第16話 義妹の眼

(月奈視点)


「う、う〜ん。痛っ!」


 私は、あちこち痛い体を気にしながら目を開けます。


 たしか、私は逃げ道を開けようとして、それで……


 たしか、いきなりすごい光が目の前に現れて、道を開けようとしていた魔力を『ホーリーバリア』に変換して、どにか衝撃を緩和したんでした。


「まあ、緩和しきれず壁まで吹き飛ばされましたが…」


 今すぐに体は動かせませんが、死んではいません。


 というか、緩和しきれないほどの攻撃って……


「そうだ!ブラックドラゴン!、兄さんは!?」


 周囲を確認すると、


 ガキン!


 と、金属が激しくぶつかったような音が響きました。


「あれは、兄さん?」


 私が音のした方を見ると、ブラックドラゴンと戦う兄さんがいます。


 ですが兄さんからは黒い魔力をが溢れ、眼には紅が灯っています。


 あの姿は何なんでしょうか?


 そんなふうに見ていると、兄さんが一度止まり腕輪鉱石を取り出し何かをしています。そんなとき、ブラックドラゴンが炎の塊、火炎弾を放ちます。


「兄さん!危な……痛っ」


 私は声を出しますが、壁に打ち付けられた痛みで言葉が続きませんでした。


 火炎弾を放たれた兄さんはまるで、火炎弾の起動が分かっているかのように、全ての火炎弾の動きを読みそれを避けます。さらに、


「…空を飛んでる?」


 兄さんがブラックドラゴンに向かって高く跳躍したと思えば、そのまま空を飛ぶかのように、次々に『マジックバリア』を足場にしブラックドラゴンへ迫っていきます。


 そうして、ブラックドラゴンの目の前まで跳び、その喉元へ剣を投げつけ、見事にブラックドラゴン突き刺さり、地へと落ちます。


「やった!さすが、兄さ…ん」


 兄さんは流石に疲れたのかふらふらと、地上に落ちていきます。


 そして、その後ろには巨大な魔力の塊が。


「あれは、私をここまで飛ばしたものと同じ魔力の光線。このままじゃ兄さんが…」


 どうにかしようとしますが、身体中は痛いし魔力はほとんど残ってません。


 魔力を貯めているのか、まだ光線は放たれません。

 それでも、体中から魔力を必死にかき集め魔力の光線を睨みます。


 すると、


「目が…熱い?」


 何故か目がどんどんと、熱くなります。

 旗から見たら、私の眼が黄色になっていることが分かったでしょう。


「これは、何なんでしょうか?それに、魔力が…」


 瞳が熱くなるに連れて、魔力が高まってきます。


 本当なら、ステータスを確認したいですか、この状況でそんなことをしてる暇はありません。


 今なら魔法を使うことができます。

 早速、防御魔法を創ろうとした瞬間、


《あー、あー。月奈さん聞こえますか?》


 不意に頭の中には声が響き、魔法の構築を止めます。

 この声は……。


「天ちゃん?」


《はい、天ちゃんです。本当はのんびりと話したいですが今、月奈さんの『念話』と『管理者の加護』を経由して無理やり会話してるのであまり長くは話せません》


 天ちゃんの声が頭に響きます。


《突然ですがこのままだとそう時間の立たないうちに魔力の光線が冷夜さんを襲います。》


 天ちゃんは、私達の様子を、見ているかのようなことを言います。


「でも、まだ光線の発射までは少し時間があるんですよね。なら、それまでに防御魔法を組み立てれば…」


 私は魔法の構築を再開しようとしますが…


《ですが今、月奈さんが使える防御魔法では、あれは耐えきれません。》


 天ちゃんの言葉に思わず、構築していた魔法を消してしまいます。


「それじゃぁ、兄さんは、助けられな……」


《いえ。あくまで月奈が使える魔法では無理ということです》


「なら、どうすれば…?」


《わたしが、今から月奈さんに魔法を教えます。私の言うとおり、やってみてください》


「…分かり、ました」


《いいですか?まず……》


 私は、天ちゃんの言われる通りに魔法を構築します。


 そうしていると、


「なんでだろう?いつもより鮮明に魔法のイメージができる。それに魔力も何故かいつもより、思うように使える」 


《それは、月奈さんの眼、『魔眼』の影響ですよ》


「魔眼?」


 どうにも、この熱い眼は魔眼というらしい。


《残念ですが、今魔眼についてお話する時間はないのでそれはまた今度か、そちらの世界の詳しい人に聞いてください。……さて、これで最後あとは月奈さん次第です。頑張って!》


 そこで、天ちゃんの声は聞こえなくなってしまいました。


 私は教えてもらった魔法の構築の最終段階に入ります。


「……できた。これなら、兄さんを守れる!」


 私は光線が放たれる直前に魔法を発動させます。


「『セイクリッド・プロテクション』」


 すると、兄さんを包むように、『ホーリーバリア』以上の、光の障壁が展開されます。

 そして、魔法が発動した数秒後、魔力の光線が、兄さんに向かって発射されます。

 ですが『セイクリッド・プロテクション』は、見事に、魔力の光線を防ぎきり、兄さんを守りました。


「!、良かったあ。兄さんを守れまし、…た」


 流石に無理して魔法を使った 反動がきて体の力が抜けていきます。

 ですが……。


「グ、グルガァ!」


 ブラックドラゴンが起き上がり叫びます。


「う、嘘……。兄さんが倒したはずなのに」


 ブラックドラゴンの喉元には確かに剣が突き刺さって、今もそこからは大量の血が流れています。


「グルガァ!!」


 ブラックドラゴンは、その巨体を引きずりながら兄さんの元へと近づいていきます。


「なんとか…、しないと…」


 私は魔眼でブラックドラゴンを見て、魔法を発動させようとしますが、途中で魔法の構築に失敗してします。


「そんなぁ、もう魔力が…」


 私は身体中の魔力を集めようとしますが、もうどこにも魔力が残っていません。


「グガァァ!!」


 ブラックドラゴンが、兄さんに襲いかかります。


「っ、兄さん!」 


 私は魔眼を瞑り、祈ります。

 兄さんを助けて……と。

 すると、


「『フレアバーン』」


 どこからか、透き通った女の人の声と同時に、ブラックドラゴンに向かって壁から、巨大な炎が襲いかかります。


「グルガア、ァァァ……」


 ブラックドラゴンは炎を受けて倒れました。


「やれやれ、まさか本当にドラゴンとは」


 その声は炎が放たれた壁の、正確には壁だった場所から聞こえてきます。


「まったく、道が塞がっていたから魔力を感知して冒険者には当たらないように、壁ごとブラックドラゴンを焼いたけど、……まぁ、うまく行ったのかな?」 


 声の主は、ブラックドラゴンの元へと歩いていきます。


「うん。ドラゴンの討伐は完了。そこの少年は、気絶しているだけか、そっちの子は、大丈夫ー?」


 声の主さんは、私の元へ歩いてきます。

 声の主さんは私達と同じような黒い目を持ち黒い髪をショートカットにした、大人の女性といった雰囲気をまとっている女性です。


「大丈夫?」


「はい。私は何とか、ですが兄さんが……」


「兄さん?あの、少年のことかな?あの子なら、大丈夫、ちょと気絶してるだけだよ。あんまりここにいるのもどうかと思うし移動しようか、立てる?」


 女性は手を私に手を差し伸べ、私はその手を取り何とか立ちます。


「っと、かなり疲れてるね。魔力も空っぽみたいだし」


「はい。多少の無茶したので、ですが私よりも兄さんのほうが」


「うんうん。とりあえず君も、君の兄さんもちゃんと助けるよ」 


 私は女性の肩を貸してもらいながら、兄さんの元へ行きました。


「っ!兄さん」


 私は兄さんの元へフラフラとしながらも駆け寄り、その顔を見ます。

 兄さんは寝息を立てていました。


「兄さん、良かったぁ」


 思わず涙が出てきます。


「ねぇ君、これどうにかできる?」 


 女性に声をかけられて涙を拭き、そちらを見るとブラックドラゴンを女性は見ていました。


「どうにかって?」


「いや、流石にこれを放置するのもどうかと思うから、持ち運びとかできないかと思って」


「それなら、なんとかなりますよ」


 私は腕輪の中にブラックドラゴンを収納します。


「おお、すごいね。さて、じゃあ行こうか」


 女性は、いつの間にか兄さんを担いています。


「あ、あの」


「?、どうかした?」


「何で、助けてくれたんですか?」


 私が質問をすると女性は、う〜ん、と唸り


「それは、長くなるから後でにしてもらえると助かるな」


「じゃあ別の質問を、私は星空月奈と言います。あなたのお名前を聞いても?」


 私が質問すると、女性は急にこちらを向き、


「私の名は、エスタリア。人呼んで「漆黒の魔女」と、呼ばれるものだ」


 高らかにそう名乗ったのでした。


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