第41話 義兄妹VS剣の勇者〈決着〉

 俺は、月奈に負担をかけないようにゆっくりと地面に着地した。

 だが、それが隙となってしまい、


「おらぁっ!!」


「っと!?、……危な」


 元に接近されて殴られる。

 俺は、相手が手負いなのもあり避けることは出来た。だが、俺は問題なかったが、


「兄、さん」


「悪い月奈。少し揺れる」


 魔力がほぼ尽きて、意識が朧気な月奈に負担がかかってしまう。

 本当ならばすぐにでも月奈を休ませたいが、相手はそれを許してくれそうにない。

 なら、


「さっさと潰す!月奈のために、力をよこせ『狂戦士バーサーカー』!」


 俺の身体から、黒い魔力が溢れ出る。


「ほぉ、そいつはさっき光太と戦ったときに使ったやつだな。よしゃぁ!いくぞ!!」


 元はとてつもなくやる気だが、俺にはそんな余裕はない。

 月奈に負担をかけず、光太との決着をつける力を残さないといけないのだから。

 だから、俺がやるべきことは一つ。


「すぅー。……一撃でつぶす!」


 俺が剣を構えると、元の拳が俺を狙い打たれる。

 その拳をできるだけ動かずギリギリで躱す。

 そして、剣に魔力を込める。


「叩き潰せ!『狂戦士』!」


「ぐぉっ!?」


 一撃。

 狙い通り、剣を元の腹に叩き込み、意識を刈り取った。

 俺は倒れた元を舞台外へと蹴り飛ばし、俺も舞台の端に移動する。

 そんな場所へ移動した俺を月奈は不思議そうな目で見る。


「兄さん、何を?」


「お前は十分やってくれたからな、後は俺に任せて休んでくれ」


「え、でも……」


「それに、あいつとの決着は少し過激になりそうだからな」


 俺が少し目をむけると、ダメージを負いながらも魔力を高めている光太の姿が映る。


「…わかりました。それなら、」


 月奈は三日月の髪飾りに手を当て、髪飾りに貯めてあった魔力を吸収して魔力を回復させる。


「少しですが、兄さんに魔力を。あとの足りない分は、私の思いを。がんばってください兄さん!」


 月奈に手を握られ、魔力が送り込まれてくる。

 そして月奈の微笑みに、思いをもらう。


「ああ、任せておけ」


 俺の返事に、頷き月奈は舞台から降りる。

 するといつの間に来ていたのか、師匠が魔力が尽きてふらふらと歩く

 月奈を抱き留め、こちらにサムズアップしてくる。

 ほんと師匠はいつも俺を驚かせてくれる。

 けど、師匠がいれあば月奈のことは安心できる。

 そんな二人の期待に応えないといけないな。


「さあ、終わらせるぞ。力をよこせ『狂戦士バーサーカー』!」


 俺の眼に紅が灯り身体と剣に膨大な黒い魔力が纏った。






 ____________________________________________________


「……霧崎くん。回復できました」


「ありがとう高付さん。元は、やられちゃったか」


 光太は体を動かし回復したことを確認する。


「まあ、これならどうにかなるかな。『天光剣てんこうけん』」


 光太は今まで剣を使うことによって使用していた『天光剣』、その膨大な光を手に集め純粋な魔力、光の剣を作り出す。


「すみません霧崎くん。私ももう魔力がなくて、ですので…かの者に力を『エンチャント・プラスオールアビリティ』。申し訳ありませんが私はこれでリタイアさせていただきます」


「うん、ありがとう。あとは任せて」


 おねがいしますと、高付は舞台を降りる。


「あはは、霧崎くん。私ももうだめっぽい」


 月奈の攻撃によってぼろぼろになった結目が笑いながら光太に近づく。


「だから私は、そのすごい光を制御しやすいように、その力を縛れ『束縛結界』」


 結目の『束縛結界』によって『天光剣』の不安定に剣をかたどっていた光がまとめられきれいな巨大な剣をかたどる。


「後は、お願いね」


 結目もふらふらになりながら舞台を降りる。


「みんなありがとう。さあ決着をつけよう、冷夜くん」






 ______________________


 光太が巨大な光の剣を持ってこちらに近づき、一定の場所で止まる。


「冷夜くんこの戦い、楽しかったけどもう終わらせないとね」


「ああそのつもりだ。こっちは、早く妹の様子を見に行きたいんだ」


 俺と光太は互いに光と黒の剣を構える。

 そして数舜、互いの視線が交差し、


「光よすべてを切り裂け、『天光斬撃シャイニング・ブレード』」


「斬り潰せ!『狂戦士バーサーカー黒斬撃ブラックスラッシュ』」


 二色の巨大な剣がぶつかり合う。


「うおおおおおお!!!!!」


「叩きのめせえぇぇえ!!!!!!!」


 二つの叫びが会場に響き渡る。

 そして、辺りは衝撃と光に包まれ、 パリンッと音が鳴った。





 __________________________


 光がはれ、観客たちはどっちが勝ったんだ?と、舞台を見る。

 結論から言えば、両者とも倒れていた。

 いや、正確には二人とも立ち上がろうとしていた。


「う、ううう…」


「く、うご、け…」


 どちらも意識がもうろうとしている中、体を起こそうと力を入れるが、あと少し体を起こすための力が入らない。

 だがそんな力を与えてくれる人はもう舞台上にはいない。

 唯一あるのは、観客たちからの応援だがあまり意味はなさない。

 ただ一人の応援を除いて。


「兄さーん!立って、立ってくださー、……」


 月奈は叫んでいる中で体がふらつき師匠に支えられる。


「まったく。まだ全然回復できてないんだから無理をしない。…冷夜!いつまでもそんなとこで寝てないで早く起きなさい!」


 そんな、ふたりの言葉が聞こえた。

 ……なんか、師匠の言い方母さんみたいだな。

 そんなくだらないことを考えられるくらいには意識がはっきりしてきた。


「そうだな。いつまでも寝てると怒られるし起きないと、な!」


 ゆっくりと、だが確実に俺は立ち上がる。


『おおと、冷夜選手立ち上がった!さて、対する光太様は戦闘不能!と、いうわけで……今回の王都舞踏会優勝は、星空冷夜&星空月奈だ!!』


 司会の言葉と同時に観客から、わあぁぁ!!!という歓声を受け、俺たちは優勝を手に入れた。






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