第5話『優男を乗り越えて』
「さて、サクッと終わらせますか」
第一印象は優男。優しげな笑みを浮かべ、だからこそ何を考えているのかわからない。
そんな奴相手に切り込むか……いや、俺の能力はカウンター型だ。様子を見ようか。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……攻めてこなくていいの?」
「それはお互い様だろ」
やけに長いため息の後、何を抜かすかと思えば軽い挑発。
それならこっちから攻めても良さそ――
「な、んだ……これ」
「あーちょっと遅かったね。もう勝負はついたよ」
何ふさげたことを抜かしてんだ……!
まだだ、志賀さんの分まで俺は戦わなければならない……のに、身体は痺れて動けない。
「ゴラァ! てめぇ、アイツの分まで頑張るんだろうがァ! さっさと倒せや!」
んな事俺が一番わかってるっつーの!
でも、動かねぇ……なんでだよ、俺はこのまま負けちまうのか……?
「んー、あんまり早く殺すのもあれだけど……いいかな?」
笑みだけをひたすら浮かべ、優男はゆっくり近づいてくる。
アイツの息が痺れ効果をもたらす。それに素早く気づけなかった……俺の敗因だ。ごめん、志賀さん……。
「グッ……ガァ……」
刃物を取り出した優男は、俺の腕を斬りつけた。
「あぁ……痛いよね。でも身体、動かないんだよね? 悲しいなぁ……こんな形で終わるなんて」
ザクザク斬りつけ、俺の身体を割いていく。
血が流れ……出血多量かショック死かの二択が迫る――いや、待てよ?
「槍」
「へ? ガハッ……」
そうだよな。俺の能力、血が出てれば発動するんだよな。
前まで自傷で使っていたけど、相手が出したって発動するんだよ。
「うーん。ちょっと頭が悪かったなぁ
刹那に優男は体が破裂した。
そんなことってあるのかよ……口滑らせただけで、簡単に死ぬ……のか?
「お前……俺らの命をなんだと思ってやがる……!」
志賀さんの件も優男の件も、命を軽んじているとしか思えない。
そんな怒り心頭な俺の言葉を、ピエロは笑って返す。
「何言ってるの? 君達は既に死んでるって言ったじゃん。だから何してもいいでしょ? ――さ、今回はあっさり済んじゃってつまらないし、君も怒ってる。どうせなら君に特別なことをしてあげよっか」
「は? 何言って――」
刹那、俺の視界は闇へと沈んだ。
*
「ここは……」
見知らぬ地。しかも誰一人としていない。
先の見えない暗闇で、でもどこまでも続いているのは理解できる。
「何をさせるつもりなんだ?」
俺の発した言葉を呼応するかのように、ピエロは現れた。
だが、今回はモニターではない――実物だ。
瞬間的に判断した俺は、指を噛んで血を採取したところでピエロに飛ばす。
「槍!」
槍が飛んでピエロに突き刺さる。
今まで通りの勝利と同じ条件で、やり口も変わらない。
「――だから、勝てると思ったのかなぁ?」
理解が追いつかない。何が起きたのか、そんなのさっぱりわからない。
それでもたった一つ、理解出来たことがある。それは――『絶対に勝てない』ということ。
槍は砕けてバラバラとなった。
その現実が、俺の勝ちを遠ざけた。
「これで、本題入って聞いてくれるかなぁ?」
「…………ああ」
俺は頷く以外に出来なかった。
なにせ……どうしても勝ち筋が見えないのだから。
「今から五日間、この空間で生きてくれるかなぁ? それだけ、それだけで君の望みを叶えてあげるぉー? そう、例えば――復活とかね?」
俺のキレる理由、その一番が志賀さんの死だ。
発破をかけるつもりで言ったのかは知らない。だが――
「何があるのかわからなくても、俺が志賀さんを生き返らせてやる」
この先の五日間、様々な苦しみが襲ってくるだろう。
ただ、どんな苦しみも『死』に勝るものはないし、死んだら元も子もない。
それを志賀さんは既に味わい、俺は救える可能性を持った者。
となれば――やるべき事は一つしかないだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます