第10話 義兄妹と冒険者ギルド

 俺達は一晩ぐっすりと眠り、宿屋で朝食を食べて、今は冒険者ギルドに来ている。


「お、意外ときれいだな」


 冒険者ギルドって、もっと荒んで荒れてるイメージだったが、

 中には、俺達とそこまで年の変わらない人から、見た感じベテランのような人まで幅広い人がいる。


 俺達はそれらの人を横目に、見ながら受付へと足を運ぶ。


「冒険者ギルドようこそ!今日はどうされましたか?」


「冒険者の登録をしたいんですけど」


「はーい、登録ですね〜」


 受付の美人なお姉さんが対応をしてくれる。

 ……別に受付は、俺が選んだわけじゃないし、他の職員さんだって、この人とそんな変わらないし。

 だから月奈、そんなジト目で見ないでくれ、頼むから。


「はい、まずこの紙に必要事項を書いてください」


 渡された紙には、名前、年齢、性別、持っているスキルを書く欄がある。

 これを見て、月奈と目が合う。


(兄さん、スキルの覧どうしましょうか?)


(そうだな。……とりあえずエクストラスキルは無しで、他は使い勝手が良さそうなスキルを書こう)


(了解です)


 そんなことを目と目で会話をする、わけでなく念話を使って話す。

 紙を書き終え、受付嬢に渡す。


「はい、ありがとうございます。次はこの水晶に触れてください。これに触れると光と魔力の量をおおまかに図ることができます」


 説明を受けて、早速月奈から水晶に触れる。


「わっ!眩しい!すごいこんな光初めてです!!」


 そんな言葉に、周りの人がこちらを注目する。

 そんな中で俺も水晶に触れる。


「眩しい、眩しいですけど……」


 俺が、触れた水晶は、かなり光ったが月奈ほどでは無かった。


「お二人共基準以上の魔力を持っていますね。……どうぞ。こちらが冒険者ギルドカードです」


 渡されたカードには名前とFという表記。


「では、冒険者ギルドの説明をします。まず、お二人に渡したカードに表記されてるFは、ランクを表します。一番下をFとし、F、E、D、C、B、A、S、となります。Sランクは、世界に10人といない、とてもすごい人たちです。ランクは、ギルドの依頼をこなすことで上げることができます」


 いかにも冒険者ギルドの説明と言った感じだな。


「俺達、早速依頼を受けたいんですけど……」


 そう言うと、受付嬢何枚かの紙を取り出す。


「そうですね…この、「ヒーリョク草の採取」は、いかがでしょうか?

 場所は森の中になりますが月奈さんの鑑定と、冷夜さんの、気配感知があれば安全に依頼をこなすことができると思います」


 なるほど、俺達のスキルを生かせることができるクエストだ。

 見た目はホワホワしてそうなのに俺達と相性のいいクエストを、しっかり斡旋してくれるところはさすがと言うべきか。

 月奈にも不満は無いようなのでこの依頼を受けることに決めた。


「じゃあ、その依頼を受けます」


「はい。ちなみに、魔物の素材なども冒険者ギルドで換金することができますから、無理ない程度に回収してくださいね。それでは、お気をつけて」

 

 受付嬢に見送られ俺たちは、森へと向かった。







 ――――――――――――――――――――――


 ということで、森に帰ってきました。

 まぁ、前と違ってちゃんと地図を使えるから迷いはしないけど。

 早速月奈が、鑑定でヒーリョク草を探す。


「う〜ん。この辺にはありませんね。もっと奥の方行ったほうがいいかもしれません」


 と言うので、森の中に進むこと約一時間。


「どうだ見つかったか?」


「駄目ですね。この辺だともう、他の、冒険者の人が採っていたのかもしれません」


「なるほどな。町からずっと歩きっぱなしだし、ここで一旦休憩にしよう」


「そうですね。ふぅ~」


 なかなかヒーリョク草が見つからず、このまま探しても効率が悪いと考えて俺は魔導書を開く。


「兄さん何してるんですか?」


「いや、探査系の魔法とかないかなぁと思ってな」


 月奈にそう言いながら魔導書をめくるが、そんな都合のいい魔法は流石に無い。

 だが、代わりに見つけた魔法を試そうと月奈に提案する。


「月奈、この魔法なんだけど……」


「……なるほど。じゃあそれで行きましょう」


 月奈の了承も得たので早速実行する。


「じゃあ、行くか」




 ―――――――――――――――――――――


「おおー、兄さんこれ速いですね」


「そうだな。魔力のコントロールがきついけど」


 現在、俺は月奈を抱えながら森の中を走っている。

 もちろん素の力だけで走っている訳では無い。魔力による身体能力の強化をして、さらに風魔法の『ウィンド』を使っている。

『ウィンド』は風を起こす魔法で、風の速さや大きさなどは魔力の量によって調整ができる。身体能力強化に加えて、『ウィンド』によって起こした風を使って強制的に加速して走っている。


「兄さん大丈夫ですか?」


「あぁ、何とか大丈夫だ」


 さらに加速の影響で起こる風圧を防ぐために月奈が『マジックバリア』を使用している。

 『マジックバリア』身体能力と同じように魔力の操作さえ出来れば使える魔法。魔力でできた透明な障壁を張って風圧を防ぎながら走っている。

 そこに加えて、ヒーリョク草を探すために月奈は『鑑定』のスキルを使っている。


「あ、兄さん。そこでストップです」


 月奈の言葉で俺は止まり、月奈を降ろす。

 早速見つけたらしく、月奈は木の根元にしゃがんで採取を始める。


「よし。兄さん、次に行きましょう!」


「了解。じゃ、失礼して」


 また月奈を抱き上げ、森の中を走り出す。

 それから数時間。無事にギルドのクエストを達成する事ができた。







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