第44話 遺跡までの道のり
俺たちは神装を手に入れるため遺跡へと向かうことに決め数日後、準備を整え馬車に乗って遺跡へと向かっている。
「いやあ、さすがは王が出してくれた馬車。広くて豪華だね」
馬車は複数台あり、俺、月奈、師匠が乗っている馬車と、勇者一行が乗っている馬車、あとは一応勇者という重要人物の遠出ということで騎士のが何人か同行している。
「いや師匠、そう言ってますけど、どう見てもこれ師匠が作った、もしくは設計した馬車ですよね」
俺が指摘すると師匠は「さすがよく見てるね」ほめてくれくる。
「この馬車は私が設計したものを王城の技術者たちが作ったものだね」
「なるほど。だからあんまり揺れないんですね。だけど、速度はそこまでじゃないですね」
月奈は窓の外を見る。
「一応これは貴族たちが乗るための物だからね。量産すると安全性と快適さを優先して速度まではコストの問題で手が付けられなかったんだと思うよ」
そんな話をしていると、急に馬車が止まる。
「っと!結構ゆれたな。月奈、大丈夫か?」
「は、はい。さすがは安全性を優先してるだけはありますね。もう目的地に着いたんでしょうか?」
月奈は体を起こしながら言うが、師匠は首を横に振る。
「いや、着くにしては少し早すぎる。それに、普通に着いたならこんな揺れ方はしない。つまり…」
「つまり?」
カキンっ、と馬車の外から金属同士を打ち合う音が聞こえる。
「襲撃だ!」
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馬車に外に出てみると師匠の言ったとおり、武装をしている盗賊のような男たちが騎士たちと戦っている。
「はぁっ!」
「くっ!やぱり、国の騎士だけあって、つえぇな」
見たところ騎士たちが優勢のようだ。さすがは王国騎士といったところか。
「やあ、そこの騎士くん。これはどういう状況かな?」
そんな風に俺が観察している間に、師匠は近くの騎士を捕まえて状況の説明を求める。
「え?あぁ、魔女様、それに君たちも!」
騎士は俺たちに向けても挨拶をしてくる。
「えっと、…?。月奈、この騎士の人誰か分かるか?」
「魔力の感じからみると、武闘会で戦った槍の騎士のひとじゃないですか?」
そんなことを、小声で話していたが、とうの槍騎士には聞こえていたらしい。
「魔法使いの子の言う通りだよ。まああの時も今も兜をかぶってるから分からないのは仕方ないと思うけどね。と、失礼いたしました。現在、いきなり襲ってきた盗賊を我ら騎士たちが対応中です」
槍騎士が説明している間にも騎士たちはどんどん盗賊たちを倒していく。
そんな中、
「隊長!負傷者です!」
騎士が、けがをしている騎士に肩を貸しながら歩いてくる。
「な、どうして?!…魔女様お願いできますでしょうか?」
「任せてくれ。『ヒール』」
師匠の魔法により、傷口がふさがれていく。
「う、うぅ……」
けがをしていた騎士は、回復すると同時に意識を失う。
「それで、なにがあった!」
「襲ってきた賊の中に、”賞金首”がいます。それもかなりの手練れです」
騎士はかなりあせったように言う。
「あの、賞金首って?」
「名前の通りなんだけど、わかりやすく言うなら倒して、騎士に引き渡せばお金がもらえる悪人ってところかな」
「つまりは、金がもらえるほど強くて厄介な悪人」
だから王国騎士がやられたわけだ。
「うおぉぉ!!!」
俺たちがのんきにしゃべっている間にくだんの賞金首が近づいてくる。
その姿は、2メートルに届くほどの巨体、さらにその巨体によく似合ってる大斧を持っている。
「おいおい、これはいったどういう状況だ?」
馬車の中からぞろぞろと勇者一行が出てくる。
さすがにこれだけ騒ぎになれば出てくるのも当然か。
そんな勇者一行、光太はこちらに向かってくる。
「冷夜くん。これはどんな状況かな?」
「説明をしたくはあるんだが。…とりあえず、あんたのお仲間に『結界』を張ってもらえるか?」
光太は頷き、仲間、結目が杖を掲げる。
「力よ、我らの敵を拒め!『結界』」
結目により辺りに結界が張られる。
「あとは、あれかな?」
光太は大暴れしている賞金首を指さす。
「説明が省けて助かるな。あとは、あれだけだ」
光太は剣を抜き、俺は魔石のついた手袋を装着する。
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「月奈と師匠は負傷者の手当てを。俺はあいつを」
「はいはい。いってらっしゃい」
「兄さんお気を付けて」
俺は、二人の言葉を背に受けて走り出す。
「それで、あの人をどう倒すつもりなのかな?」
俺の横を走る光太が聞いてくる。
「そうだな…。って勇者さまは待機していたほうが良かったんじゃないか?」
「そんなつれないこと言わないでよ。それに、僕以外のはもう暴れてるし」
よく見れば、残った盗賊の相手はほとんどが異世界メンバーがしている。
「僕らに気遣いは必要ないよ」
「え?」
「君は、妹さんや師匠さんに手伝ってもらったほうが対処は楽なはずなのにそれをしない。つまり、人と戦わせたくないんだろう?」
どうやら、この勇者はよく見ているらしい。
たしかに武闘会で月奈は戦うことができていた。
だが今は試合ではなく、命をかけた戦い、自分が死ぬことも、相手が死ぬこともありえる。
魔物と戦うのとは違う考えを持たないといけない、そんな物に、あまり月奈を近づけたくないし、経験するのも今でなくていいと思う。
それに治療だって重要な使命だ、まずは直接じゃなくて間接的に少しずつ、こういうものを知るべきだ。
「君は、過保護だね」
「そうかもな。けど、
俺と光太は一度話すのをやめ、俺は走り速度を上げ、光太は逆に下げる。
「はぁっ!!」
俺は走りながら靴の裏で地面を踏み込み、跳躍、そしてそのまま賞金首に蹴りを入れる。
「くっ!!?な、なんだ!?」
蹴りは見事に顔面へ、とはらならずギリギリで防御されてしまう。やっぱり蹴りだけじゃ無理か。
「騎士の皆さんは一度下がって、ここは僕らにまかせてください」
「おお、勇者様。ありがとうございます!」
「あとは、おねがいします!」
傷つきながらも、戦っていた騎士たちを光太が後ろに下げる。
「まさか、ここまで騎士たちが苦戦するとは」
「冷夜くん。何となくだけどあの人、君のスキルと似た黒い瘴気みたいなのまとってない?」
「え、まさか……。《月奈、悪いが賞金首のこと鑑定できるか?》」
俺は『念話』を使い月奈に話しかける。
「《了解です兄さん。……見たところ、特殊なスキルはありませんね》」
そうか、ならあの黒いのは…
「《ですが、あの人の魔力には自分の魔力と別に、外から貰ったような、もう一つの魔力が見えます。兄さんが知りたいのはそれかと》」
つまりあいつは、自分と外の2つの魔力を持っているわけだ。
理屈は分からないけど、それが騎士たちを圧倒してる強さの正体なのだろう。
「冷夜くん、なにか分かったのかな?」
「いや、まぁ。分かったは分かったけど。やることは変わらない」
「そっか。じゃあ僕からいくね!」
光太は、剣を片手に賞金首へと突っ込んでいく。
「はあっ!」
「ふんっ!!」
光太の剣と、賞金首の斧がぶつかる。
「う、お、おもってたよりも、重いね」
光太の口ぶりこそは軽いが、その表情は少しキツそうだ。
だがそのおかげで、賞金首は十分に隙だらけだ。
「『隠密』」
俺は『隠密』スキルにより気配を消して、後ろから賞金首を狙う。
だが、
「!うおぉぉ!!!」
「うわっ!!?」
「危なっ!」
賞金首は、身体を回転させ剣を弾き、気配を消した俺にまで攻撃をしてくる。
俺は攻撃をなんとか、避け光太の元へ戻る。
「まじか、まさかバレるとは」
「ねぇ、冷夜くん。後ろからなにか狙ってたけど。なにか手があるんだよね」
光太は、期待の目で見てくる。
なんでそんな目で見てくるのか。
ま、あるにはあるんだが。
「この手袋には、魔力を貯める能力と雷魔法を付与してある。つまり触れるだけで相手を気絶させることが出来る」
「なら―」
「けど、こいつを使ってあの巨体を気絶させるには首筋あたりに触れないと無理だ」
「要するに君をあの人に近づければ良いわけだね。…『天光剣』」
光太は『天光剣』を発動させ剣に光を纏わせ、剣を一回り大きくする。
「よし。じゃあ、」
「うおぉおぉおっ!!!?!?」
光太が走り出そうとした瞬間、賞金首がいきなり騒ぎ暴れ出す。
「あれを見ると、本当に君のスキルと似ているね」
「あぁ、だとすると。理性が吹き飛んでバカみたいな力で暴れるから気をつけてくれ」
俺は混合魔石を取り出し光太に放り投げる。
「これは?」
「爆裂石。魔力を込めると爆発する石だ」
武闘会で使いきってしまった混合魔石だが、師匠権限で王様から材料をもらい大量にストックがある。
というか、俺たちの願いが神装入手のためということで、それを手伝う前払いの報酬のような物で材料をもらったのだ。
「有効に活用させてもらうよ」
光太は爆裂石を握りしめ走り出す。
「うおぉぉ!!」
「おっと。危ない、な!」
光太は攻撃を避けながら爆裂石を投げつける。
「む?ドカンッ!!うお!?」
爆裂石はちょうど賞金首の顔のもとで爆発する。
「やあっ!」
爆発による隙を逃さず光太は攻撃を仕掛ける。
「うおぉお!!」
賞金首も、黒い瘴気を斧に纏わせ対抗する。
「『
光太は武闘会で使ったときよりも大きさは抑えた光の剣で斧を叩こうとした瞬間、
「う、あぁぁぁぁぁ!?!?!」
突然、賞金首が苦しみだす。
「え、どうして。まさかスキルのせい?」
光太が『天光剣』を見つめると、『天光剣』が賞金首の黒い瘴気を吸い取っているのが分かる。
「まあ、いいか。今だよ冷夜くん!」
光太の合図を聞き、ブーツに魔力を込め後ろから接近をする。
「ああ。痺れろ!」
魔力をたっぷり込めた手袋で賞金首の首をさわり雷魔法を発動させる。
「アババババ!?!?!?!」
賞金首はおれの狙い通り痺れて、
「あ、うう………」
気絶し、その場に倒れこむ。
「お疲れさま。冷夜くん」
「ああ、おつかれ。にしてもあの黒い瘴気はなんだったんだ?」
気絶した賞金首からはもう、黒い瘴気は消えている。
「とりあえず、戻るか」
すでに盗賊は全員倒されておりみんな一か所へ集まっている。
そこに俺たちも歩いて向かった。
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