第35話 義兄妹VS王国騎士団②
俺が次の作戦を考えている間にも時は経つ。
そして、それを相手が待ってくれるはずもなく…
「そっちの手はもうないのかな?なら、次はこちらから行かせてもらおうか!」
そう言いながらで大剣の騎士と槍の騎士がこちらに向かってくる。
「……どうする。まだ新しい案は浮かんでないぞ」
俺が考えていると、服の裾を引っ張られる。
「月奈?」
「兄さん、私に作戦があります。ちょっと耳を貸してくださいね、……」
月奈はこしょこしょと作戦を聞かせてくれる。
「と、いう作戦です」
「……なるほどな。でも、それだと月奈が危ないぞ」
「大丈夫ですよ。私は兄さんを信じてますから」
月奈はまっすぐした目で俺を見てくる。
騎士たちも、かなり近づいてきている。やるしかないな。
「わかった。…とりあえず、これだけ持ってろ」
俺はいくつかの混合魔石を渡し、騎士たちに向かって走る。
「一人で突撃とは、……何か狙いがあるのかな?」
前から走ってくる大剣の騎士が話しかけてくる。
「ありますよ。その狙いはあなた達じゃないですけどね」
俺は騎士たちと衝突する直前、俺はブーツに魔力を込めて跳躍をする。
「……くっ!」
俺が跳躍をして騎士たちの上空を超える直前に、二人の騎士はそれぞれの武器を振るう。だが、騎士の武器は俺には届かない。
「高いっ!」
「……届かないか」
俺はなんとか攻撃を躱し、そのまま後方の杖の騎士と盾の騎士の元に向う。
「くらえっ!!」
俺は、空を跳びながら混合魔石を投げつける。
もちろん、そのままの混合魔石ではなく、混合魔石に魔力を込めずに投げつけた。
混合魔石とは、言わば爆弾だ。
爆弾の導火線に火をつけるのと同じように、混合魔石は中に魔力を流しその中心部、いわゆる爆弾の火薬に魔力が到達した時に込められた魔法が発動する。
「無駄だ、……『ウィンド』」
当然相手はそんなことを知らない。
故に、混合魔石を防ごうと魔法を使う。
「それを、待ってた!はぁっ!!」
俺は杖の騎士が風の魔法を使い、他の魔法を使えない瞬間を狙い、盾の騎士を超えて厄介な杖の騎士を狙う。
「なっ!でも、爆発が……」
騎士は俺の突進に驚くが、混合魔石が爆発すると思い込んでいる。
そんな混合魔石は俺の近くまで返ってくる。
だが、魔力が込められていない魔石、言わば火が着火してない爆弾が爆発するはずもなく――。
「どうして、爆発しない!?」
杖の騎士は爆発しない混合魔石に気を取られる。
ただ、盾の騎士はかなり冷静で、素早く杖の騎士を守ろうと動く。
このままだと盾の騎士が邪魔だ。
そこで、俺は近くに便利な物があることを思い出し、それを手に取り投げつける。
……一言添えて。
「これは、俺の作ったものだ。爆発する時間を変えることくらいできるんだ、よ!」
そう言いながら投げたのは、俺の元に返ってきた混合魔石だ。
そして、俺の言葉と混合魔石に反応し、騎士たちは焦りを見せる。
それもそのはず、俺の言葉と投げた混合魔石を考えれば、いつ爆発するかも分からない。俺の意志一つで、爆発させられる物が落ちてきていると思うからだ。
普通ならば、ありえないと思うだろう。
まぁ、実際にそんなことありえないのだが。
だが、俺が見せた数々の魔道具や、展開の速い戦いにより、信じてしまうのだ。
そして、この距離から投げられた物なら魔法が間に合わない。
と、すれば。
「くっ、はぁっ!」
盾の騎士は混合魔石を防ぎざるを得ない。
その瞬間、騎士に隙が生まれる。
俺はその瞬間、『身体能力強化』、『思考加速』とブーツに魔力を流し一瞬にして地面に降り立つ。
「はあっ!」
「ぐっ、うぅ………」
俺は盾の騎士を剣によって斬り伏せる。
これでも、師匠に剣術スキルと身体を鍛え上げられたのだ。
相手の隙を付けば相手を斬り伏せることくらい、容易にできる。
「……『ウィンドブラスト』」
「っ、危な!」
俺が盾騎士を斬り伏せた瞬間、杖の騎士が強力な風の魔法を打ち、俺はそれをギリギリで避けた。
たが、かなり大きな風で完全には避けきれず、髪を隠すために着ていた外套が破れ、フードが取れてしまう。
でも俺はそんなことを気に留めずに、杖の騎士に向かって攻撃を仕掛ける。
「はぁっ!!」
「ぐっ………」
結果は一撃。
一撃で戦闘不能にさせることができた。
「よし、やったぞ。……と、月奈はどうなってる?」
俺は、勝利の余韻に浸りながらも月奈の方に目を向けた。
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