要がありますね」


 だが二手に分かれるといっても神装の入手はかなりの難易度と見た方がいい。

 剣の神装のときはかなりの人数で挑んだからな、今回は出来るだけ早く入手する必要があるし、


「俺だけで王を止める」


 これが最善手だろう。

 だが簡単には納得してはくれないだろう。

 俺の意見にいち早く声を上げたのは姉さんだ。


「ダメだよ冷夜くん!一人なんて、危険だよ!」


「分かってますよ。でも神装の入手の難易度はかなりの物です。だから出来るだけそっちに人手を割いた方が……」


 俺は姉さんに説明をするが、なかなか納得してくれない。

 俺はここで静かに聞いている月奈に声をかける。


「そういえば月奈は否定しないな、お前が一番に何か言ってくると思ったが…」


 俺のそんな言葉を聞き、月奈怒るというよりもあきれたといった感じで俺に詰め寄ってくる。


「兄さん。私は兄さんが無茶なことや自分を犠牲にするようなことには怒りますよ?ですが今回はちゃんとした考えのもとこれが最善だと思ったんですよね?」


 俺はそんな月奈の言葉に押されながら頷く。


「なら私はとやかくいいません。信じてるので。ですが細かく、ちゃんと説明しないと誰でも納得はできないんですからね」


 俺は月奈の言葉にひたすら頷き、姉さんに向き合う。


「えぇっと、姉さん。俺は別に王と戦うつもりはありませんよ」


「そうなの?」


「はい。あくまで俺は足止め。姉さんが神装を手に入れるまで出来るだけ戦わずに足止めに徹しますよ」


 俺の言葉に姉さんはしぶしぶと言った感じではあるが納得してくれた。


「分かったよ。でも本当に無茶はしないでね!約束だよ!」


「はい。分かってますよ」


 俺は姉さんの言葉に頷き、俺はメイさんに教えてもらった城の最上階へ、みんなはメイさんに先導されて城の地下に向かった。


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