第37話 義兄妹VS剣の勇者

「やぁ、二人とも。お疲れ様〜」


「……師匠」


「…お疲れ様です」


俺たちが観客席までの道を歩いていると、途中で師匠な背を壁に向けて立っていた。


「すみません師匠。フードが…」


「ああ、別にそんなのいいよ。というか、よくフード被ったまま騎士団相手に戦ったね。えらい、えらい」


師匠は俺と月奈の頭を撫でてくる。


「あの、エスタリアさん何してるんですか?」


「なに、頑張った弟子たちを褒めているんだよ」


師匠はしばらく撫でたあとに満足して、手を離す。


「さて、褒めるのはこれくらいにして……冷夜、月奈疲れているとは思うけどこれから特訓だよ」


「特訓?」


「なんの、特訓ですか?」


「そりゃあ、もちろん、勇者に勝つための特訓さ!」


師匠のドヤ顔と裏腹に、俺たちはこれから行う特訓を思いため息をついた。





―――――――――――――――――――――

次の日


『さぁ、いよいよ始まります王都舞踏会決勝戦!さっそく選手の入場です最初に舞台に上がるのは……』


司会に合わせて最初に舞台に上がるのは、豪華な装備に見を包んだ男子二人に女子二人。


『勇者光太様、率いる勇者様チームだ!!本戦では、勇者としての力を見せ一瞬で相手を蹴散らしたまさしく勇者にふさわしい力を持つチームです!!!』


わあぁぁぁ!!!!


もの凄い声援を受けながらも勇者たちは話ながら舞台に上がる。


「凄い声援だな」


「うう、緊張するなぁ」


「大丈夫だよ高付ちゃん。いつもどおりいこう」


「うん。結目さんの言うとおりいつもどおり行けば問題ないよ高付さん」


「う、うん。ありがとう結目さん、霧崎くん」


勇者チームの仲は中々に良好らしい。


『そして、続いて入場するのは……』


「いくぞ、月奈」


「はい。行きましょう、兄さん」


司会に合わせて俺たちも舞台へと向かう。


『あの『漆黒の魔女』の弟子にして、黒髪に黒目を持ち、我が国の騎士団をたった二人で倒した実力者、星空冷夜&星空月奈チーム!』


わあぁぁ!!


勇者たちより声援は少ないが、それでも多少の声援に押されながら俺たちは舞台に上がる。


「中々の声援だな、月奈大丈夫か?」


「はい。フードがない分、少しキツイですが兄さんがいるので大丈夫です」


月奈が言うとおり、すでに俺たちの髪や目の色がバレているので視覚制限してしまうフードは外しているのだ。


「そうか、……月奈、ちょっと後ろにいてくれ」


「?、はい。」


俺が月奈を下げると同時に、勇者がこちらに歩いてくる。


「やぁ、はじめまして。僕は霧崎光太」 


「こちらこそはじめまして。俺は星空冷夜、こっちが妹の月奈だ」


「星空冷夜くん、か。その名字と名前の順番、もしかして君は……」


「あぁ、あんたと同じ世界から、というより多分同じ学校からこの異世界に来た」


「なるほど、……このまま君とゆっくり話したところだけど、」


「そうだな俺も色々と話したいんだが、もう始めないとな」


「うん。では戦いの後にゆっくりと話をしよう」


俺と勇者いや、光太は話を一度終え戦いの準備に入る。



『それでは、王都舞踏会決勝戦、開始!!』


「結目さん、高付さん。お願い」


「了解、いくよー。…我この力を持って敵を阻む界を創る『結界』」


「はい、いきますよ。…彼の者に偉大な力を与えたまえ『エンチャント・プラスオールアビティ』」


光太の指示により結界が張られ、光太の能力が上昇する。


「二人ともありがとう。…光よ我が剣となりて敵を滅する刃となれ『天光剣てんこうけん』」


光太のスキルにより光太の剣が巨大な光の剣となる。


「いくよ、冷夜くん。『天光斬撃シャイニング・ブレード』」


天光剣が振られ、俺たちに襲いかかる。


俺たちはそれを目の前にし、


「月奈、手を」


「はい、兄さん」


手を繋ぐ。

そして、俺は意識を深く集中させる。


……天光剣、あれを受ければ死ぬことはないが、間違いなく月奈は傷つく。

だが、それはあってはならないことだ。

俺は月奈を守る、守らないといけない、だから、


「だから力をよこせ、『狂戦士バーサーカー』」


スキルを発動させると、俺の身体から黒い魔力が溢れ、片眼にうっすらと紅が灯る。


そして、その魔力を天光剣と同じように、俺の剣に黒い魔力を纏わせる。


「いけぇ!『天光斬撃シャイニング・ブレード』」


「叩き潰せ『狂戦士バーサーカー』!」


光太の光の剣と、俺の黒い剣が激しい音をたててぶつかり、


バリンッ


と、俺と光太の剣が壊れる。


「やるね、冷夜くん」


「はぁ、はぁ。まぁ、な」


俺は剣が壊れてから直ぐに『狂戦士』を解除した。


「大丈夫ですか?兄さん」


「あぁ、なんとかな。ありがとう月奈。それと、ほんとに、師匠に感謝だな」


俺は『狂戦士』を使った反動で荒れた息を整えながら、昨日の特訓のことを思い出した。




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