第59話 義姉兄妹と魔石の使い道


「結局神装は見つからなかったね」


 神装入手のために遺跡に行った翌日。

 俺たちは王城内でくつろいでいる。


 結局遺跡に神装は無く、だが大量の魔石を入手し、ギルドの依頼を終わらせて昨日は帰ってきた。


「仕方ありませんよ。またありそうな場所を探しましょう。それに、兄さんは喜んでいますし」


 月奈は部屋の隅で遺跡で手に入れた魔石をいじっている俺に顔を向ける。


「冷夜くんは何をしてるの?」


 姉さんは俺に近づき魔石を眺める。


「魔道具を作ってるんですよ」


 俺は魔石の形を変えて姉さんに見せる。


「遺跡に行ったときに使った爆裂石。あれも自分で作ってるんです」


 俺が魔石を使い、実際に爆裂石を作ると姉さんは「おおー」と感心した様子を見せる。


「それってあのすごい爆発してたやつだよね!」


「はい。すごい爆発してたやつです。他にもありますよ」


 俺は魔石を様々な魔道具に形を変えていく。


「すごい!ねぇこの魔道具はなに?」


 姉さんは中々好奇心旺盛で魔道具について聞いてくる。

 そして姉さんは次に短剣の形をした魔道具を手に取る。


「それは短魔剣。刃に様々な属性の魔法を宿らせて物理的に魔法を相手にあたえることが出来ます」


 だがこの短魔剣、月奈がいるのでほとんど使うことは無い。


「なるほど。本当に冷夜くんは多彩だね」


「そんなことないですよ。そうだ、姉さんにいくつか魔道具あげますよ」


 俺の言葉に姉さんは目をキラキラとさせる。


「いいの?」


「はい。姉さんは闇魔法だけしか使えないんですよね」


 ちなみに光太が持つ魔法は光属性だけだった。

 もしかすると勇者は一属性だけしか魔法が使えないのかもしれない。


「うん。その闇魔法もあんまり使えないんだけどね」


 それなら更に自衛のための手段は必要だろう。

 ということで姉さんはプレゼントを買ってもらう子供のように目を輝かせながら魔道具を手に取る。


「じゃあ、これとこれがいいな」


 姉さんは短魔剣と閃光石を選んだ。


「分かりました。じゃああとはこれを」


 俺は短魔剣と閃光石を入れるようのホルダーを作り渡す。


「姉さんは俺たちみたいに異空間に物を収納できませんからね」


 姉さんは早速俺から受け取ったホルダーを腰につけ、魔道具を収納する。


「おぉ、かっこいい。ありがとう冷夜くん!」


 姉さんはその場で回ったり、魔道具を出したりしまったりし、嬉しそうにしている。

 だがそんな姉さんを似ている俺をジーと見る視線が刺さる。


「月奈?」


 そんな視線を向けてくる月奈は、俺が目を向けたとたんそっぽを向いてしまう。」


「あの、月奈さん?どうかしましたか」


「いいえ。別に。ただ兄さんが鼻の下を伸ばしてるなー、と」


 月奈は目を合わせることなくそんなことを言ってくる。

 別にそんなことは無いと思うが。


 俺は中々見ない月奈の姿を珍しいと思いながら、魔石の一つを手にとり思い描いた通りに形を変えていく。


「月奈」


 俺は出来上がった物を手に持ちながら月奈の後ろにまわる。


「なんですか。別に鼻の下を伸ばしている兄さんなんて…」


 俺は月奈が話終える前に出来上がった物を月奈の目の目に差し出す。

 月奈はそれを目にすると俺に顔を向ける。


「兄さん、これって」


「プレゼントだ。別に姉さんに渡したからってわけじゃない。せっかくいい魔石を手いれたからもともと作るつもりだったんだ」


 俺は月奈の手に魔石で作ったペンダントを渡す。

 そのペンダントに使った魔石は光が透き通るように透明で輝いている。

 この魔石は月奈の髪飾りと同じように、魔法を込めた物でなく魔力を込めておいて跡から使うことが出来る物だ。


「ありがとうございます。あと、さっきはすみませんでした」


 月奈は素直に喜び、そして頭を下げる。

 別にそこまであやまるほど気にはしていないが、こうして素直に謝れるのは月奈の美点だろう。

 俺は月奈の頭を軽く撫でる。


「別に気にしてないから気にするな。なんならやきもちを焼く月奈の姿を見れたからな、得した気分だ」


 俺がそんなことを言うと月奈は「やきもちなんて焼いてませんよ」と少し焦ったように言う。


 そしてこほんとわざとらしくせきをし、月奈はペンダントを俺に渡してくる。


「せっかく後ろのいるんですから、付けてください」


「あぁ、了解。ちょっと髪を上げておいてくれ」


 月奈は前を向き髪を上げ、俺はペンダントを月奈に付ける。

 月奈は髪を下ろし、俺の方を向く。


「どうですか?」


「あぁ、よく似合ってるよ」


 月奈は俺の言葉に嬉しそうに笑い、この空間は幸せな雰囲気に包まれたのだった。



















 ____________________

(???) セカン王国王の間


 そこには女が手に魔石を持ち、男に差し出す姿があった。


「どうぞ。遺跡で手に入れた魔石です」


「ふむ。まさかあの遺跡に魔石があるとはな。だがこれだけの魔石があれば実行は速そうだ。実行までに勇者とあの兄妹にまたいくつかの遺跡を回らせるのもよさそうだな。まぁどこに行っても神装なんてものは無いがな」


 男は笑いながら、魔石を手に取る。


「それでは引き続き、監視を頼むぞ」


「……はい」


 そこには、王冠を頭にのせる男に、膝まづくメイドの女の姿があった。

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