第40話 義兄妹VS剣の勇者③
「月奈、少し、じっとしていてくれよ」
俺は月奈を横向きに抱き上げる。
俗にいうお姫様抱っこの状態だ。
戦い中いきなりお姫様抱っこという格好に、観客だけでなく、光太たちもが驚く。
「…やっぱり、少し恥ずかしいですね」
「やっぱりやめておくか?」
ただでさえ、人が多いのが苦手な月奈だ。
勝つためとはいえ、こんな目立つような事をして月奈に負担をかけたくはないが…。
「いえ、大丈夫です。嫌なわけではありませんし。…むしろ嬉しいですし」
最後のほうが聞こえなかったが大丈夫だと言うならいいだろう。
「じゃあ、いくぞ。しっかりつかまってくれよ。っとあとはこいつを!」
俺は混合魔石を取り出し、光太たちの元へ投げつける。
「なんだ、あれ?」
「あ!あれ、たしか爆発するやばいやつだよ!黒鉄くんあの石、はじい…きゃっ!」
結目さんが声をかけている途中で混合魔石が爆発し、強い光が辺りを包む。
「うっ、まぶしい。……あれ?冷夜くんたちは?」
光太は辺りを見回す。
だがそのどこにも俺たちの姿はない。
それもそのはず、なぜなら俺たちは…。
「フィールド上のどこにもいない。だとしたら他にいる場所といえば……!空か!」
光太の顔が上空を、俺たちの方を向く。
どうやら気づかれたらしい。
だが今から俺たちのしようとしていることには、まだ気づいていないはずだ。
「……天より放たれるは閃光の輝き」
月奈は『魔眼』を発動させながら、演唱をする。
本来ならば月奈は魔法を使うとき演唱を必要としない。
だが今から行う魔法は今の月奈のスキルレベルでもギリギリであり、強力な威力を持ったまま発動させたいので、わざわざ演唱をしているのだ。
あとは、これに気づかれず撃てればいいのだが。
「そう簡単には勝たせてくれないか」
俺の目の先、遥か下の方で光太が指示をしているのが見えた。
「あんな上空で一体何を?」
(上空、爆弾?いや、それよりも強力で速く、そしてわざわざ上空まで行って時間を稼ぐ理由。……!魔法だ!それも多分かなり高威力の)
「結目さん!今すぐ結界を!高付さんは結目さんにブーストを!」
「は、はい!『エンチャント・マジックブースト』」
「高付ちゃんありがと!よーし、……我が力よ、敵を拒み、敵を拒絶し、敵を防ぐ、結界よ」
こちら気づき、相手は結界を作ろうとしているらしい。
だが、もう遅い!
「……穿て!極光」
月奈はその
「『シャイニングレイン・バースト』」
瞬間、無数の魔法陣から光が降り注いだ。
「…すべてを拒みて、てっ!はやっ、…ええい!敵を拒め『結界』!!」
相手はそんな光景を見て、ほぼやけになりながら結界を発動させた。
だがそんな結界が月奈の魔法に耐えられるはずがない、
…と、思っていたが。
「意外と、耐えているな」
結界の使用者本人が強化されたからか、光は結界を壊すのにあと一押したりていない。
本来であればここで、爆裂石などの混合魔石を使いたいところだが、この大会中に乱発しまくったせいでもうストックがない。
このままでは結界を壊す前に月奈の魔力が尽きてしまう。
そんな月奈は、つらそうな顔をしながら俺に片手を伸ばす。
「兄さん、どうか私に力を」
俺には、月奈の力や魔力を上げるすべはない。
だが、せめて思いだけでもと、月奈が俺にそうしてくれたように俺も月奈の手を握り、
「がんばれ。月奈」
応援をする。
そんな俺の言葉に月奈はつらそうな顔を一変させ力強く頷く。
「はい、兄さん!…光よ穿てぇぇ!」
月奈の魔法は勢いを増していき、ついに結界にヒビが入る。
「うそっ?!これ、ヤバッ」
「いけぇぇ!!!」
そしてついに、パリンッと音を立てて結界を破壊し、さらに光太たちダメージをいれる。
だがさすがに疲れたようで、月奈は俺の腕の中でぐったりとする。
「すみません兄さん。多分戦闘不能までは追い込めていません」
「いいや。十分だよくやってくれたよ月奈は。…下に降りるからしばらくそのままにしていてくれ」
俺は降下しながら光太のほうを見ると、全員かなりのダメージを負っていることがわかる。
特にあの結界使いはダメージだけでなく魔力もほとんど無いと見える。
これで厄介な結界はもうない。
俺は地面につくまでのわずかな間に戦闘の覚悟を決めた。
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