第48話 剣の勇者、最後の試練
壁の先の道を進んで行くと、またしても頭の中に声が響く。
【目に見えることだけで答えを出さず、自分の意思を貫く。そして、それを信じる。今代の勇者はよい仲間と信じる心を持っている。では、最後の試練です】
歩いた先は行き止まりになっており、そこには光る魔法陣がある。
「これは、入れってことだよね…」
光太は恐る恐るといったように魔法陣に入り、消える。
「な!?光太は!?」
先輩たちはいきなり消えた光太に驚く。
「この魔法陣は、転移の魔法陣だね。勇者くんがどこに転移させられたかは分からないけど。まあ、行ってみればわかるでしょ」
師匠は自分の言葉を証明するように魔法陣へ入る。
「はあ~。俺たちもいくか、月奈」
「はい!兄さん」
俺たちは手を繋ぎ、魔法陣へ入る。
そして残された先輩たちは、
「ああ!くそっ、行くぞ!」
元を筆頭とし、どんどんと魔法陣へ入っていた。
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「うっ。……無事、ではあるみたいだな」
俺は握っている手があることを確認しながら目を開く。
「ここは、どこでしょうか?」
月奈はあたりを見回すが、先ほどと同じような部屋にしか見えない。
ただ違う点といえば、先輩たちがいないことだろう。
「どうやら、別々の場所に転移させられた」
「あ、師匠。いたんですか?」
「いたよ…。まったく、いつまで君たちは手をつないでいるつもりだい?」
あぁ、言われてみれば…。
転移する際に離れないようにと手をつないでいたが、さすがに何が起こるかわからない状況で片手をふさぐのは問題だろう。
「あっ…」
手を離すと月奈は寂しそうに、自分の手を握る。
それを見て師匠は頭をかく。
「はあ~。怜夜。もう少し月奈の手を握っていてあげな」
「え!?あ、いや別にいいですよ!?まだなにが起こるかわかりませんから。…そういうのは全部終わったあとで…」
後半部分は小さくて聞き取りにくかったが、だいたい月奈の言いたいことは分かったので、とりあえずあたりを見回しここから出るヒントを探す。
「何もないですね。…また壁でも壊すか?」
そんなことを考えていると、壁が開き道が現れる。
「先に進もうか」
師匠を先頭に道を進むと、最初の試練の部屋に似た広い部屋に出た。
そして毎度恒例の声が頭に響く。
【最後の試練です。この試練では勇者の仲間を複数のチームに分けて配置しました。複数のゴーレムがチームを襲います。
ゴーレムはチームより少し強いです。
勇者は一人で戦います。勇者が戦うゴーレムはかなり強く、とどめは勇者にしかさせません。
ゴーレムを倒したチームは別のチーム、または勇者のもとに行けます。
ただし、どこに行くかは勇者がきめます。
勇者のもとに行った場合別のチームの元には行けません、逆は可能です。
この試練では、勇者による配置が重要です。
では、最後の試練を開始します。】
声が消えると同時に、四方八方からゴーレムが出てくる。
「はぁ〜。師匠がいて、少し強いレベルってかなり面倒なんじゃ…」
俺は剣を抜く。
「そうですね。ですが、…弱点は変わってなさそうですよ」
月奈は魔眼を発動させて杖を構える。
「仕方ないな。さすがに今回は手助けをするよ」
師匠も、珍しくやる気らしい。
というか、師匠と一緒に戦うなんてこれまでなかった気がするな。
「だけど、あくまで手助け。外側を壊したり足止めしたりするだけだから、止めはちゃんと刺しなよ?」
こんな時でも、スタンスは変えないのか。
師匠らしくはあるが…。
正直そこまでやるなら止めも指してほしい、という気持ちを抑え俺は、
「了解です。じゃあ、いくぞ!」
ゴーレムに向かって走り出した。
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