第11話 義兄妹と赤龍山

 冒険者登録をしてから早くも約2周間程度が経った。


 その間にも俺達は採取や魔物の討伐などの多くのクエストをこなし、ランクも初心者脱出と言われるDランクまで上がった。


 そこで次に受けるクエストを悩んでいると受付嬢が、声を掛けてくる。


「冷夜さん、月奈さん。もし受けるクエストに悩んでいるならこのクエストはどうですか?」


 そう言って渡された紙には「赤龍山にある鉱石、炎耐石えんたいせき採取」と書かれている。


「赤龍山というのは、この町から馬車で約2日ほどの場所にあるここからでも見える大きな火山のことです。この依頼はその赤龍山にある、炎に強い鉱石の採取のクエストなのですが……」


 赤龍山か。他の冒険者に話を聞いたことはあるけど、実際に行ったことはないしどうしようか?

 そんなことを考えていると月奈が、口を開く。


「その赤龍山の危険度はどれくらいなんですか?」


「そうですね。魔物の強さは森にいる魔物とそう大差はありませんね。ですか炎を使う魔物が多いので、炎に対する準備はしたほうがいいと思います。あと、火山なので結構暑いですね」


 火山というのもあって結構気をつける事が多そうだな。


「ちなみにですが、赤龍山なんて名前がついているのはその昔に赤龍が、住んでいたと言われているからなんです。現在は赤龍どころか龍の目撃情報さえこの辺ではないですからあまり気にしなくてもいい情報ですけどね」


 赤龍か。この世界でも龍やドラゴンは例に漏れず最強の力を持っている種族だ。

 一度見てみたいという思いはあるが、万が一月奈に何かあるかもしれないと思うと不安だ。まぁ、昔の事なら気にしなくていいだろうけど。


 だが、このクエスト少し気になる点がある。


「このクエスト。採取だけなのにかなり報酬が多くないか?」


 この炎耐石のクエストは普通の採取系のクエストの2〜3倍の報酬になっている。

 いくら、火山だからと言ってもそこまで報酬が高くなるとは思えない。

 炎耐石が、希少なものなら話は別だかそういうわけでもないらしいし。

 そんなことを考えていると受付嬢が、仕方ない、といった風に話をする。


「実はですね、このクエストを依頼した人『漆黒の魔女』と言う人なんです。その人が、「炎耐石を急ぎで欲しい」と言って報酬を高額にして依頼をしてきたんです」


 漆黒の魔女、聞いたことはのない名前だな。

 月奈に知っているか聞いてみるが首を横に振られる。


「あの、漆黒の魔女というは、どんな人なんですか?」


「漆黒の魔女さんはたまに町に来ては、珍しい薬や道具を売ってくれたり、怪我人や病人がいれば治療をしてくれたりするとても良い人です。あと、漆黒の魔女の名のとおり服は全身黒く、お二人と同じでこの辺では珍しい黒色の髪の女性なんです」


 漆黒の魔女さんはかなり善人らしい。

 この依頼、報酬が良くて、さほど難易度は高くない。さらに依頼人も全員と来た。


「じゃあ、この依頼を受けることにします」


「ありがとうございます。では、お気をつけて行ってきてください」


 こうして俺達は道具や食料を揃えて、赤龍山に向かった。




 ―――――――――――――――――――――――


 赤龍山への移動は俺の身体能力強化と風魔法による強制加速を使い、月奈をいわゆるお姫様抱っこして走るという方法で向かった。


 この方法だと、本来なら馬車で2日のところを1日まで、短縮することができた。

 つまり俺は馬よりも早く走れるという事らしい、本当に魔法様様だ。

 俺達は赤龍山の付近で少し休んでから、炎耐石を取りに向かった。


「……暑い」


「暑いですね」


 赤龍山は現在は停止しているが火山である。

 それゆえに噴火などの心配はないが、とにかく暑い。

 しかも……。


「月奈下がれ!気配感知に引っかかった。魔物がくるぞ!」


「はいっ!」


 俺は付近の壁を注意深く観察する。

 理由はこの火山の魔物の隠密性が高いから。気配感知でもすごく近くにいなければ気がつけないほどの隠密性を持ち、感知できても姿が見えないからいつ攻撃が来るかが読めない。


 俺は観察しているうちに違和感を覚えた壁に向かって『気配感知』を集中させる、するとぼんやりだが石のヘビのような姿が浮かんでくる。


「キシャャ」


 石のヘビは俺に気づかれことに、気づき攻撃してくる。

 俺は石ヘビを切ろうとするが、


 ガキン


 という音と共に、剣を通して衝撃が伝わってくる。


「硬いっ!?」


「兄さん避けてください!『ストーンショット』」


 月奈が魔法で岩を撃ち、石ヘビにダメージを与える。


「キシャ!?」


「ナイスだ月奈!……これで決める!」


 俺は身体能力強化を腕に集中させて、石ヘビを切る。


「ハアッ!」 


「キ、シャァ……」


 石ヘビは身体が2つに分かれて、動きを止めた。


「お疲れ様です兄さん」


「ああ、月奈もお疲れ。援護ありがとな」


 俺達はねぎらいの言葉を掛け合い先へ進んだ。




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