第7話 義兄妹と異世界の森 〜初めての戦闘〜
「グギャャワ!」
「すごい、本物のゴブリンだ」
俺はゴブリンと遭遇し、少し感動している。
俺達はこれまでこれといった危険に会うことなく森の中を歩いていた。それは、それでよかった。月奈に危険な目にあってほしくないから。
だが、毎朝にはトーストとコーヒー。昼飯や晩飯には何故か米まで出てくる。美味しいから良いんだが、やはり異世界感が無い。
なので、こうして異世界の定番であるゴブリンに会い感動している。そんなことを思っているとゴブリンが手に
「グギャャワ!!」
「っと、危な!?」
俺はゴブリンの攻撃を避けて、腰の剣を抜く。
するとゴブリンは俺ではなく、後ろにいた月奈に対象を変え攻撃をしようと走り出す。
だが、
「グギャ?!」
走り出した瞬間にゴブリンの首が飛んだ。
やっぱり前言撤回だ。月奈に危険が及ぶなら、ゴブリンなんかに会わないほうがいい。
ゴブリンの首が飛んだのは、もちろん俺の仕業だ。
ゴブリンが対象を月奈に変えた瞬間、『思考加速』を発動させて、周りの時間がゆっくりに感じるようにした。
そして新たに手に入れた剣の扱いが上手くなるスキル、『剣術』を発動。さらに『魔力操作』で自分の身体に魔力を張り巡らせることで身体能力を強化して一瞬でゴブリンのもとに踏み込み、首を飛ばした。
そしてゴブリンを殺した瞬間、俺の中に何か満たされるような感覚が起こる。
(この世界では生物を殺すことによりその生命力や魔力をわずかに得て、吸収できるレベルアップのようなものがあると天が言っていたな)
初めての戦闘と生命力の吸収で呆然と立っていると、その様子を見ていた月奈が近づいてくる
「兄さん、大丈夫ですか?」
「あぁ俺は大丈夫。……まずいな」
「どうしたんですか?」
「『気配感知』に複数の反応か引っかかった。たぶんゴブリンだと思う」
辺りの生物の気配を感じることが出来るスキル、『気配感知』。
このスキルでゴブリンの気配を感知した。
距離もだいぶ近いというか、こっちの方に移動してきてるし、数も5、6匹はいる。
……どうしよう、逃げるか?
「兄さん。それ私に任せてもらえませんか?」
「月奈?」
月奈が真っ直ぐとした目で、俺を見てくる。
確かに魔法でなら広範囲に攻撃することが出来るから大丈夫だと思うが……。
「いや、でもなぁ……」
「兄さん、任せてください」
再び真っ直ぐした目で見てくるので仕方なく俺が折れる。
「はぁ〜、分かった。場所は右の方角、数は5匹だ。もうすぐ来るから構えておけ」
「はい!」
月奈がゴブリンの来る方向に向かって、腕輪に入っていた短杖を構える。
「もうすぐ視界に入る距離まで来るぞ」
そう言ってる間にも少しずつゴブリンの集団が見えてくる。
「見えました。いきます!『ウォーターボール』」
「クギャ!?」
月奈がゴブリンたちに向かって水の球をぶつける。
だが距離があるせいかあまりダメージは無く、影響解いて場ゴブリンが水に濡れた状態になったくらいだ。
濡らされて一瞬怯んだものの、ゴブリンたちはこちらに向かって走ってくる。
「氷ってください!『フリーズ』」
月奈がゴブリンの集団に向かって、水魔法Lv.3で使えるようになる水、というより氷の魔法『フリーズ』を使う。
すると……。
「クギヤャ!?」
ゴブリン達の体が凍っていく。
『フリーズ』は本来、冷気を出して物を凍らせる魔法。だが今の月奈の力では生物を凍らせるほどの冷気を発生させることは出来ない。
なので、事前に『ウォーターボール』で、ゴブリンの体を水に濡らすことでゴブリンを凍らせることが出来た。
「これで終わりです。『ストーンショット』」
月奈が土魔法『ストーンショット』で作り出したバスゲットボールほどの岩をゴブリンに向けて放ち、凍ったゴブリンたちはバラバラに砕け散る。
「はぁ、はぁ、や、やりましたよ。兄さん」
「お疲れ様。後始末は俺がやるから休んでおけ」
月奈は一気に三つの魔法を使った影響と、初めての戦闘ということでかなり疲れているのであとを引き受ける。
「と言っても、そんなにやることないけどな」
俺はゴブリン達の死骸に駆け寄り、腕輪に魔力を通してゴブリン達の死骸を腕輪の中に収納する。
この腕輪、中の物は完全に別々になっていて死臭が別の物に移ることもなく、さらに約1〜2メートル程度なら離れていても物を出し入れすることが出来る。
だが、魔法の結界の中にあるものや、生きている物は出し入れすることができない。
「よし、終わりだ。月奈行く……月奈?」
すべてのゴブリンを回収し終わったので先に進もうと月奈に話しかけるが、月奈は虚空を見つめてボーとしている。
「月奈?月奈!」
「ハッ!どうしましたか?兄さん」
少し強めに呼びかけると、月奈は反応を示してくれた。
「よかった。大丈夫か?月奈」
「大丈夫ですよ。さぁ、行きましょうか」
月奈の様子が心配だが、当の本人は進む気なので心配に思いながらも、再び俺達は森の中を歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます