第5話 義兄妹のスキル

「まず、これからお二人のスキルです。スキルは、お二人の趣味や特技が形となって現れたものです」


 と言われ、目の前に半透明なディスプレイが現れる。


 ―――――――――――――

 星空冷夜ほしぞられいや 種族︰人族 


 スキル

 速読Lv.3 思考加速Lv.1 雷魔法Lv.1 風魔法Lv.1

 

 魔力操作Lv.1


 エクストラスキル

 ???


 ――――――――――――


 ―――――――――――――

 星空月奈ほしぞらつきな 種族:人族  


 スキル

 料理Lv.7 解体Lv.1 炎魔法Lv.1 水魔法Lv.1


 雷魔法Lv.1 風魔法Lv.1 土魔法Lv.1 光魔法Lv.1


 闇魔法Lv.1 魔力操作Lv.1


 エクストラスキル

 ???


 ――――――――――――――――――


 スキルは俺たちの趣味や特技と言っていたが……。


「この風魔法や雷魔法っていうのは何だ?俺は前の世界で魔法なんて使えなかったが?」


 ついでに言うと『思考加速』も心当たりがない。


『速読』は、高1のとき中学校にいる月奈のことが心配で気を紛らわすためにひたすら本を読んでいたからだと思うが。


「魔法のスキルはそのままの意味で魔法が使えるようになるスキルです。まぁ、レベルが1では、たいした魔法は使えませんが」


 たいした魔法ってどんな魔法なんだ?


「魔法系のスキルは今発現したものですね。お二人の世界には魔力や魔素といった魔法を使える要素がなかったので。ちなみにですが、『思考加速』は『速読』から。『解体』は『料理』から派生したものですね」


「では、このエクストラスキルというのは何ですか?」


 月奈がエクストラスキル欄にある『???』という文字を指しながら天に聞く。


「エクストラスキルというのは、普通のスキルよりも強力な力を持つスキルです。???という表記になっているのは、まだそのスキルを使える状態では無いということです。ですが、そのうち使えるようになりますよ」


 なるほど。

 つまり俺たちが持っているのは、明らかに戦闘向けとは思えないスキル。ろくな魔法が使えない魔法スキルレベル1。いつ使えるようになるか分からず、また能力不明なエクストラスキル。

 こんなので魔物のいる森で生きれる自信がない。


「もちろん、このスキルのまま森に放り出すなんてことはしません。私からの贈り物ギフトとして追加のスキルを送ります。これがスキル一覧です、好きなスキルを選んでください」


 そう言いながら、とてつもなく分厚い本を数冊渡してくる。試しにパラパラとめくって見てみる。


「……多いな」


「まるで辞書ですね」


 まさしく月奈の言う通り辞書だ。スキル名と能力が大量に書かれている。

 この本、上から下までぎっしりと文字が詰め込まれている。


「仕方ない。……読むか」


 早速、読む速度が速くなる『速読』と脳の処理が早くなる『思考加速』のスキルを使ってぶ厚いスキル辞典を読む。

 ちなみに読んでる最中にスキルレベルが上がった。





 ――――――――――――――――――――


「……完、成、だ!」


「お疲れ様です。兄さん」


 ようやくスキル選びが終わり、俺は床に寝転がる。どのくらい時間がたったかかはわからないが、とにかく疲れた。


 なんて言っても膨大なスキルの数に圧倒されながら選んでいる最中に、


「魔法のスキルは完全に生まれ持った才能だから選べません」


 と言われてスキル辞典から良さそうなスキルを見つけては魔法スキルでがっかりしたし。


「あまりにも強いスキルを選ぶと他のスキルを取ることができなくなります」


 と言われてスキルを選び直したし。


「スキルを取る代わりにスキルレベルを上げることができます」


 と言われて更にスキルを選び直したし。


「異世界で、新たなスキルを、習得することも可能です。例えば、剣の練習をしっかりやれば『剣術』のスキルを取ったりすることができます」


 といった、後出しなルールが大量に出てきて何度もスキルを選び直して本当に疲れた。

 そうして、俺が休んでいると天がその手に腕輪のようなものを持って近づいてくる。


「お疲れ様です。冷夜さん」


 天は微笑みながら近づいてくるが、俺にはもう後出しルールを無限に出してくる悪魔にしか見えない。


「天ちゃん、何ですかそれ?」


 月奈が天の持っている腕輪のようなものを、指を指しながらたずねる。


「これはですね、私からお二人にプレゼントです。着けてみてください」


 俺と月奈は立ち上がり、腕輪を受け取り言われたとおりに腕に着ける。


「それは、異空間収納の魔法が付与された腕輪です。中には約一ヶ月は問題なく過ごせるだけのお金と食料、そして物資や武器を入れています。さらにお二人にしか使えないようになっている特別製です」


 すごいな、かなりのチートアイテムだ。

 さっきまで悪魔にしか見えなかったのに、今ではてんが天使に見える。


「そしてもう一つお伝いしなければならないことがあります。実は今8人の勇者と異世界の人がお二人が行く世界、「アルヒルド」に転移しました。」


 天は一旦言葉をくぎり、「アルヒルド」と思われる大陸の地図を見せてくる。


「ですが、邪神の力があまりにも強く、転移した先での勇者の動向を見ることが難しくなります。なのでお二人にお願いがあります。勇者との接触。そして勇者が、神装を手に入れる手助けをしてほしいのです。」


「なるほど、勇者との接触は分かったが。神装っていうのはなんなんだ?」


 俺の問に天が口を開く。


「神装とは、その名のとおりに神にも近い力を持つ、勇者にしか使えない武器のことです。そして「アルヒルド」には10個の神装があり、その神装だけが邪神に対して有効な攻撃となります」


 つまり邪神を倒すには、勇者と神装の力が必要なのか。

 だとすると森を抜けたらまず勇者を探さないとな。


「勇者の位置って、分からないのか?」


 と聞くと天は困ったように笑い、地図を指す。


「えっとですね、……ここと、ここ、後はこっちですね。ちなみにお二人が転移する場所はここです」


 と、かなりのバラバラな位置を計4箇所を指差す。


「すみません。私には自分の管理している世界、お二人と同じ世界の勇者の転移場所しか分からないんです」


 つまり残りの5人は別の世界から来るということか。


「他に質問はありますか?」


 と、天が聞き俺と月奈は顔を見合わせながら首を横に振る。


「それではお二人を『アルヒルド』に送ります。ですがその前に……」


 天が半透明なディスプレイを操作すると同時に、俺と月奈の足元が光る。


「お二人に、「管理者の加護」と「念話」を付与しました。これで私に連絡をすることができます。ですが邪神に気づかれる可能性があるのであまり頻繁に使用するのは避けてください。「管理者の加護」は成長速度を上げたり、言葉を分かるように、自動で変換することがでるスキルです」


 そう言われ俺達はステータスを確認する。


 ―――――――――――――――――――――

 星空冷夜 種族:人族


 スキル

 速読Lv.5  思考加速Lv.3 気配感知Lv.1


 隠密Lv.1 魔力感知Lv.1   錬金術Lv.1


 鍛冶Lv.1 念話Lv.1  風魔法Lv.1 雷魔法Lv.1


 魔力操作Lv.1


 エクストラスキル

 ??? 管理者の加護


 ―――――――――――――――――――――


 ――――――――――――――――――――――

 星空月奈 種族:人族


 スキル

 料理Lv.7 解体Lv.1 鑑定Lv.1 念話Lv.1


 炎魔法Lv.1 水魔法Lv.2 雷魔法Lv.1 風魔法Lv.1


 土魔法Lv.1 光魔法Lv.3 闇魔法Lv.1 魔力操作Lv.3


 エクストラスキル

 ??? 管理者の加護


 ―――――――――――――――――――


 俺は広く浅くのスキル構成。

 月奈は魔法のスキルを上げた魔法特化型のスキル構成。

 そして選んだスキルに加えて、念話とエクストラスキルに「管理者の加護」が追加されている。


「それではどうかお気をつけて。絶対に死なないでくださいね」


 その言葉を聞き、俺達は強い光に包まれた。










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