第13話 義兄妹と強敵

 

 俺達はファンタジーの代名詞、ドラゴンと遭遇した。

 その姿をよく見ると、四足で立つ全身が黒い鱗に覆われたブラックドラゴンであることが分かる。


「に、兄さん……」


 ブラックドラゴンの威圧感に押され月奈が怯えたように俺を呼ぶ。

 そして俺は。


「……逃げるぞ!」


 月奈を抱きかかえたまま、来た道に向かって走る。


「グル、グアァァァァ」


「っ!」


「すごい、威圧感が……」


 ブラックドラゴンが吠える。

 それだけで圧倒的な威圧感と共に、空気が赤龍山が震えた。

 そして、


「っ!…道が?!」


 ブラックドラゴンが吠えた影響で赤龍山の一部が欠け、道が塞がれてしまった。


「兄さん!私が魔法で……」


 月奈が魔法を使おうとするが、それより速くブラックドラゴンが俺たちに向かって炎を吐いてくる。


「ちっ!」


 俺は月奈を抱えたまま、その炎を避ける。


「やるしか、ないか……」


 偶然ではなく、意識的に俺達を狙っていることを感じさせる攻撃をしてきた。

 そして、逃げることも難しい。ということで、俺は戦う意思を決める。


「兄さん。降ろしてください」


「月奈?」


「足手まといにはなりたくありません」


 月奈も戦う意思を見せて、俺に言ってくる。 


「分かった。けど戦おうとしなくていい。俺が、あいつを引き付けるから、その隙に道を開いてくれ」  


「分かりました」


 月奈を降ろし、俺はブラックドラゴンと対峙する。


「さて、やるか」


 俺はジリジリと、できるだけブラックドラゴンを壁から離すよう動こうとする。

 だが……。


「グゥゥゥゥゥ…」


 ブラックドラゴンが力を溜める。そして……。


「グウォォォ!!」


 先ほどとは比べ物にならないほどの威力の炎を吐き出す。

 

「っ!『マジックバリア』!!」


「『マジックバリア』『ホーリーバリア』!」


 俺は魔力でできた透明な障壁『マジックバリア』展開させる。

 そして俺の後ろにいる月奈が『マジックバリア』と光魔法の障壁『ホーリーバリア』を張り三重の障壁を目の前に張る。


 パリンっ


 と、まず俺の『マジックバリア』が破られた。

 そして少し耐えてまた、パリンっと月奈の『マジックバリア』が破られる。

 そして最後の『ホーリーバリア』が、ブラックドラゴンの炎を耐え、バリィィンと音を立てて、壊れる。

 だが、ブラックドラゴンの炎は防ぎ切った。俺たちには、傷一つ無い。

 強力な攻撃をした後だからか、ブラックドラゴンは次の攻撃をしてくる様子がない。


 今がチャンスだと思い、月奈は塞がれてしまった道の方へ走りだす。

 俺は身体能力強化を限界まで高め、風魔法を使って急加速をしてブラックドラゴンに攻撃を仕掛ける。


「ウォォォ!」


 ガキン!


 と、俺の剣とブラックドラゴンの鱗がぶつかり甲高い音を立てる。


「っ!硬い!」


 自分の中でも会心の一撃という手ごたえがあった攻撃。

 だが剣はブラックドラゴンの鱗を僅かに削っただけ。このまま剣で鱗を攻撃しても、こちらの剣が先に折れてしまう事は容易に想像できる。


 それならばと、思い次は魔法での攻撃を仕掛ける。


「『ウィンドスピア』」 


 風魔法『ウィンドスピア』。

 槍の形をした三つの風がブラックドラゴンに向かって飛んでいく。


 ドン!


 という音とともにブラックドラゴンに『ウィンドスピア』は直撃した。

 だが、ブラックドラゴンには傷一つ無く、「今なにかしたか?」とでも言うかのような目でこちらを見てくる。


 そんなブラックドラゴンが、不意に横を見る。

 それを見て俺はやばい!と感じる。なぜなら……。


「月奈ぁ!!」


 ブラックドラゴンの目線の先には、月奈がいるのだから。






 ―――――――――――――――――――――――

(月奈視点)


 私は急に兄さんに抱えられ、元いた場所から移動しました。


 いきなり、どうしたのだろう?と思いましたが、兄さんの必死な表情と、数秒後に隕石のように降ってきた黒い龍、ブラックドラゴンを見て、緊急事態だと、察しました。


 ブラックドラゴンのせいで逃げ道が封じられてしまい、兄さんは、私を守るため戦おうとしました。


 ですが私は兄さんに守られるばかりでなく、兄さんの役に立てるように、兄さんを守れるようになりたいと思いました。だから、


「兄さん、降ろしてください」


「月奈?」


「足手まといには、なりたくありません」


 と言いました。

 だけど兄さんはそんな私を戦わせてはくれませんでした。

 けど、役割はくれました。

 自分が囮になるから、道を開いてほしいと。


 本当は、私だって戦いたかった。ですが、私と兄さんが力を合わせてもブラックドラゴンに勝てないことは分かります。それだけの威圧間がありますから。


 私たちは、三重の魔法による防御で、ブラックドラゴンの強力な炎を防ぎきり、隙をついて私は、塞がれてしまった道へと走りました。


「はぁ、はぁ、……兄さんは?」


 私は塞がれてしまった道の前まで来て兄さんの方を見ると、兄さんがブラックドラゴン相手に苦戦している様子が見えます。


「兄さん……」


 兄さんは苦戦こそしてますが、大きな怪我をしたりはしていません。

 私が早く道を開けばそれだけ無事に帰る事ができると信じて、私は塞がれた道を開くために、短杖を構えます。


「すぅ~、はぁー。よし!」


 私は意識を集中させて、魔法を放つ準備をします。

 魔法を使う時はしっかりとしたイメージをすることにより、効果が高かったり強い魔法を使うことができます。

 今回イメージするのは、光の槍。壁を一気に壊すための力。


「いきます!『シャイニングスピア』」


 私がイメージをすると、複数光の槍が現れます。

 そして、その光の槍を放とうとした瞬間。


「月奈ぁ!!」


 兄さんの声が聞こえ振り向いた瞬間、目の前に巨大な光が広がり私は、意識を手放しました。






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