第55話 義兄妹と奴隷の王の対面

 俺たちは奴隷の国に入り、王城へ向かって歩いていた。


「こうしてみると、首輪をつけてる人、奴隷の人が本当に多いな」


 この国は一歩歩くたびに新しい奴隷を10数人見ることが出来る。


「そうですね。それに、…子供の奴隷もたくさんいますね」


 月奈の言う通り見たところ大人よりも子供の奴隷の方が多く見られる。

 そのほとんどは力作業をさせられている。


「月奈、大丈夫か?」


 俺は月奈の頭を帽子越しに頭を撫でる。


「はい。心配ありません。大丈夫ですよ兄さん」


「そうか。けど、辛かったら言えよ」


 俺は頭から手を離す。


「ん?どうかした?月奈ちゃん」


 前を歩いていた姉さんが心配してこちらを振り向く。


「いえ、大丈夫ですよ。カグラ姉さん」


「そう?王城までもう少しだからね」


 カグラさんは前を向き歩き出す。







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 俺たちは王城へと着き、王様と対面するまで姉さんと月奈と共に王城の一室で待機している。


「もう少ししたらメイさんが来てくれるからそれまで待っててね」


 姉さんはそう言いながらお茶を出してくれる。


「ありがとうございます。……ふぅ、おいしいですね」


「あぁ、姉さんお茶入れるの手馴れてますね」


 俺たちは姉さんが入れてくれたお茶をテーブルの上に置く。


「そうかな?まぁ、ここに来てからやることが無いからね。たまに外に出られるとき以外は本を読んだりフィートと遊んだり、こうしてお茶を入れたりしてるからね」


 姉さんはフィートを抱えながら俺と月奈の反対側に座る。


 そうしてしばらくのんびりと過ごしているとコンコンと扉を叩く音がする。


「カグラさま方、王がおみえになりました」


 そんな言葉と共にメイさん、そしてこの国の王であろう人物が部屋に入ってくる。


「失礼しますねカグラさま。そしてカグラさまのご兄妹のお二方」


 王は丁寧にあいさつし、近くにある椅子に腰を掛ける。


「えー。まずは自己紹介をしましょう。わたしはこの国の王、ビラド=セカンです。どうぞお見知りおきを」


 どうやらファスト王国の王様とはかなり違った、礼儀ただしいく温厚な人柄のようだ。


「ご丁寧にありがとうございます。えっと、俺……自分はカグラの義弟の冷夜と申します」


「二人の義妹の月奈です。姉がお世話になっています」


 俺と月奈も事前に決めていた通りに名乗る。

 名字を言わなかったのは最初に姉さんがこの世界に来た時に家名を名乗らなかったためそれに合わせてのことだ。


「さて、早速になりますがお二人の事情はある程度聞いています。なんでも神からの依頼で勇者さまと接触を図っているのだとか」


 どうやらメイさんがすでにいくつか話をしてくれていたらしい。

 これなら早く話が進められそうだ。


「はい。その神からの依頼。この世界に召喚された勇者たちと出会い、神装と呼ばれる勇者にしか扱えない武器を探しているです。なので姉さん、鞭の勇者の神装についてないかご存じのことはないかと…」


 俺の質問にビラド王は顎に手をあて考えるが、しばらくして首を横に振る。


「そうですねぇ。申し訳ありませんがわたしは聞いてことはありません」


 その言葉に俺たちは肩を落とす。

 だが、


「ですが、この国の書庫にならば有益な情報があるかもしれまん。ただ、少し数が多いので多少時間はかかってしまうかもしれませんが、それでも良ければしばらくはここに滞在をしていただくのはどうでしょうか?」


 これは願ってもない話だ。

 ほかの神装のこともあるからあまり長いをしない方が良いだろうが、多少英気を養うと思えば悪くはない。


「そうしていただけるならば非常にありがたいです。お願いできますか?」


「ええ、もちろん。せっかくこの世界で再会できた姉弟なのですから、ゆっくりと再会を喜びあってください。っと、すみません公務を途中で抜け出してきたものなので行かなくては、それではまた」


 そう言って、王はメイさんと共に部屋を立ち去った。


 それを見届けた俺たちは、扉がしまると同時に肩力を抜く。


「ふぅー。よかった、なんとかなったな」


「はい。それに姉さんともうしばらくしは一緒に居られますしね」


「うん、うん。冷夜くんの作戦も大成功だったし、二人ともっと一緒に居られて嬉しいよ!」


 ミャ―とフィートも嬉しそうに鳴き、まるで一家団欒のような空気がその部屋には流れていた。


















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(???) セカン王国王城


 王城の廊下にてとある男女が歩いていた。


「まさか神の手先がここに乗り込んでくるとはな」


 二人のうちの一人である男がそんな言葉をこぼす。


「だが、逆に好都合だったかもしれないな神の手先だけあって魔力の質は中々のものだ勇者と合わせればとても素晴らしい物になるだろう」


 男はにやりと笑い女は黙って後ろをついていく。


「だが本当にあの二人は勇者の義兄妹なのか?」


「…はい。間違いありません」


 わずかな間を置き女は静かに答える。


「そうか。まあどの道が実行できれば関係ない。まだ準備には時間がかかる。それまで引き続き勇者たちの気を引くことを命じる」


「はい」


 二人の間には、冷たい空気が流れていた。



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