第58話 奴隷の国の遺跡探索
俺たちは冒険者ギルドを出た後、馬車を借り月奈の魔法で作ったゴーレムで遺跡に向かった。
「よーし、到着。ここが遺跡かー」
姉さんは馬車から降りると楽しそうに辺りを見回す。
「それでここは神装っていうのがある感じなのかな?」
姉さんは馬車から降りる俺たちに向かって聞いてくる。
「どうでしょう?確か剣の神装があった遺跡は日本語、俺たちの世界の言語が書かれていたんですけど」
俺の言葉を聞き、姉さんは遺跡の入り口を調べる。
「う~ん。それっぽいものは無いなー。そもそも私、二人の世界の言葉分からないんだよね」
俺たちは姉さんに近づき、ともに遺跡の入り口を調べる。
「確かにそれらしいものはありませんね。それに姉さんが言った通り、私たちが読めるとは限りませんよね」
そんな月奈のこぼした言葉に俺は首を振る。
「いや、それなんだが。文字さえあれば、俺たちみたいな異世界から来た奴なら読めると思う」
俺の言葉に月奈、姉さん、メイさんは首をかしげる。
「忘れたか?俺たちがどうして異世界でも言葉通じるのか」
「え、言葉が通じる理由?」
「あぁ!『管理者の加護』ですね」
どうやら姉さんには覚えがないようだ。
だが月奈の言う通り。
「そう。もしかすると姉さんの方は別のスキルかもしれないけど、自動的に言葉を変換してくれるスキル。それさえあれば別の世界の言語でも勇者には分かるしこの世界の人だと分からなくなる」
勇者や異世界の転移者に対して残すメッセージとして十分に活用できる。
本来の使い方とは違うが改めて言語翻訳ができる能力は便利だと思える。
「だとしてもメッセージが必ず書いてあるとは限らない。とりあえず中に入ってみよう」
俺の言葉にみんな頷き、俺たちは遺跡の中に足を踏み入れた。
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「思ったより暗いですね」
「そうだね。月奈ちゃんがこの光を出してくれてるおかげだよ」
俺たちは月奈の魔法により作り出した光を使用し、暗い遺跡の中を歩いている。
「いえいえ。ですがこの遺跡、何にもありませんね」
月奈の言う通り、遺跡やダンジョンで定番の宝箱はもちろん魔物すら一匹も出てこない。
「そうなんだよね。メイさんはどう思う?」
姉さんは最後尾のメイさんに声をかける。
「そうですね。……やはり情報が間違っていましたかね。申し訳ありません」
メイさんは頭を下げる。
「あぁ、ごめんね。違うの、別にメイさんを責めてるわけじゃなくてね」
姉さんは慌ててメイさんに近づく。
そんなやり取りを見ながらも歩くと、光のさす道、そして『魔力感知』の反応がある場所を見つけてた。
「姉さん、メイさん。この先に何かあるみたいですよ。月奈、光を消してくれ」
俺の指示に月奈は頷き魔法の光を消す。
「兄さん、何があるんでしょうか?」
「さぁな。だが『気配感知』には引っかからなかった。だから魔物ではないと思うが…」
だが師匠の話によると実体を持たない幽霊のような魔物もいる。
そういったものは『気配感知』に引っかからないらしいが。
「とりあえず俺が先行する。みんなは後からついてきてくれ」
俺の言葉にみんなが頷いたのを確認すると、俺は光のさす方に走り出す。
そこには光の正体があった。
「これが、光の正体か……」
俺が目の前の光景に夢中になっていると後ろから月奈たちが走ってくる。
「兄さん。これは…」
「わぁ~。きれいだね!」
「ほんとに。きれいですね」
俺たちを魅了するのは神々しい光を放つ大量の魔石。
「まさかこんな量の魔石があるなんてな」
「たしか魔石って結構貴重な物でしたよね」
月奈の言葉に頷くのは俺とメイさん。
姉さんだけは首をかしげる。
「そうなの?」
「はい。魔石は魔素の濃い場所で稀にとれる魔力を貯めることのできる鉱石です。その性質から強力な魔道具に使われる貴重なものですね」
「ちなみに兄さんの武器や道具にも使われています」
「なるほどね。ということは宝の山ってこと?」
姉さんは目を輝かせながら魔石を見る。
「確かに宝の山ですね。ですがこの魔石は採取していっていい物なんでしょうか?」
月奈はこの中でそういったことに詳しいであろうメイさんに聞く。
「そうですね。………別に問題は無いかと」
「えっ、ほんとですか!」
メイさんの言葉に一番反応したのはこの宝の山を見て気持ちを抑えていた俺だ。
そんな俺にメイさんは頷き言葉を続ける。
「もともと放置されていた遺跡ですからね。ですがこの魔石のうちのいくつかを王に献上したいのですが…」
俺はメイさんの言葉を了承し、採掘に取り掛かる。
「よし。じゃあみんなこれを」
俺は腕輪からつるはしを取り出す。
「月奈は土魔法での採掘を頼む」
「了解です。では、始めましょう」
こうして俺たちは大量の魔石を入手することに成功した。
だが結局この遺跡に神装は無かった。
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