08: just a bit of casual calls

「もしもし」

「あ、新介?」

「浅彦かよ。なんで公衆からなんだよ」

「あーなんかヒマだったから」

「またケイタイなくしたのか?」

「いや殺してやった」

「は?」

「着うたとかうるさかったし」

「壊したってコト?」

「正確に言うなら、溺死?」

「便所にでも流したのか?」

「え、なんでわかんの?」

「おまえ、アホ?」


   ◆ ◇ ◆


「もしもし」

「あれ、新介?」

「てめえでかけてんだろーが」

「そーだけどさ。今ヒマ?」

「あーかなりヒマだわ。なんか面白い話あんの?」

「あるある。俺のコレクションついに二百枚越えた」

「え、あの切符?」

「そうそう。すごくねえ? 二百枚だぜ?」

「二百回キセルしたってことだろ。どこがすげえんだよ」

「なんでわかんねーかなー」

「知るか。あ、みどりがおまえのメアド知りたがってたけど教えていいの?」

「は、なんであの女が出てくんだよ」

「今日会ったんだよ」

「つーかあの女なにもんなの? おまえのダチ?」

「ダチっつーかただの知り合いだけど」

「なに、おまえああいうのがタイプなわけ?」

「ちげーよ。でもまあ、普通に可愛いよな。三年では結構モテるらしいぜ」

「マジで? 信じらんねえ」

「前から思ってたけど、おまえみどり嫌いなの?」

「いや、食堂のAランチ並に大好き」

「嫌いなんだな」


   ◆ ◇ ◆


「もしもし」

「新介! 俺決めた! NASA行ってパイロットになる!」

「は? またなんか宇宙系の映画でも見たわけ?」

「ちげーよ、今NASAはすげえことになってんだぜ」

「あっそ。よかったな、頑張れ」

「あってめえなんだよその反応! 俺アメリカ行くんだぜ」

「勝手に行けよ」

「……」

「黙るなよ」

「やっぱNASAより国連の方がよかった?」

「なんの話してんだよ、おまえ」


   ◆ ◇ ◆


「もしもし」

「なあなあ新介、弘明怒ってた?」

「ああ、浅彦か。そりゃ怒るだろ、あんなこと言われてよ」

「あんなこと?」

「てめえ言っただろーがよ、おまえの親父はダンボールでどーのこーのって」 「ん?」

「ん、じゃねえだろ、なんであんなこと言ったんだよ」

「ぎゃはははは」

「笑うなよ。つーか今のでなんで笑えるんだよ」


   ◆ ◇ ◆


「もしもし」

「ワタシは誰でしょう」

「おまえそんなアホなコト言うために非通知にしてんの?」

「ワタシは誰でしょう」

「相当ヒマなんだな。つーかテスト明日だぜ、勉強しろよ」

「ワタシは誰でしょう」

「……浅彦」

「うわーすげーなんでわかったの?」

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