第9話 義兄妹とリゼットの町

 俺達はようやく森を抜けて町についた。

 地図によるとこの町はリゼットという名前らしい。

 早速町へ入ろうとするが、首に青いネックレスを付けた男の衛兵に止められる。


「そこのお二人止まったください。身分証はお持ちですか?この町に来た理由は?」


 割と丁寧な対応に驚きつつも、俺が衛兵に対応する。


「俺達は遠くの町から来た者です。あいにくと、身分証は持っておりません。この町へは、物資の調達に……」


 その後もいくつかの質問されそれに対応していく。


「なるほど。ベンダントに反応はないし、…うん、問題なしだな。どうぞ町へ入ってください」


 あのペンダント嘘発見器みたいな効果があったのか。

 そんなことに驚きながらも言われた通り町ろうとした時、さっきの衛兵に声をかけられる


「あ、そうそう仕事を探すなら冒険者ギルドに行くといいですよ。ここから真っすぐ行けば看板がありますから」


「そうですか。ありがとうございます」


 今度こそ俺達は町の中へ入った。



 ―――――――――――――――――――――


「さて、まずどうしようか?」


「そうですね……」


 月奈は周りを見ながら考えると。、


「何だか目立ってる気がします」


「ああ、確かに」


 何か道行く人々が、こっち見てるんだよな。

 俺達おかしいところは無いと思……。


「……服か」


「そうですね。そういえば私達ずっと学校の制服でしたね」


 天のやつ、なんで砥石とか鉱石とかを入れてるのに服を入れてないんだよ……。

 まぁ、魔法で洗ってたし清潔ではあるけど。


「じゃあ服買いに行くか」


「そうですね。そうしましょう!」


 ということで服を買うことにした。




 ―――――――――――――――――――


「毎度ありー」


 ということで服を、買った。

 俺は黒を主体とした服と黒のローブ。

 月奈は白や水色を主体とした服と白いローブを着ている。

 他にも予備の服を数着買い、制服は腕輪の中に収納した。


「色んな服を買えて良かったな」


「はい!あの、兄さん。どうですかねこの服?」


 月奈はその場でクルリと回って上目遣いで聞いてくる。

 普段着ないような服ということで不安なのか、服屋でも何度もこの質問をされた。


「さっきも言ったけど、月奈によく似合ってて可愛いと思う」


「っ!ありがとうございます兄さん♪」


 森の中での生活はやはり辛かったのか、月奈は森ではあまり見せなかった笑顔を見せてくれる。

 俺としてもこんな質問に答えるぐらいなら苦ではない。

 まぁ、多少の気恥ずかしさはあるが。


「それにしても、服を変えるだけで結構人の目が減るもんだな」


「そうですね。それでもまだ少し目立ってる気がいします」


「そうだな。……たぶん髪色のせいじゃないか?」


 道行く人の髪を見てみると、赤、青、黄色、とずいぶんとカラフルな髪色の人が多い。だが黒髪は一人も見当たらない。

 せいぜい茶髪がいるくらいだ。

 なので、黒の髪色をしている俺達を珍しく思っているのかもしれない。


「なるほど。では仕方ありませんね。わざわざ染めたりするのも面倒ですし。……兄さん、他のお店も回りませんか?」


「そうだな。やっと森を抜けたし、町を楽しむか」


 その後も俺達はいろいろな店を見て回り、久々の安心と異世界の町を満喫して楽しんだ。



 ―――――――――――――――――――――


「ここが、聞いた宿屋か」


 俺達は町を満喫している途中に、色んな人から聞いて評判の良かった宿屋に来た。

 宿の中はたくさんのテーブルと受付の女将さん、一階では飯を食べてる人がチラホラといる。

 俺達はとりあえず泊まるために女将さんのもとに行く。


「いらっしゃい、泊まりかい?食事かい?」


「泊まりでお願いします」


「はいよ泊まりね。一人部屋なら一泊1000ゴル、二人部屋なら1500ゴルだよ」


 ふむ、一人部屋2つなら2000ゴルか。

 森の中では同じテントで寝てたし、 費用面から言えば二人部屋のほうがいい。

 けど月奈は、一人部屋でリラックスしたいかもしれないし……。

 俺はどんどん思考にハマっていく。 

 だが、俺は思考加速を使っているので実質1秒にも満たないレベルで考え事をしている。


 ちなみにこの世界の金の数え方は「ゴル」と言い、1円=1ゴル ととても分かりやすくなっている。


「二人部屋で!」


 俺が答えを出す前に、二人部屋を宣言される。

 宣言の主は当然月奈である。


「はいよ、部屋は2階の奥だよ。はい鍵」


 女将さんが出した鍵を月奈が受け取り、俺の手を引く


「ありがとうございます。行きましょう♪兄さん」


「あ、ちょっとま……」


「ちなみに防音はしてあるけど完全では無いからね。声や音には気をつけなよ」


 そんなことを、女将さんがニヤつきなら言う。

 俺はそれで、言葉の意味を察したが、

 月奈はキョトンとしている。

 それにならい、俺も分からないふりをしておく。


「そうですか、じゃあ大声で魔法の演唱は出来ませんね」


 俺が言うと、女将さんは「そういう事じゃないよ」という目で見てくる。

 それを横目に見ながら、月奈と共に階段を上がった。




 ――――――――――――――――――――――


 部屋の中はベットが二つと、木の机と椅子が置いてある。かなりシンプルな部屋になっていた。

 そして俺と月奈は久々のベットに寝転がりながら話をする。


「あの、すみません兄さん。勝手に二人部屋を選んでしまって」


「別に気に気にしなくていいよ。同じテントで寝てたし。……というか月奈の方こそ良かったのか?」


 俺が聞くと月奈は体を起こし、俺の方を見る。


「はい。私は兄さんと一緒でも問題ありませんし。……というか、兄さんがいないと不安なんです」


 そんな月奈の言葉に俺は思わず月奈の頭に手が伸びてしまう。


「あ、あの兄さん?」


「いや、ゴメン。月奈が、かわいいからつい…」


「えっ!?かわっ!?」


 月奈がいきなりフリーズしてしまい、このままだといろいろと、おかしくなりそうなので話を変える。


「そうだ!明日は冒険者ギルドに行こう。物資とか色々思ってたより高かったし、勇者を探すにしても情報を集めれる場所がいるし」


「そ、そうですね!それじゃあ明日は冒険者ギルドに行くことにして今日は早く寝ましょう!」


「そうだな!」


 こうして俺達は勢いに任せそれぞれのベットに入った。

 久々のベットと布団は、最高でとても良く眠れた。





















































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