第60話 義姉兄妹とギルドの依頼
遺跡探索から約二週間ほどたち、俺たちはその間にいくつかのクエストをギルドで受ける生活を送っていた。
「おう、兄ちゃんと嬢ちゃん。今日はカグラの嬢ちゃんも一緒か」
「ギルドマスターひさしぶり。あとフィートもいるよ」
「ミャ―!」
俺たちは今日の依頼を受けるために冒険者ギルドに来ている。
なお、最初にギルドに来て以来なんだかんだでギルドマスターと仲良くなり、特殊な依頼を受けさせてもらったり、直接話を聞いたりできる裏からギルドに入るようになった。
あとついでに、
「あ、冷夜さん。こんちゃーす!」
「妹さんも。お疲れ様でーす!」
酒場の一件以来あれを見ていた何人かの冒険者と依頼を受けたり話を聞いたりしたことで、俺と月奈は敬語で挨拶をされるような存在になった。
「二人ともずいぶんと尊敬されてるね」
「そうなんですよね。別に何もしてないんですが…」
俺がそう言うと、冒険者たちは「いや、いや」と姉さんに向かって話始める。
「何言ってんですか。冷夜さんと一緒に依頼を受けたとき、わざと難易度の高い依頼を受けて魔物に殺されそうになった俺を助けてくれたじゃないですか」
「そうそう、俺なんて冷夜さんに作ってもらったアクセサリーのおかげで恋人ができたんですから」
「わ、私は月奈さんに魔法を教わってパーティで活躍できるようになったんです!」
そんな風にどんどん話をしていく。
中には話を盛っているものもあるが…。
「冷夜くん、月奈ちゃん……。すごいね!こんなにいろんな人を助けて慕われてそれってすっっごくすごいことじゃん!」
「いや、俺は別に…」
「兄さんは謙遜しすぎですよ。そこは兄さんのいい点でもありますが…。もっと自分のしたことを自慢してもいいと思います」
「そう言ってもな……。っと今日は普通に依頼を受けに来たんだ。悪いが今日はおまえらに構ってる暇はない。悪いな」
俺がそう言うと冒険者たちは頭を下げながら飯を食べに席に戻る。
「それで、兄ちゃんたち今日はどんな依頼を受けに来たんだ?」
俺たちが冒険者たちの相手をしている間に用意してくれたのかギルドマスターは大量の依頼の紙を広げてくれる。
「今日は久しぶりに姉さんと依頼を受けれるからな。姉さんが決めてください」
「いいの?それじゃあどれにしよかな」
姉さんは勇者という立場があるのでそう簡単に外に出ることが許されない。
だから今日は姉さんにとっては久々に体を自由に動かせる機会なのだ。
なお今日はメイさんは城で仕事があるらしく同行はしていない。
そんな姉さんはいくつかの依頼を見比べながら結局一枚に決められず数枚の依頼を手に取る。
「この三枚を受けたいんだけど、いいかな?」
姉さんは俺と月奈に依頼を見せる。
内容はどれも森の中での魔物討伐。
多少難易度の高い魔物もいるが不可能だったり無理をするほどの物ではない。
「俺は問題ないと思いますよ」
「私も大丈夫です。最近依頼を受けること多くてこのあたりの地形や魔物にも慣れましたから」
俺や月奈の了承を受け、姉さんは笑顔で依頼の紙をギルドマスターに差し出す。
「…よし。それじゃあ兄ちゃんたち、気をつけて行って来いよ」
ギルドマスターの声を受け、俺たちは冒険者ギルドを後にした。
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「あれが、依頼の魔物ですね」
俺たちは依頼の魔物であるオオカミの魔物を見つけ、岩陰から様子をうかがっている。
「それでどうしようか?ここから月奈ちゃんの魔法を撃つ?」
「いや、あの魔物はかなり魔力に敏感なのでこの距離からだと避けられる可能性があります。なので姉さんと俺で動きを止めてから月奈がとどめをさす、っていうのはどうですか?」
俺の作戦に姉さんと月奈は頷く。
「じゃあまずは俺が出るので合図で姉さん、お願いします」
「分かった。任せて!」
俺は爆裂石を片手にオオカミたちの前に飛び出す。
そんな俺に気づいたオオカミたちに向かって爆裂石を投げつける。
「ワウッ!?」
オオカミたちは爆裂石の爆発に驚きながらも、爆裂石を投げつけた俺に向かってうなり声を上げながら突進してくる。
「よし、ついてこいオオカミども!」
俺はそんなオオカミたちに追われながらオオカミたちを誘導しながら走る。
そしてある程度の距離を得たところで姉さんに声をかけると共にツールバンドをオオカミたちに向ける。
「姉さん!」
「よーし!いくよ!フィートもお願い!」
フィートがオオカミをけん制すると共に姉さんは鞭をオオカミに向けて振りオオカミを拘束する。
さらに俺がツールバンドから粘糸を出し、オオカミたちに巻き付ける。
「月奈!頼む!」
そんな身動きの取れない状態のオオカミたちに向けて、月奈は魔法を放つ。
「『シャイニングバレット』」
月奈の放つ無数の光の弾丸が、オオカミたちを一掃する。
「よし!これで一つ目の依頼は完了だね。じゃあ次に行こう!」
姉さんの元気な掛け声と共に俺たちは次の依頼の魔物がいる場所に向かった。
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俺たちは次なる依頼の魔物が住まう崖の上に向かった。
「こんな高い場所にいるのか。依頼の魔物である怪鳥は」
二つ目の依頼の魔物は怪鳥。
そう呼ばれるほどの巨大な鳥の魔物だ。
そんな怪鳥は今いるような高い場所に生息している。
「ほんとにね。こんな場所から落ちたら大変だね」
姉さんは崖の下を覗き込みながら言う。
「そうですね。兄さんはともかく私たちでは落ちたら終わりですね」
「なるほど。冷夜くんなら問題ないんだね」
姉さんと月奈は崖のしたを覗きながらそんな会話をする。
そんな中、突如として上空から風が吹き荒れる。
「どうやら、お出ましみたいだ」
「「……!」」
上空を見上げれば風を起こした張本人である怪鳥が巨大な翼を羽ばたかせている。
「これが怪鳥。……ずいぶんと大きいね」
「そうですね。兄さん、どうしましょうか?」
「そうだな。まずはあいつを地上に落とさないとな」
俺は爆裂石をとりだし、月奈は魔法の準備をする。
「フィート、お願い!」
「ミャ―!」
鳴き声と共にフィートは火を吐く。
「『シャイニングバレット』」
フィートの火と共に光の弾丸、そして爆裂石が怪鳥に当たる。
だが、
「グルガァア!!!!!」
俺たちの攻撃は怪鳥には効かなかったようで怒ったように鳴く。
「兄さん、どうしますか?」
月奈は怒っている怪鳥を見ながら俺に聞く。
「そうだな。さっきの感じだと魔法だったり爆裂石だと距離がありすぎて有効打にならない感じだったからな。っと……!」
俺が怪鳥を観察していると怪鳥が羽を羽ばたかせ暴風を起こす。
「二人とも、姿勢を低くして、地面にしがみつけ!」
俺の言葉を聞き二人は瞬時にその場に伏せる。
そうしていると暴風が止む。
「ふう~。すごい風だったね。飛ばされそうだったよ」
姉さんは体を起こしながら服に着いた土を払う。
そして月奈も姉さんと同じようにしながら俺に声をかける。
「ほんとですね。それで、兄さん。さっきの話の続きは?」
「あぁ。さっきも言ったけど怪鳥に遠距離の攻撃は効かないと思う。だから俺が直接切り付けて地面に落とす」
俺は剣を抜きながらブーツに魔力を貯める。
「分かりました。落ちたところを私と姉さんで攻撃します」
「うん。でも直接攻撃って?」
そういえば姉さんには見せたことは無かったか。
「俺のブーツは風の魔法で高速移動できる能力と、魔力障壁を足元に張って空を跳ぶことが出来るんです」
俺は実際に跳んで見せる。
そしてそのまま怪鳥に近づき、
「はぁぁ!!」
「グ!?グルルル……」
俺は剣を振るい怪鳥の翼を切り、地面に落とす。
「おぉー。ほんとに跳んだ。それにあっと言う間に怪鳥を落としちゃった…」
姉さんは驚きながら落ちてくる怪鳥めがけて鞭を振る。
「よし。動きは封じたよ。あとは月奈ちゃんお願い!」
「はい。任せてください。『シャイニングブラスター』」
月奈が放った、光は一直線に怪鳥を貫く。
そして怪鳥が地面に落ちると共に俺も着地をする。
「よし。これで二つ目の依頼完了だな」
「はい。お疲れ様です」
「お疲れ様。それにしても冷夜くんのブーツ、すごいね!」
そうして一休みがてらみんなで崖の上で話していると、突如として強風が吹く。
「っ!二人とも!」
俺はすばやく身をかがめ二人の様子を確認する。
「大丈夫ですよ。兄さん」
「うん。わたしは結構崖ぎりぎりだけど大丈夫」
月奈はともかく、姉さんはほんとにギリギリだ。
先ほどいた位置もあり風でぎりぎりになってしまった感じだ。
そうしてその場で伏せていると風は止み、俺たちは体を起こす。
「危なかったですね。姉さん大丈夫ですか?」
月奈がぎりぎりの位置にいる姉さんを心配して近づく。
「うん。大丈夫、大丈夫」
姉さんは笑いながら体を起こす、その瞬間
「え?……」
姉さんの足元が突如崩れる。
「姉さん!」
月奈はすぐさま走るがすでに落ち始めている姉さんには追い付けない。
「きゃぁぁぁっ!!!!」
姉さんは、崖の下に落ちて行った。
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