第31話 武闘会本戦(勇者の力)

 俺は無事に本戦へのキップを手に入れ、月奈と師匠の元へ向かった。


「あ!兄さん!お疲れさまです」


「お疲れ様、冷夜。さすがだったね。この短期間であそこまで魔道具を作り使いこなすとは。驚いたよ」


 俺は二人から歓声を受ける。


「ありがとうございます。これも師匠のおかげですよ」


「謙遜はよしたまえ。ちゃんと君の実力だ。さて、もう次の予選が始まる、君たちの相手になる人が出ているんだ観戦するといい」


 師匠から促され、俺はステージへ目を向け、ライバルたちを観察するのだった。






 ――――――――――――――――――――――


 予選を終えて一日後、俺たち本戦出場者は大勢の人が見る中、ステージに集められてた。


『さあ、始まりました!王都武闘会本戦。皆さん、盛り上がってますかー!!』 


 司会者の言葉に、わああ!!!と観客が沸き立つ。


『うんうん。いい感じに盛り上がっているますね。それでは本戦に入る前に、このステージに立っている7つのチームの皆さんを紹介しましょう!まずは……』


 司会者の声に合わせ、どこからかスポットライトのようなものの光で出場者を照らす。

 おそらくあれは師匠が言っていた昔召喚されたガントレットの勇者が作ったものだろう。

 光魔法を応用して作った魔道具だと思うが才能と技術の無駄遣いすぎるくらい良くできている。


 俺がスポットライトらしき物に気を取られているうちに紹介が俺たちの番まで回ってきた。スポットライトに注目していた俺は目に光を浴びることになった。

 すごく眩しいな。


『さて、次は予選で派手な戦いぶりを見せたフードを被った少年、星空冷夜と、同じくフード被った少女星空月奈のチーム。なんと!彼らはあの「漆黒の魔女」の弟子で、今回は「漆黒の魔女」の推薦にて、この大会に出場しています!!』


 わああああ!!! 


 司会者が「漆黒の魔女」の名を出すたびに観客席からすごい歓声が聞こえる。


「すごい声。本当にエスタリアさん、「漆黒の魔女」とは何者なんでしょう?」


「さあな。でも王都なんていう場所で名前が出て人が沸き立っているんだ。やっぱり、ただのものでは無いだろうな」


 俺は観客席を見渡し、師匠を見つける。

 そんな師匠は俺に気づいたのか軽く手を振ってくる。

 それはまるで学芸会で自分の子供に手をふる親のよう。


「名前だけであんなに騒がれているのに、フードも被らないであんな所にいて目立たないのか?」


 師匠を見ているとふと、そんな疑問が口に出る。


「ああ、それなら私、兄さんの戦いを見ている時に聞いてみたんですそしたら……」 



 ______


「エスタリアさんも黒髪なのにフード被らなくて大丈夫なんですか?」


「ああ、それなら大丈夫。わたしは『認識阻害』を使ってるからね。よっぽど強い人でもないと、わたしをわたしと認識できないからね」


 _______


「だ、そうです」


「……ほんと、師匠は何者なんだよ」


 認識阻害、今後も勇者を探しに色んな場所を回ることになるだろうし、大会が終わったら師匠に教えてもらおう。


 俺たちがそうして会話をしている中で出場者紹介は最後に入ったらしい。


『さて、一通りの紹介を終わりました。が、最期に、今回の特別ゲストを紹介しましょう!あちらをご覧ください!!』


 司会者の声に合わせて、スポットライトが当たる場所を注目する。

 そしてそこから現れるのは―—。


『今回の特別ゲスト!異世界より召喚された勇者様御一行です!』



 ――――――――――――――――――――


 勇者と呼ばれ入ってきたのは、俺と同じくらいの年齢の男。茶髪に整った顔立ちしており、その身には金色の鎧を着て腰にはいかにも強そうな剣をぶら下げている。

 そしてその後ろには黒髪黒目の同じく俺と同じくらいの年齢男子一人、女子二人。


 恐らく。いや、間違いなく彼らは俺たちの学校から召喚された生徒だろう。


『さぁ、早速ですが本戦一回戦を始めましょう。最初の対戦は――』


 俺が勇者を観察していると、スポットライトが有者に当たる。


『勇者様対パーティ名『デンジャラス・デンジャー』です!』


 どうやら早速勇者の力を拝見することができるらしい。







 ――――――――――――――――――

(勇者視点)


 僕の名前は霧崎光太きりさきこうた。近くにいた友人たちと共にいきなり異世界に召喚されてしまった勇者だ。


 この世界に来る直前、メイド服を着た金髪の女性の話によると、僕は勇者としてこの世界を救うために邪神と戦わければならないらしい。


 そして召喚先の王城で鍛錬を積んでいたある日、武闘会というものに出場することになった。

 勝てば王様が願いを叶えてくれるというのと、これまでの訓練の感謝を込めて俺たちは武闘会に出場することになった。





『さあ、始まります。武闘会本戦第一試合。まず舞台に上がるのは『デンジャラス・デンジャー』の4人。彼らは男四人で組んでいるパーティで冒険者ランクは全員Cランク。リーダに至ってはBランクにも匹敵する実力者たちだ!』


 司会者の説明に合わせ舞台に上がってくるのは、中々にいかつい顔つきと服装をした男四人。

 Cランクという説明に違わず全員が戦士の顔をしている。


『そしてその対戦相手は……皆さんご存知の通り、最近異世界より召喚された勇者様、勇者光太様率いる勇者チームだ!!!』


 僕達もまた、司会者の説明に合わせ舞台へと上がる。 


 するとあちらのリーダらしき人がこちらに向かって歩いてくる。


「あんたが最近噂の勇者さまか」


「はい。僕が勇者、霧崎光太です。今日はお互いに頑張りましょうね」


 と、僕は手を差し出す。


「ああ。いくら勇者さま相手とはいえ手加減はしないからな」


 リーダの人は僕の手を軽く握って去っていく。

 僕はそれが少し以外で自分の手を見つめる。


「意外だな。普通に握手に応じてくれるなんてな」


 僕が手を見ていると、親友である黒鉄元こくてつげんが話しかけてくる。


「そうだね元。いい人そうで良かったよ。さて、今回の戦いだけど、さっき打ち合わせたとおりでいいかな?」


 僕は元と、後ろにいる二人の同級生。結目むすびめさんと高付たかつきさんに声をかける。


「うん。オッケーだよ。」


「はい。問題ありません」


 二人の返事に僕は頷く。


「それじゃあみんな、頑張ろう」



『それでは始めます。武闘会本戦第一回戦開始!』


 その声に合わせて、『デンジャラス・デンジャー』の人たちは一斉にこっちに向かってくる。


「結目さん、高付さん。お願い」


「任せて。……我この力を持って敵を阻む界を創る『結界』」


 結目さんは杖を振り、僕達の周りに結界を創り出す。これが結目さんのエクストラスキル『結界』。


 これに驚き、『デンジャラス・デンジャー』の人たちは足を止めてしまう。


「いきますよ霧崎くん。……彼の者に偉大な力を与えたまえ『エンチャント・プラスオールアビリティ』」


 高付さんは杖を振り、自身のエクストラスキル『能力値操作』を使い僕のあらゆる能力を強化してくれる。

 高付さんのエクストラスキルは『能力値操作』と名打っているものの、その能力は単純に言えばバフとデバフだ。


「二人ともありがとう、それじゃあ一気に決めるよ。……光よ我が剣となりて敵を滅する刃となれ『天光剣てんこうけん』」


 僕はエクストラスキル『勇者(剣)』を使い、自分の剣に膨大な光を集め、一本の巨大な光の剣を作る。

 その大きさはまさに、天にも届くほど。


「な、なんだあれ!??」


「嘘だろ。あれにやられたらひとたまりもないないぞ!!」


「ボス〜!!!」


 結界の出現で驚いていた、『デンジャラス・デンジャー』の人たちはどうにかして逃げようとする。


 けど、


「一撃で決める。『天光斬撃シャイニング・ブレード』」


「これが勇者の実力かあぁぁーー!!」


『天光剣』を振り、『デンジャラス・デンジャー』の人たちを全員一撃で気絶させる。


 その光景に驚いたようで僕ら以外はみんなポカンとしている。

 やがて気づいたように司会者が口を開く。


『き、決まりましたぁ!第一回戦勝者は勇者様チームです』


 その言葉と共に、観客席はわぁー!と賑わう。


 そして僕は『天光剣』を解除し剣を普通の状態にすると、パキンッと、高い音を立てて剣が砕けてしまう。


 剣が僕のスキルに耐えられなかったのだ。

 一応王様からは剣は好きなだけ使っていいと言われているが罪悪はある。

 でも……


「勝ったぞー!!」


「やったね!」


「上手くできて良かったです」


「次は俺にも出番をくれよ」


 今はひとまず勝利を仲間と分かち合うことにした。






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