第49話  最後の試練 義兄妹の戦い

(光太視点)


「なるほど。さすがは最後の試練だね」


僕は一人転移したさきの部屋で神装の声を聞いた。


最後の試練は本当に僕が責任を担うものだ。

それにここでは他の誰かに考えを聞くこともできない。


考えていても仕方ないな。


僕は開いた道を進もうとした瞬間、光るものを見つけた。


「これは、メガネ?」


こんなところに無意味においてある訳ないと思い、僕はメガネを掛けてみる。


すると目には見覚えのある人たちが見える。


「これは、ほかのみんなが見える魔道具なのか」


これで他のみんなの様子を見て、終わったチームをどこに向かわせるか決めるのか。

僕は、慣れないメガネを掛けながら道を進む。










______________________

(冷夜視点)


「くそっ、厄介だな!」


「兄さん!このままだと少し、きついです!」


剣撃音と爆発音が響き、魔法がゴーレムを貫く中、俺たちは苦戦をしていた。


正確にはゴーレムの破壊はできているが、数が多すぎてこっちの疲労がたまりつつあるのだ。


そして頼みの綱である師匠は、


「ああ、めんどくさいなぁ!」


小型で大量のゴーレムに囲まれて対処に追われている。


「まったく、久しぶりにこんな気持ちになったよ。『フレアスピア』」


師匠は愚痴りながら、魔法を放つ。


これは、何か一手を打たないとまずそうだな。


「兄さん!外側、削れました!」


「ああ、了解!」


‥‥その一手を打つのにも少し時間が欲しいな。


俺はブーツに魔力を込めて、跳びながらゴーレムを倒し、師匠に向かって叫ぶ。


「師匠ー!少しでいいんで、時間つくれませんか?」


「と、言われてもね。こっちも久々に苦戦して、‥‥あぁ、そうだ。冷夜!月奈と空に行って!」


どうしてですか?なんて言っている場合ではないので、すぐに月奈の元に跳びお姫様抱っこで空に向かって跳ぶ。


「兄さん!!?」


「師匠!こっちはオッケーです!」


その時、師匠を見たが、師匠は膨大な魔力を練っている。

そして手を下に向けると、


「『ウインド』」


膨大な風を起こした。それも自分が浮くほどの風。

その浮き上がった師匠は手を下に向けたまま膨大な魔力を開放する。


「『フレアバーン』」


その手から放たれたのは、ブラックドラゴンを山の壁ごと焼いた最強の炎。

そんな炎を食らったゴーレムたちは、一瞬にしてその姿を灰に変える。


まさか、空中から地面に魔法を打つことで強力な魔法を、狭い部屋の中で相手だけに当てるとは、さすがは師匠。


「よし!それで、冷夜。どうするの?」


俺たちは背中合わせに集合する。


ゴーレムを一掃できたが、次々と新たなゴーレムが出てくる。

また、すぐに囲まれるだろう。


「‥‥『狂戦士』を使おうと思ってます。これが最後の試練と言っていたので使っても問題ないかと」


ここが終わると他の場所や光太の元に行くらしいが、正直ここが一番きついと思う。

それに、他の場所なら月奈や師匠でどうにかなるはずだ。


「‥‥冷夜。分かってると思うけど君の『狂戦士』レベルが上がってるよね」


さすがは師匠、何でもお見通しだな。

師匠の言う通り『狂戦士』のレベルは上がってる。

原因は確実に光太との一戦だろう。


あれ以来使っては無いが、使えばほぼ確実に暴走すると思う。


「分かってますよ。だけど月奈と、師匠がいれば大丈夫だと思います」


「そっか。ならやってみるといい。弟子がどうなろうが、師匠である私が必ず助けるから」


師匠からの承諾は得れた。後は―—


「月奈も、頼めるか?」


俺が手を出すと、月奈はまっすぐな魔眼を向けてくる。


「もちろんですよ、兄さんのためなら。ですけど、無茶のしすぎはしないでくださいね」


月奈は俺の手を強く握る。


「ああ、できるだけ努力するよ。さあ、力をよこせ!『狂戦士』」


片目にあかが灯り黒い魔力が俺の身から溢れ出し、その黒い魔力を剣に纏わせる。


「う、ぐっ!これは、!?」


「兄さ…!!?大丈…ですか!!」


月奈が声をかけてくれるが、それもほとんど聞き取れない。


ただ分かるのは月奈を守らないといけないのと、まわりのゴーレムが敵であること、そして師匠がいざとなればどうにかしてくれること。


だから、俺がやるべきことは―—


「ぶち壊す!!!」


俺は、黒い魔力による身体能力強化とブーツを使いゴーレムに一瞬で接近する。


「壊れろ!『黒斬撃ブラック・スラッシュ』」


剣に纏わせた黒い魔力が、巨大な斬撃となり広範囲に渡ってゴーレムが核ごと真っ二つになる。


だが黒い魔力に耐えきれず剣もバラバラに壊れる。

だが替えの剣ならいくらでもある。


俺はすぐに腕輪から剣を取り出し、次の獲物に目をつける。


「次!次!つぎだぁ!!もっと壊れろ!!!」


俺は次々とゴーレムを破壊し、辺りにはゴーレムの破片と壊れた剣の残骸が大量に落ちている。


「つぎ!つぎ!つぎぃぃ!!!」


そうして破壊をしていくにつれ黒い魔力は膨れ上がり、やがてゴーレムをすべて破壊しつくした。


「つぎ、つぎは―—」


俺の紅眼に映っているのは、つきなと、ししょ……。


もう、破壊するものはな…い。


だが、もう破壊するものが無いと分かっていても膨れ上がった黒い魔力と破壊衝動は抑えきれない。


「ぐっ、ししょ…。つきなをつれて…にげ―—。うああぁぁぁぁぁぁぁ!!!?!?!?」


俺はどうにか黒い魔力と破壊衝動を抑えようと剣を捨て、自分の腕を片方の腕で抑える。


「冷夜!まりょ…をおさ…で。上…放て!」


師匠が何かを言っているのが見える。

どうにも天井を指をさしている。


てんじょう、うえ?上か!


「あ、あぁぁぁぁ!!!全部、ぶっ放せ!」


俺は上に手を向けて、黒い魔力を放出する。


だが、勢いが強すぎて上だけにとどまらず、壁にも地面にも手が向く。

魔力が当たった後はえぐれたような跡になっている。


「エスタリアさん。これは……」


「うん。すこし、まずいね。魔力を放出させるだけでここまでとは。ただ、このままだと私たちにも当たるかも!?」


俺の手は抑えがきかず、このままだと二人に当たる。


くそっ、止まれ!止まれ!とまれぇぇ!!!!


二人に魔力が当たる、その直前


「えっ?」


身体から力と黒い魔力が抜ける。


一瞬、師匠に影響かと思ったが師匠は月奈を守るため障壁を張る途中だった。


なら、だれが?


【見つけた】


そんな声が聞こえ、俺は意識を落とした。




































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