第6話 義兄妹と異世界の森 〜初めての異世界生活〜
俺達は強い光に包まれ、気づいた時には真っ暗な森の中に転移していた。
「暗いな」
「そうですね。暗いですし、怖いです」
月奈がそう言った瞬間、
グォォォウ
と何かの声が聞こえた。
「に、兄さん今のって……」
「ああ、なんか遠吠えみたいなのが聞こえたな」
月奈が怯えたように、俺の服を引っ張る。
月奈の手前余裕なように振舞うが、正直俺もびびった。
この状況だと森を移動するのは無理だな。危ないし、普通に怖い。
「今日は、移動せずにここで休むか」
「それがいいと思います。たしかテントがあったと思いますから」
月奈が腕輪からテントを取り出して中に入る。
念じるだけで出し入れ可能とかこの腕輪便利過ぎる。
「以外に広いな」
テントの中は大人が2、3人が足を伸ばしても余裕があるくらいのスペースがある。
「ふぅ~まさかテントを用意してくれてるとはな」
「天ちゃんに感謝ですね。」
まったくだ。腕輪の中身を念じると、半透明なディスプレイが出てきて中身を確認できる。
本当にいろんな物が入っているな。
「まぁ今日は寝て、また明日物資の確認をするか」
「そうですね。ですが寝る前に『ホーリバリア』」
月奈が唱えた瞬間、テントの周りを覆うように結界が展開される。
「実際に見るとこんな感じなのか。魔法って凄いな」
「はい。光魔法『ホーリバリア』一定の範囲に結界を張る魔法。光魔法のレベルを上げておいて正解でしたね」
『ホーリバリア』は光魔法Lv.3で使えるようになる魔法だ。
正直レベルを上げるかどうかは悩んだが、こうして実際に見てみるとレベルを上げて正解だと思える。
「じゃあ結界も張ったし、寝ようか。お休み月奈」
「おやすみなさい兄さん」
こうして俺達は異世界一日目は眠りについて終わった。
――――――――――――――――――――――
翌朝
「……さん………きて…」
誰かの声が聞こえる。
「……さん……きて…さい」
また聞こえた。だが寝たいので無視する。
「兄さん起きてください」
今度ははっきりと聞こえたが「もう少しだけ」と言って寝返りを打つと、地面が固くて思わず起きてしまう。
「痛ったぁ〜。……あっ、おはよう月奈」
地面に打った体をさすりつつ、月奈に挨拶をする。
「おはようございます、兄さん。大丈夫ですか?」
月奈も挨拶を返しつつ俺を心配してくれる。
「ああ、すっかりここが異世界だっていうことを忘れてたよ」
ついでに言うと「知らない天井だー!」って言うのも忘れてた。ちょっとやりたかったが、またの機会にしよう。
「兄さん少し待ってくださいね。……『ヒール』『クリーン』」
月奈が魔法を使うと俺の体の痛みが消え、着ていた制服と体が綺麗になる。
「おお〜すごい綺麗になってる。あたらしい魔法か?」
「はい。光魔法の『ヒール』と、水魔法の『クリーン』です。兄さんの起きる前に天ちゃんから貰った魔導書を読んで覚えました」
魔導書、魔法の使い方や種類が載っている本だよな。
天は本当に色んなものをくれたな。にしても……。
「早速、新しい魔法を覚えて使うのはさすがだけど、大丈夫か?ちゃんと寝たか?」
新しい魔法を使えるようになる。それはいいことだが。こんな環境だし心配にもなる。
「私は大丈夫ですよ。さぁ朝ご飯を食べましょう」
月奈がそう言うので、大人しく朝ご飯を貰う。
「なんでトーストとコーヒーがあるんだよ……」
今日の朝ご飯はトースト、そしてコーヒーだった。
本当になんでたよ?と思いながら月奈を見ると、その手には魔法で水と火を出してカフェオレを作っている。
作り方はファンタジーなのに、作ってるのがカフェオレとか……。
きっと、これも天の仕業だろう。
異世界感ぶち壊しである。
――――――――――――――――――――――
異世界感を初っ端なから壊すような朝ご飯を食べ終わり、この森を抜けるための準備をする。
テントをしまい、腕輪に入っていた剣を腰に携える。
「よし、行くか」
「はい!」
俺達は森を抜けるべく、スマホのコンパスと腕輪に入ってた地図を持って歩きだす。
だがそもそも現在地が分からないのに地図が使えるはずが無く、すぐに収納してとりあえず真っ直ぐ進むことにした。
その移動している間にも、スキルや魔法を使ってスキルレベルを上げるようにしている。
そして日が暮れればテントを張り、天から貰った本を読んたり、剣の素振り、魔法やスキルの練習などをする。
そんなことをして、約3日間平和に平穏に歩き続けてついに……。
「グギャワ!」
「すごい、本物のゴブリンだ……」
異世界定番の敵であるゴブリンと遭遇した。
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