悪役令嬢は今日も今日とて恋愛相談を待っている。

聖願心理

序章 ここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢ならしい

プロローグ いよいよ始まる……

「いよいよね、ロイド」

「いよいよです、お嬢様」


 こつこつと靴音を鳴らしながら、私は廊下を歩いて行く。

 隣には、私の専属執事のロイド・バズウェルがついてきている。

 ロイドは、白髪に茶眼のイケメンで、子爵家の三男坊だ。実家を継がないので、こうして公爵令嬢である私の専属執事をやっているのだ。


「今日はいよいよっ!」


 ある部屋の部屋のばあああん、と勢い良く開けて、言い放つ。


「王城に私の部屋が、正式に与えられる日っ!」


 目の前に広がる、部屋。座り心地の良さそうなソファ、鮮やかな色に染まるカーテン、高級そうな執務用の机、本や資料がみっしり詰まった本棚、豪華な装飾品。


 ここが……、ここがっ! 心待ちにした私の部屋っ!


「嬉しいのはわかりますけれど、他にもっと大事なことがあるでしょう」


 私の感動を邪魔するように、ロイドが口を挟んでくる。

 他に大事なこと? そんなことあった?


「今日からですよ。乙女ゲームが正式に始まるのは」

「乙女ゲーム……?」


 なんだっけ、それ。と考え込み、しばらくして思い出す。


 そうだったそうだった。

 この世界は乙女ゲームの世界で、私、ステラ・ラウントリーは悪役令嬢なんだった。


「あー、そうだったわねぇ。すっかり忘れてた」

「なんでそんなに悠長にしているのですか?! ヒロインが王城にやって来るのは今日なんですよ」

「え~、だって、私、破滅する理由なんてないよ?」


 私が主にメインで悪役令嬢をやる攻略対象の王子とは、仲の良い友達だし。


「油断は禁物です。気を引き締めてください」

「ロイドは気にしすぎなんだって」

「何がどう転ぶかわからないんですから、気にしすぎも何もありません」

「はいはい」


 ロイドの話をいつものように聞き流して、私は自分の部屋を満喫することにした。

 私はソファに座りながら、昔のことを振り返る。



 ……ああ、このソファ、一生座ってたいなぁ。

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