第54話 義姉兄妹と奴隷の国


「お、そろそろ見えてきたね」


姉さんは少し遠くに見える国を指さす。


「あれがカグラ姉さんの転移先の国ですか?」


「うん。あれがセカン王国。別名奴隷の国だよ」


「奴隷の……」


姉さんが言うには、セカン王国は普通の人より奴隷の方が多い国らしい。


だが、その奴隷も千差万別で犯罪を犯し奴隷となった犯罪奴隷、家族のため村のために身を売る奴隷など多くの奴隷が存在する。


「さて、国に入る前に王様に会うときに話を合わせないとだよね。……それでどうゆう感じで行こうか?」


姉さんの言葉に俺たちはあきれる。


「今更ですねカグラさま。確かに合わせる話は必要ですが、そんなすぐに案を出すのは難しいのでは?」


俺たちは王様に会うときに話す内容を考え始めるが、みんなお手上げという様子。


「そうですね、全然思いつきません。……こういうのは、兄さんに任せた方がいいと思います」


月奈の言葉に姉さんとメイさんは俺の方を見る。


「そうなの?冷夜くん」


「えっと、まぁ一応考えついては居ますけど。まずはですね……」


俺の考えた話の流れはこう。


まず事故により両親を失った月奈が俺の元に来て家族となる。ここまでは本当の話だ。そしてこの世界に飛ばされる数カ月ほど前に、同じく事故により家族を失ってしまった姉さんがフィートを連れ俺たちの元に来て家族、義理の兄妹となる。


そして俺たちは短い時だがともに家族として過ごし、そして不幸なことに俺と月奈は学校にて異世界転移に巻き込まれ、偶然にも家に居た姉さんとフィートも異世界転移に巻き込まれてしまう。


そして俺たちは互いに異世界に居るとは知らないながらも互いのことを思い、この世界で過ごし、運命の導きによってこの世界で再会をした。


「こんな感じですけど、どうですか?」


俺は一通り話を終えみんなの様子うかがう。


「さすが。さすがです兄さん!短時間ながらここまでのことを思いつくなんて!」


「うん。すごいね冷夜くん!ね、メイさん!」


「そうですね。カグラさまとお二人の出会いを最近にすることにより多少のぎこちなさもごまかすことが出来る。よい案かと」


どうやらなかなかに好評だ。


「でも一応姉さんが王様に自分のことをどこまで話してるのかとか、そもそもこの話だと姉さんの家族が亡くなってることになっちゃうんですけど……」


その辺りはどうなのかと、姉さんに尋ねる。


「うーん。王様にはあんまり私のこと話しては無いかな。基本的には数日に一回くらいで能力の検査?みたいなやつをやってあとは基本自由だからね。あと、わたしの家族のことは気にしなくていいよ。お父さんはともかくお母さんはもうほんとにいないからね」


姉さんは笑いながらそう言う。


「…わかりました。それじゃあこの話で進めていきましょう。あとの細かいところはアドリブで、本当にヤバそうだったら『念話』で指示だしってことで」


そんな俺の意見に異論は出なく、俺たちは奴隷の国へ足を踏み入れた。

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