第30話 武闘会(予選)義兄の無双

 俺は舞台上で予選が始まるのを待っていて(例のごとくフードは被っている)、数分後、司会者らしき人がその手にマイクを持って現れる。


『さぁ、始まりました。ファスト王主催の武闘会予選、開幕です!』


 わあああぁぁーー!!


 司会者の言葉に観客は大きく沸き立つ。


『この予選では複数のグループで分かれ、1グループ約100人が舞台の上で戦うバトル・ロワイアルをしてもらいます。相手を舞台から落とす、戦闘不能にさせるなどをして最後に残った一人が本戦に出場できます。では早速始めましょう!』


 司会は言うが早く、カウントダウンを始める。

 それに伴い、俺の周りの人たちは武器を構える。


『3』


 多くの人は武器を構えたり魔法の演唱を始めたりする。

 そんな中、俺は腕輪からいくつかの石を取り出し右手に握る。


『2』


 多くの人は互いを牽制し警戒をする。

 俺は右手を大きく引き、投石の構えをする。


『1』


 俺は石に魔力を込めると同時に、引いた右手を思いっきり斜め上へと突き出し握っていた石を投げる。


 多くの人や観客は何だ何だと、俺が投げた石に注目をする。


『試合、開始!!』


 その声が聞こえた瞬間、ピカッ!と空が光り、注目をしていた人たちの目を強烈な光が射抜いた。





 ――――――――――――――――――――

(月奈視点)  


『1』


 ついにカウントダウンが1になりました。

 そんなとき兄さんが何かを上へと投げるのが見えます。


「エスタリアさん。兄さんが投げたあれは何でしょうか?」


「う〜ん。そんだなぁ……」


 私が聞くとエスタリアさんの目が金色に光だし『看破の魔眼』を発動させます。


「へぇ〜、なるほど。あれは混合魔石に光魔法を付与したものだね。……月奈も魔眼を使っておいたほうがいいよ」


「はい。分かりました」


 私は言われたとおり『魔眼』を発動させる。フードを被っていて目立ちませんが目が黄色に光だします。


「あの、エスタリアさん。なんで魔眼を使えなんて―—」


『試合、開始!』


 私の疑問は開始の合図に遮られてしまいました。

 ですがすぐに空が、ピカッ!と強烈にひかり、疑問が解消されます。


「もしかして、今のが兄さんが投げた混合魔石の光魔法?」


 まさか、ただ光るだけの魔法を使うなんて、でも……。


「うわぁぁ!?目がっ!」


「なんだあれ、眩しっ!」


 舞台の上ではかなりの人が目を抑えて、混乱しています。

 道理でエスタリアさんが魔眼を使えと言ったわけです。魔眼なら光魔法の影響を受けずに兄さんを見ることができます。


「さて、冷夜は次に何をしてくれるんだろう」


 楽しそうに兄さんを見るエスタリアさんの言葉と伴に、ドゴンッ!と次は舞台の上で何かが起こりました。







 ――――――――――――――――――――――

(冷夜視点)


 ドゴンッ!ドゴンッ!と舞台上で大きな音が起きると共に、「きゃー!?」「うわぁっー!?」などの悲鳴も多く聞こえる。


 その原因は間違いなく俺が投げた混合魔石だろう。

 俺が投げた混合魔石は3種類。


 1つ目は『閃光石』

 これは空で光らせた混合魔石だ。

 使うとすごい光を発する、それ以上も以下もない物だが今回のような目眩ましには持ってこいな物だ。


 2つ目は『風爆石ふうばくせき

 これは魔石を中心とした小範囲に強力な風を起こす魔法を付与したものだ。

 通常であれば使い道はあまりないが、今回のルールでは相手を場外にだせば勝てるというルールがある。なのでこれを使い多くの人を場外へと吹き飛ばしている。

 あ、また飛ばした。


 3つ目は『爆裂石』

 これは文字通り爆発を起こす混合魔石。端的に言うと爆弾だ。

 だが、混合魔石では普通に魔法で爆発を起こすほどの威力は出せなかった。

 なので対人用ということで、運用している。 


 これも大活躍しており至るところで起こっている爆発音と悲鳴はこれの仕業だ。


 俺はこの内、後者二つを、舞台上を走りながら至るとこに放り投げている。

 その成果もあり、かなり数が減った。

 だがそんなことをしている奴がいれば当然目立つわけで……。


「おい、そこのフードのやつ。これはおまえの仕業だな?」


 そんな言葉を放ってくる巨体の男を筆頭として数人が俺を囲むように武器を構える。


「その通りだけど。……まさか一人しか勝ち残れない戦いで結託をするとは」


「こっちだって悪いとは思っているぞ。だがあんな奇妙な技を使ってくるやつ相手だ、協力もするさ。それに、こいつらは一応冒険者ギルドの顔見知りだしな」


 なるほど、それもそうか。


 この大会は推薦や高い冒険者ランクじゃなきゃ参加できない。選手の内、推薦なんてそう多くはいないだろうからほとんどが冒険者ランクが高いやつだろう。

 そしてランクが高ければそれだけ活躍して顔が広い奴ばかりだろう。

 それなら、こんな大きな大会に顔見知りの一人や二人居てもおかしくない……。


「と言う訳で、大人しくやられてくれ、よっ!」


 俺を囲んでいた奴らが一斉に襲いかかってくる。

 剣で応戦しようとしても相手にできるのはせいぜい2、3人このままだと、なすすべなく俺は負けるだろう。


「悪いが俺はこんな所で負ける訳にはいかないんだ」


 俺は脚とブラックドラゴン製のブーツに魔力を込める。

 するとブーツが魔法陣を描く。


「「おりゃぁぁ!!!」」


 囲んでいた奴らの武器が俺に触れようとした瞬間、俺は真上に跳躍し空中に着地する。


「「なに!?」」


 このブーツには風による跳躍を補助する効果と、空中に足場を作る効果を付与してある。

 なのでいちいち『魔力障壁』で足場作らなくてもこのブーツ1つで空を跳ぶことが出来る。


「確かに協力は大事だ。だけどそんなに複数人で固まっているといい的だぞ?」


 俺は腕輪から『爆裂石』と『風爆石』取り出し、襲って来た奴らに向って落とす。


「あ、あれは!」 


「に、逃げろー!」


 逃げようとしてももう遅い。ドカンッ!という爆発音をたて襲ってきた奴らは場外へと吹き飛んでいく。


「くっそ……」


「なん、なんだよ、それ……」


 吹き飛ばなかった奴も、『爆裂石』により満身創痍となっている。これはもうリタイア確定だろう。


「さて、残りも少なくなったし。後は一人ひとり潰していくか」


 俺は目についたやつから順に、混合魔石や剣などで場外に落としたり、戦闘不能にさせたりしていく。


『決まりました。さっそく本戦へのキップを掴んだのは星空冷夜選手です!』


 こうして俺は、無事に本戦へのキップを手に入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る