第46話 神装の試練②
ゴーレムをすべて破壊し終え少しの休憩をとり、俺たちは新たに開いた道に進んだ。
「【第二の試練は頭脳。知恵、知識、ひらめきを使い問を解け】」
またしても頭の中に声が響いた。
「頭脳か、でも師匠がいればこの試練は問題ないとは思うが―」
「さっきもいったけど、これは勇者くんの試練だからね。ヒントくらいは出すけど答えは教えないよ?」
だよな…。だとするとあとは光太たちがどれくらいの知識を持っているかだが―。
「大丈夫だよ。僕たちもこの世界の勉強はしてきたからね」
元を含めて何人かは苦手みたいだったけど、と、光太は付け足す。
…不安だな。
そんなやり取りをして歩いていると行き止まりにあたった。
「いきどまり。…もしかしてこれが問題かな?」
光太は壁の近くにある看板に目を止める。
【問1
以下の魔法の演唱文を読み、壁に手を当てながら魔力を流せ。
光よ先を照らし 『フラッシュ』】
「これが問題。見たところ、空白に部分を埋めて魔法を使うってことか」
これ、無演唱だったり勇者が魔法適性を持ってなかったらどうするんだ?
などと俺が考え事をしていると、光太が壁に手をつく。
「光よ先を照らしすべてを照らせ『フラッシュ』」
光太が演唱をし魔力を流すと壁が開き先の道が出てくる。
「正解だったみたいだね。よかったよ、簡単な問題で」
さあ、先に進もう。と光太は歩き出す。
「なぁ、月奈。今の問題ってどれくらいのレベルだ?」
「ええと。光魔法の中で最初にならうレベルですね。兄さん、何か気になることが?」
「いや、少しな。…ちゃんとわかったら教えるよ」
俺たちは先へと進んだ。
________________________
その後も数問は似たような魔法に関する問題が出され、光太は問題なく答えていく。
その問題も月奈に聞くと難易度が上昇しているらしい。
そうして先に進んでいくと、次は行き止まりでなく左右に分かれ道にでた。
右には〇左には×のマーク。そして分かれ道の真ん中に看板がある。
「さて、次の問題は…」
【問6
魔王軍幹部の魔物が2体いる。
そして近くには王国があり、2体はその国を狙っている。
そして王国から少し離れた場所で王国を襲う計画を立てていることをあなたは知った。
この場合あなたは幹部のもとと王国、どちらに向かうべきか。
幹部のもとは〇。王国の場合は×の道を進め。
※道の〇×は問いに関係ない。
「これは…」
「さっきまでとは完全に別物の問題だな」
さすがに問題が変わりすぎて光太も即答は出来ずにいる。
しばらくみんなで考えていると、ああぁぁ!と、元が叫ぶ。
「元どうした?」
「光太!俺はこの問題〇だと思う!」
「なんでそう思っんだ?」
「それはもちろん!悪いやつを早く倒すのが重要だと思うからだ!」
元は自身満々に言い放つ。
「なるほど。冷夜くんはどう思う?」
なぜか光太は俺に聞いてくる。
…一応答えは考えてあるがこの状況で言うのはなぁ。
だが、隣で月奈がキラキラした目で見てくるので答えないわけにもいかない。
妹の前では兄はいつだってかっこよくありたいのだ。
「俺は、×だと思う」
俺の意見のせいで、先輩方の視線が集まる。
そんな中でも光太は頷き、理由を話させようとしてくる。
「えっと、まず魔王軍幹部の強さってどれくらいなんですか?」
俺は、この中で唯一知っている人物に目を向ける。
「そうだなぁ。…一体で国一つを滅ぼせるレベルかな。このメンバーだと」
師匠は魔眼を発動させ、俺たちを眺める。
「全員で戦ったとして、もしかしたら勝てるかも?でも何人かは確実に死ぬね。それにもしかしたらだから。ほぼ確実に死ぬね。それでも何人かは生き残れると思うけど」
師匠は俺と月奈、あとは武闘会で戦った者を中心に見る。
「なるほど。まあこれで分かったと思いますけど、そんなやばいやつが二体もいるんです。だったらさきに国に戻って対策をとる方が賢明だと思います」
途中から光太と言うより先輩に説明してる感じだったので、口調を変えたが、当の先輩たちは納得していただけたらしく。おお~感心してくれている。
「うん。僕は冷夜くんの意見に賛成だな。みんなもいいよね?」
光太の問いかけに反対は一人も出ず×の方向に進んだ。
「あの勇者くん、なかなかやるね」
進んでいると、師匠が俺と月奈にだけ聞こえるよう小声で話しかけてくる。
「どういうことですか?」
「勇者くんは最初から×だと思っていた。けど冷夜にそれを言わせることで、冷夜が年下ながらもさえている人物だということをほかの人に示したんだよ」
「ふむ。でもなんでそんなことを?」
月奈は、「兄さんのことを認める人が増えるのは良いことですけど」と続けて師匠に聞く。
「そう、月奈の言う通り。あの勇者くんは他の人に冷夜を認めさせるためにやったんだ。冷夜、君ずいぶんと気に入られたみたいだね」
そんな師匠の言葉に、俺は喜んでいいのか分からない思いを抱いた。
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