第4話 義兄妹と管理者②

「お二人にはこれから異世界に行っていただきます。」


「「異世界?」」


「はい、剣とか魔法とか魔物とかのいわゆる異世界召喚です。そしてその異世界にて「邪神」を滅ぼしてほしいのです」


「「邪神?」」


「はい、邪神とは我々管理者の下の存在、神が堕落したものです。」


「神って堕落するのもなのか?」


「まぁ、神にはかなりの種類がいますから一柱くらいそういう神もいます。っと、話を戻します。そしてその邪神を滅ぼす、またそれに貢献してもらえれば、我々が何でも願いを叶えます」


 何でも願いを叶える、かなり魅力的だし、神もといその上の存在というのであれば可能なのだろう。


「あの、何でも願いを叶えるなんて対価を出すよりも、天ちゃんがどうにかできないんですか?」


 月奈の質問に天は横に首を振って答える。


「それが無理なんです。わたし達管理者そして神は世界に過度に干渉できないという制約があるんです。今回のような異世界の人に力を与えて世界を救うというのが私達にできる限界なんです」


「俺達が異世界に行ってする事は分かったが、どうして俺達なんだ?」


 このことを聞くとてんは言いにくそうにうつむくが、決心をしたのかこちらを見て口を開く。


「この召喚は本来お二人を中心としたものではありません。本来であれば勇者の素質を持つ人を中心にして複数人でこの白い空間と同じような空間に転移させられるはずでした。ですが、お二人の近くに複数人の勇者がいたせいで本来の転移させられる場所の座標がずれてしまい……」



 以下、話が長いので簡潔にまとめる。

 本来であれば。


 1 勇者を中心に魔法陣が展開され、複数の人で白い空間に転移。


 2  白い空間で神に「勇者よ、世界を救ってください」という言葉とスキルを貰う。

                             

 3 異世界の王城に転移、王城で手厚く保護されて訓練開始。衣食住完備。


 という形だったらしい。だが俺たちは。


 1 近くに複数人の勇者がいて魔法陣が偶然、俺たちのいた場所で重なってしまい転移先が本来の場所からズレた。


 2 白い空間で、管理者と遭遇。


 3 転移先がズレたせいで俺たちは森に転移させられるらしい。魔物あり、危険あり、衣食住不備。

 

 となるらしい、いわば俺達は巻き込まれ召喚だ。


「えっ……俺たち詰んでる?」


 本来であれば、安全地帯から訓練してから、スタートなのに俺達は危険地帯からいきなりスタートになってしまう。

 こんなもの、魔物と遭遇したら即人生終了だ。


「はい、詰んでますね、本来であれば」


「どういうことですか天ちゃん?」


 天の意味深な言葉に月奈が反応する。


「当然、お二人をそのまま死地に送るような真似はしません。お二人に私からスキルを授けます!」




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