第50話 最後の試練 勇者の選択


(月奈視点)


「兄さん!大丈夫ですか!」


 私は兄さんに近づき様子を見ますが、大きなダメージは無く、気を失っているだけみたいです。


「すぐに回復しますからね。『オーバーヒール』」


 魔法により、兄さんを光が包みます。


 ひとまず、目を覚ますまで寝かせておきましょう。


 ‥‥だけど地面の上だと頭が痛いですよね。


 そう思い、兄さんの頭を私の膝にのせます。


 あくまでこれは兄さんのためで、私が最近兄さんと触れ合えなくて寂しから、とかではありませんよ?


「ふふ。兄さん‥‥」


「おーい、月奈‥‥。ああ。少しそっとしておいてあげるか。さて、ここから移動するには勇者くんの指示が必要なはずだけど」


 エスタリアさんは辺りを見回しますが、なにも見つからないようです。


「仕方ない。私も少し疲れたし、休憩しようか…。あ、あれかな?」


 エスタリアさんの眼の先には床に現れた光る魔法陣が現れました。


「さて、これはどこに繋がってるのかな?」


 でも、その前に二人には幸せな時間を中断してもらわないと‥と、こちらに歩くエスタリアさんでした。




 ______________________________

(光太視点)


「っ!ちょっと、きついかな?」


 僕は現在、一体のゴーレム相手に苦戦している。


 数は一体だけど、巨大で、最初の試練で戦ったゴーレムより何倍も強い。


 これは、僕一人で倒すのは厳しいかな。


「できれば、『天光剣』はまだとっておきたいけど……」


 僕は武闘会での反省を生かして、剣を二本持ってきている。

 けど、できるだけ有効だになるときに使いたい。


 今は、相手の攻撃を避けるので精一杯だからね。


 あと、武闘会の時に使った剣を媒体にせずに使った『天光剣』は高付さんのバフや、結目さんの結界で魔力をまとめてもらわないと、ロクに使うことは出来なかった。


 だから確実に『天光剣』が使えるのは2回だけ。

 使いどころはよく見極めないと。


「と言っても、やっぱり助けが欲しいな…っと!」


 そんな風にゴーレムの攻撃を避けていると、頭の中に声が響く。


【チームの一つがゴーレムを全破壊しました。

 勇者はチームの行き先を決めてください。】


 早いな。この速度で終わるってことは冷夜くんか!


 ゴーレムから距離を取って、メガネで見てみると、予想通り冷夜くんのチームだった。

 だだ、その冷夜くんは妹さんに膝枕されてるんだけど、ほんとに仲が良いんだね。


 なんて、兄妹の団らんを見てなごんでる場合じゃないね。

 ゴーレムも近づいてるし、早く決めないと。


「どうしようか。できればこっちに来て欲しいけど…」


 僕はメガネで他のチームも見てみると、


「くそっ!こいつら強すぎる!」


「魔力が、もう尽きちゃいそう。これは、やばいかも!?」


「ああ、助け来てくれぇ!!」


 どこも、かなり苦戦してるね。


 そんな風に見ている間にも、敵は待ってはくれないわけで。


「っ!痛っ!…ちょっと、考え過ぎてたかな」


 少し腕をかすった程度で済んだけど、そろそろ決めないと。


 かすった腕を抑えながら、僕は冷夜くんたちを移動してもらう場所を決めた。





 ____________________________

(光太視点)


「はぁ、はぁ。さすがに、疲れたかな」


 冷夜くんたちを移動させて、数分、数十分たった。


 僕は一度『天光剣』を使て剣を一つ壊してる。

 それだけ、ゴーレムにもダメージは与えられたけど決定打にはなってない。


 それよりも、僕の方が攻撃を受けてるんだよね。


 冷夜くんたちには何回か移動してもらったから、もう全部のチームが合流してるはず。


「だから、もう少し粘ってみよう」


 僕は疲れた身体に鞭を打ち、剣を構える。


 その瞬間、


「よお、光太。疲れてるな」


 地面が光だし、よく知った顔の人たちが現れる。


「そういう冷夜くんは、ずいぶん元気そうだね」


「そうか?ま、さっきまで寝てたからな」


 正確には気絶だが‥‥なんて笑いながら言う。


「ただ俺が寝てたぶん、月奈は魔力が尽きてるし、他の先輩たちも体力と魔力の限界。あとは師匠だけど…」


 魔女さんは結界を張って、こちらにサムズアップをする。


「見ての通り、疲れた人達を守ってくれる。けど、戦えるのは俺たちだけだ」


「そっか。それで冷夜くんはどれくらい戦えるのかな?」


「そうだな…。アレの外側を破壊する。そのくらいだな。光太は?」


「僕は、君が外側を壊して、むき出しになった核を破壊するくらいはまだ、動けるよ」


「十分だな。じゃあ、いくぞ!」


 冷夜くんは腕輪から混合魔石を取り出し、掛け声と同時に走り出す。


 そんな冷夜くんにゴーレムの腕が迫る。


「『思考加速』」


 だが、それを冷夜くんはゴーレムの攻撃を読み最小限の動きで避けている。


「一つ」


 さらにゴーレムに触れて、離れる。

 それを何度も繰り返し、


「これで、十個め。これでいいだろ」


 冷夜くんは僕の元まで引いてくる。


「冷夜くん?何を?」


「爆裂石をあいつに埋めたんだ。まあ、見てろ。10、9、8……」


 冷夜くんはカウントをはじめ、それがゼロになった瞬間。


 ドゴンッッ!!!!


 と、ゴーレムが爆発した。


「さすがだね。冷夜くん」


「ほめるのはいいから、早く倒してこい」


「うん。これで終わらせよう、『天光剣』」


 剣が光に包まれて、巨大な光の剣になる。


 僕は爆発して動けないゴーレムに近づいて、剣を構える。


「『天光斬撃シャイニング・ブレード』」


 光の剣を振り下ろし、ゴーレムの核を破壊する。


【おめでとうございます。

 皆さんは最後の試練を見事突破しました。

 では魔法陣の中にお入りください。】


 声が頭に響き、地面に魔法陣が現れる。


 みんなは疲れた身体を動かしながら、魔法陣に入ったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る