第36話 義兄妹VS王国騎士団③

(月奈視点)


「わかった。……とりあえず、これだけ持ってろ」


 兄さんは私に混合魔石を投げ渡し、槍と大剣騎士さんたちを超えて走っていきます。


「逃したか……」


「あぁ。なら、先に魔法使いの子を片付けてしまおう」


 どうやら、あの二人は私を狙ってくるそうです。

 騎士の人たちは言うが早いや、こちらに向かってきます。

 ……まぁ、作戦通りですか。


「『ウォーターアロー』」


 私は杖を向けて、水の矢を放ちます。

 それを、大剣の騎士の人が剣を盾のようにして、防ぎます。

 ですがそのおかげで、騎士の人の足元は水で濡れています。


「『アイスバインド』」


「なっ!」


 騎士の人たちの足元の水が、氷のつるのようになり足を捉えます。


「なるほど。ウォーターアローは牽制と、アイスバインドを使うためのものだったのか」


 ……大剣の騎士の人は、中々鋭いですね。

 あの人の言うとおり、ウォーターアローは牽制のためです。


 他の水の魔法を使わなかったのは、アロー系の魔法が、私が使える魔法の中一番の速度を持つからです。

 普通の魔法であれば、避けられる可能性がありましたが、さすがにアロー系の魔法は立ち止って防ぐしかありません。


 ……兄さんなら、思考加速を使って避けることができると思いますが。


 そして、ウォーターアローによって飛び散った水を使うことによって、アイスバインドを速く、そして少ない魔力で使うことができました。

 こうして作れた隙を最大限に活用します。


「『シャイニングバレット』」


 騎士の人たちに、無数の光弾が襲いかかります。

 この光弾、一つ一つはそこまでの威力ではありませんが、動けない状態でこの量を受ければかなりのダメージになるはずです。

 光弾の攻撃が終わり、それによって起こった土煙が晴れていきます。


「やはり、仕留めきれませんでしたか」


「ふぅ〜。危なかったね」


「そうですね。まぁ、多少ダメージは負ってますが」


 騎士の人たちは鎧が少し汚れていたりしますが、まだ余力を残している様子です。

 その様子を見て、私は次の手の準備をします。


「っと、お話してる場合じゃないね。あの子からかなりの魔力を感じる。…なにかされる前に行くよ!」


 騎士の人たちは、こちらに向かって再び走ってきます。

 ここで魔法を打っても有効打にはならないでしょう。

 で、あるならば……。

 私は手握りしめ、騎士の人たちの攻撃を待ちます。


「行くぞ、はぁっ!」


「覚悟、うぉっ!」


 騎士の人たちがかなり近づいてきた瞬間に私は手に持っている物を投げます。


「えいっ!」


「なっ!」


「まさか、それは!?」


 私が投げたのは兄さんから貰った混合魔石です。

 騎士の人はそれを警戒ひとっさに防御の体制を取ります。

 ですがこの混合魔石は……


 ピカッ!


「うっ?!」


「眩しい!?」


 強力な光が当たりを照らし、騎士の人たちの、目を射抜きます。

 私が兄さんから貰ったのは、『閃光石』。

 強力な光起こす混合魔石です。

 これは、混合魔石=爆発する。と思い込んでいる騎士の人たちの不意を突くのにピッタリの物でした。

 そして、この光を至近距離から見てしまえば数秒は目がまともに機能することはありません。


「うっ、目が、目が」


「くそっ、何も、見えない」


 私の狙い通り、騎士の人は目が機能せず、かなり混乱しています。


 そして、光を至近距離から見たのは私も同じですが、私には『魔眼』があります。


「隙だらけです。『ウィンドバースト』」


「「うわぁぁぁ!!!」」


 騎士の人たちは私の魔法、『ウィンドバースト』によって起こった強大な風に押されて場外へ出されます。


「やったぁ。勝てました。兄さんは?」


 私は兄さんの方を見ようとすると、


『決まりました!舞踏会4回勝者は…星空冷夜&星空月奈だ!』


 わぁぁぁ!!!


 司会の人の言葉と共に歓声が響きます。


「月奈、お疲れ様」


「兄さん…」


 私は声のする方を振り向くと兄さんが歩いてきています。


「兄さんも、お疲れさまです」


 私は兄さんの方に駆け寄ります。

 そういえば、少し戦闘で疲れて気づきませんでしたが兄さんのフードが外れています。


「兄さんフードどうしたんですか?」


「え?フード……あ、そういえばいつの間に…」


 どうやら兄さんも気づかなかった様です。

 かなり戦闘に集中していたんですね。


「ま、もうどうしようもないし、気にしても仕方ないだろ。今回は月奈のおかげで助かったよありがとな」


「あ、…はい。ありがとうございます」


 兄さんは頭を撫でてくれて、思わず顔がにやけてしまいます。ふふふ。


「にしても、本当に助かったよ。騎士を二手に分けて俺は魔法使いを、月奈が接近戦をしてくる、槍と、大剣の騎士を相手にするなんてな」


「はい。私の魔法は魔法の騎士の人に防がれてしまいますし、兄さんの混合魔石は統率のとれた四人の騎士の人相手だと防がれてしまいましたからね。私と兄さん、どっちの攻撃も有効打にならないならいっそ分かれて戦おうと思ったんです」


 とっさの判断でしたがなんとかなってよかったです。


「なぁ、月奈。辛くはなかったか?」 


 兄さんは頭を撫でる手を止めて、優しい声で聞いてきます。

 そんなことを聞くのは、私が初めての対人戦だったからでしょう。


 兄さんは本当に心配性ですね。


「大丈夫ですよ。エスタリアさんのおかげで魔法の扱いや制御は上手くなりましたし、……戦う覚悟もできましたから」


 私は兄さんの目を見てまっすぐと言います。


「そっか。それなら、これからもよろしくな」


「はい!」


『え〜、ここで今後の大会について連絡があります』


 急に司会の人が、話を始めます。

 そういえばここ会場でしたね。


『次の戦いは準決勝になるはずでしたが、「勇者様チーム」と「星空兄妹チーム」以外の2チームが戦いによる疲労で棄権しました。……ということで、明日のお昼過ぎより、決勝戦を開始します!』


 え!?明日決勝。ということは、


「兄さん、」


「あぁ、遂に明日勇者とご対面だな」


『ちなみに、両チームの責任者並び王には了承は得ています。それでは皆さん明日の決勝をお楽しみに!』


 遂にあの、勇者さんとの戦いが始まります。






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