第45話 神装の試練

 盗賊に襲われた騎士の人たちの手当ても終わり、盗賊たちを縛り上げ一件落着となった。


「よし。伝書鳩で国に報告を送りました」


 騎士が鳩を飛ばし、槍騎士と師匠に報告をする。


「ご苦労、少し休んでくれ。さて、こいつらどうしましょうか?」


「そうだなぁ。騎士たちはどれくらいの人数動けそうかな?」


「えっと、一応全員動くことは出来ますが、休ませたいのが何人か…」


 槍騎士は少し言いずらそう師匠に意見する。


「うん。じゃあその子たちとあと数人、国から別の騎士の子が来るまで盗賊たちの見張りを任せたい」


「了解しました。では魔女様たちはこのまま遺跡に向かうんですか?」


「そのつもりだよ。勇者くんもうちの弟子もやる気だしね」


 話がまとまったらしく師匠がこちらに向かってくる。


「話まとまったんですか?」


「うん。このまま遺跡に行くよ!」


 こうして騎士を数人置いて俺たちは遺跡へと向かった。





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 その後は何事もなく遺跡へ着いたが、盗賊に時間を取られ、着いたころにはすでに日が落ちていたので遺跡の前で一晩過ごし体調を整えて遺跡の中へ向かった。


「ここが、神装が封印されてる遺跡か」


 遺跡というだけあって、半壊されたような石の建物が複数ある。


 なお、遺跡の中に向かったのは俺、月奈、師匠に勇者一行。騎士たちには馬車の見張りをしてもらっている。


 半壊した建物を眺めながら歩いていると、一つだけいかにもな建物を見つける。


「もしかしなくても、これかな?」


 その建物の扉には剣のマークが書かれており、そのすぐそばには日本語で書かれた石板が置かれている。


「ええと、【この遺跡に挑まんとする我が後輩よ、扉に魔力を流し、神装の声に従え】、神装の声?」


 光太は石板の言葉を不思議に感じながらも、書かれているとおり扉に手を触れ、魔力を流し込む。


「こう、かな?」


 すると、ガガガッと、音を立てながら扉が開く。


 そんな扉の先は、異次元に繋がっていそうな虹色の空間が広がっている。


「みんな準備はいいかな?」


 光太の問いかけに俺たちと勇者一行の10数人が頷く。


「よし。行こう!」


 光太を先頭に、俺たちは扉の先へ向かった。




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 扉の中は辺り一面が白い空間になっている。

 そんな空間を見回していると、


「【我を求める今代の勇者よ。我が試練を突破しその力を示せ】」


 そんな言葉が頭の中に直接聞こえた。


「今のが神装の声か、月奈にも聞こえたか?」


「はい。見たところ皆さん聞こえたようですね。『念話』スキルと同じようなものでしょうか?」


 俺たちは先ほどの声について考えていると、光太が先に進もうとしているの話を中断して後ろをついていく。


 しばらく歩くと、高低差のある広い部屋にでる。


「【第一の試練は大人数に対する戦闘。そちらの人数×30体のゴーレム、合計約300体のゴーレムを相手に戦ってもらう】」


 その言葉を言い終わると同時に、部屋の様々な扉が開き人型のゴーレムが出てくる。


「いきなりだな…」


 俺は、すぐに剣を抜き月奈を背に隠すように前に出る。

 だが月奈は杖を構えて俺の横に出る。


「大丈夫ですよ兄さん。人数×30体、つまり一人30体倒す計算です」


 光太たちもまた、各々武器を構える。


「みんな、一人30体いくぞー!」


「「おう!」」


 光太の掛け声で、みんな一斉に走り出す。


「はあっ!」


「『シャイニングバレット』」


 武器、魔法と様々な方法でゴーレムを倒していく。

 このゴーレム、そこまで強くはないが耐久性が高く、数が多いので多少の苦戦をする。


「というか、師匠。なんで突っ立ってるままなんですか?」


 俺は剣を振り、爆裂石を投げながら師匠に叫ぶ。


 爆裂石だと、ゴーレムを一撃で破壊できないので改良が必要だな。


「いや、なに。私ならこのゴーレムをすべて破壊するなんて簡単だけどね、これは一応勇者くんの試練だからね。私は危なくなるまで手は出さないつもりだよ」


 なるほど。確かにこのゴーレムは俺たち一人一人の強さを元に作られた物ではない。


 そりゃ、レベル50ほどのダンジョンにレベル500くらいの人が入れば秒で終わるに決まってる。


「【残り10体です。なお、この10体はそちらの中の一番強い者を参考として作りました】」


 そんな言葉と共に大型のゴーレム10体が出てくる。


 そんな姿を見て一同は「まじか…」という反応をする。 


 そんな中俺は、


「師匠ー。出番ですよー!」


 師匠に呼びかけるが、師匠はすでに『魔眼』を発動させていた。


「あぁ、あれなら大丈夫。君たちで対処できるよ。やり方、しっかり見ていてね」


 師匠は、ゴーレムに手を向ける。


「『フレアスピア』」


 師匠は数本の炎の細い槍を出現させ、飛ばす。


 その、炎の槍はまるで生き物のように飛び、何度もゴーレムの中心部分を行ったり来たりし、ゴーレムの中心部はズタボロになり、そこからゴーレムの核のような物がむき出しになる。


 そして炎の槍が核を貫き、ゴーレムは倒れる。


「ね、こんな感じ」 


 師匠は「簡単でしょ?」と、言うように炎の槍を自分の元まで移動させて消す。


「いや、いや、いや。無理ですよそんな技。…月奈できるか?」


「えっと、さすがにあのゴーレムを倒すまで、魔法を操作するのは魔力が足りませんね」


 似たようなことは出来るんだよな、さすがは自慢の義妹。


 だが、月奈でも完璧にはできないなら、普通では無理だろう。


 師匠がやったのは、一度出した魔法を自分の思い通りに操作するという物だ。


 普通なら魔法は一度出せば操作できず、そのままの方向に進む。

 それを操作するには、繊細な魔力操作と、高いスキルレベルが必要になる。


 まぁ、あれをやる必要もないのだが。


「はぁ〜。師匠のスゴ技は出来ないけど、倒すのは出来そうだな」


「え?どうすればいいのかな?冷夜くん」


 光太がこちらに近づき聞いてくる。


「要するに、重要なのはあのスゴ技じゃなくてゴーレムの外側を壊して中の核を破壊すること。その核がゴーレムの弱点なんだよ」


「なるほど、そういうことか。よし、みんなで強力してあのゴーレムを倒そう!」


 こうして、弱点の分かったゴーレムは魔法組で外を破壊し、物理組で核を破壊するという連携技により破壊。


 無事に第一の試練を突破した。















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