第42話 義兄妹と褒美と師匠の過去

 俺たちは無事に武闘会にて勝利を収め、賞品はまた後日ということで大会の疲れを癒やしていた。


「冷夜、月奈。来たよー」


 そんな休養しているときに、師匠から声がかかる。


「何がですか?」


「それは、行ってみてのお楽しみだよ」


 そんな師匠の言い方に、めんどう事の予感がした。





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 師匠に言われ、ホテルの外に停められた無駄に豪華な馬車に乗ること数分。

 俺たちはファスト王国の王城へと来ていた。


「あの、師匠。俺たちは王城まで来て何するんですか?」


 俺たちは、城のメイドさんに連れられ王城内を歩く。


「そりゃ、もちろん。武闘会の賞品を貰いにきたんだよ」


「なるほど。だからエスタリアさんはここ数日マナーや礼儀作法を教えてくれていたんですね」


「ま、そういうことだね」


 そんなことをしゃべっているうちに、どうやら目的の場所に着いたらしい。


「これより、今回の武闘会優勝者が入場します」


 扉が開き、俺たちはゆっくりと歩く。


 部屋の中は、横にいかにも貴族、という感じの人たちがずらりとならび、奥には豪華な椅子に座るこの国の王であろう人が座っている。

 そんな王の目の前まで歩き、師匠のレクチャー通り、膝をついて顔を下に向ける。


「面を上げよ」


 王から言葉がかかり、俺たちは顔を上げる。

 そこで、王の顔をよく見たが、金髪になかなかに険しい顔、その体つきは引き締まっており、わかりやすく言えば歴戦の戦士のような見た目をした人だった。


「さて、まずは武闘会の優勝おめでとう。そなたたちは勇者様を相手に同等以上の戦いをし勝利した。ここ数年の中でも一番血がたぎる戦いであった。ありがとう!」


 王は先ほどまでの怖い形相を崩し生き生きと話す。そんな姿を見て、本当に戦いが好きなんだとよくわかる。


「そして、優勝賞品として余がそなたらの願いをかなえることになっている。早速だが願いは決まっておるか?」


 その言葉に俺と月奈は顔を合わせて頷く。


「俺たちは、勇者様との対話を願います」


 俺の言葉が意外だったのか、


「それが、願いでよいのか?」


 と、目を見開いて聞いてくる。

 そんな王様を見ていきなり師匠が笑いだす。


「ははは、面白いだろ?この子たち」


 師匠は礼儀などをすべて捨てて、立ち上がる。


「ええ、さすがは魔女様の弟子ですね」


 王様と師匠は長年の友人、というより先生と生徒のような風に話す。


「あの、師匠?」


「あぁ、ごめんごめん。私は彼が幼いころに世話をしていてね。ちょっとした知り合いなんだよ」


「いやいや、そんな。魔女様は我が王族を救ってくれたこの国の英雄。ちょっとした知り合いなんて言わないでください」


 王様はものすごく師匠を持ち上げる言い方をする。


「師匠って……」


「ほんとうにすごい人だったんですね」


 英雄だとか、王族を救ったとか、いきなりはいってくる情報量の多すぎて俺たちはそんなことを口にだす。


「はあ~。その話はそこまででいだろう。とにかくこの子たちの願いは叶えてくれるんだね?」


 師匠は照れ隠しか、話をもどそうとする。


「ええ。それはもちろん。今勇者様に伝えに行かせているので、しばらく別室にてお待ちください」


 王様が話を終えると「では、こちらに」と、メイドのひとに先導される。


「エスタリアさん?早く行きましょう」


「はい、はいー。…じゃ、よろしくね」


 師匠は王様になにかを話、別室に移動した。









 ―――――――――――――――――――


 別室にて、俺たちは先ほど師匠と王様が話していた話をもっと聞こうとしていた。


「別におもしろい話ではないよ?それでも?」


「聞きたいです!」


 まぁ俺たちというよりもおもに月奈が聞こうとしているんだが。


 ……最近月奈がすごく師匠になついている気がする。

 兄としては俺以外に心を許せる人がこの世界にいるのはいいことだと思うが、なんとなく、心が寂しい。

 これが子の成長ならぬ義妹の成長を寂しく思うということだろうか?


「それなら、いいけど。……私は昔いろんな場所を旅していたんだ」


 師匠は昔を思い出し遠い目をする。



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 あの頃の私はね、強い力を持て余して各地を修行として旅していたんだ。


 そしてこの国に来る途中で大型の魔物に襲われている豪華な馬車を見つけてね、助けたらお金もらえると思って助けたんだよ。


 ひどいって思った?え、師匠らしい。ひどいなぁ。


 まぁ、そのころは私も行き当たりばったりで生きていたからね。


 それで、騎士たちが苦戦している魔物を私がボコボコにしたら、襲われていたのが王族でね、予想通り褒美として大金をもらったわけだよ。


 ただ、そのせいで王族に目をつけられてね、ちょっとだけ国に長いをすることになってしまってね。


 そんな中で、困っている人たちを助けてたり、冒険者ギルドで難易度の高い依頼をこなしていたりしたら、ちょっとした有名人になってね。

 この黒髪もあいまって『漆黒の魔女』なんて呼ばれはじめたんだ。


 思えばこの時から私は名前じゃなくて『漆黒の魔女』と呼ばれたんだよね。


 そんなこんなでギルドとか町とか王城とかで活躍してたら王様から領地をもらってねそれが今過ごしている家がある場所一帯なんだけどね。


 と、ここまで話したのが今の国王の親の時代の話だね。




 ________________________________


「え、え、つまりエスタリアさんは今の国王の親を助けたんですよね」


 今の国王もそこそこの年齢だったはずその親というのだから……。


「師匠の年齢って…」


「冷夜、女性に年齢を聞くのは禁止だよ」


 師匠はウィンクしながら言うが、師匠の年齢を考えてみると……うん。考えるのはやめておこう。


 ただ師匠が魔女と呼ばれる理由はこれなんだなと思った。



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