第8話 定期検診と恋バナモドキ
「早乙女さん、最近どこか痛くなったり違和感があったりするところはありませんか?」
そう言って微笑む
「あ――――そうですね、最近はちょっと咳が止まらなくなりがちです。あと、たまに胸の辺りが痛くなることがあります。」
そう言うと、高橋先生は僅かに眉を
「そっかー。ちょっと喘息が悪化しちゃったみたいだね。新しい薬を処方しておくね。多分それで痛みは無くなると思うな。」
「ありがとうございます、高橋先生。」
お礼を言うと、高橋先生はとても嬉しそうに笑った。たまに跳ねるポニーテールと笑顔が可愛い先生だと思う。私もつられて笑っていた。
「早乙女さん、最近学校はどう?」
「えーっと、友達が増えました。
高橋先生はいつもニコニコしながら楽しそうに聴いてくれるから、つい、余計なことまで喋ってしまっている気がする。でも、高橋先生と話すのは、それくらい楽しい。
「へぇー。そうなんだ。じゃあ、高校生活は上手くいっていそうだね?他には?」
「はい!後ですね、前に病院で会った月城くんに最近お弁当を作っているんです!」
「えっ?!それってもしかして、彼氏?」
「は?何言ってるんですか?!そんな訳無いじゃないですか!!」
あぁ、やっぱり余計なことを。私は馬鹿なのか?
「いやいや、普通何でも無い男に弁当なんて作らないでしょ。」
確かに、そうかも?
「あのですね?色々事情があったんですよ!だから、そういうことじゃありません!!」
「事情って?」
高橋先生、なんかニヤニヤしてるんだけど。まさか先生が恋バナ好きだったとは思わなかった。面倒だなぁ。
「話せば、長くなりますよ?高橋先生、次の患者さんの診察は良いんですか?」
「じゃあ簡潔に言って!」
おーう。最後の悪あがき失敗!!先生のしたり顔、ウザい。
「成り行きです。」
「まとめすぎて分らない!!もうちょっと詳しく!」
「先生、注文多過ぎぃ!」
「ほら、時間無いよ?」
「だから、昼にお弁当を食べてて、作り過ぎちゃったから凪に“食べて?”って意味で“誰か食べてくれないかなー。”って言ったら。」
「で?」
「どっからか月城くんが現れて“俺に頂戴”って。」
「も、もしかしてそれであげちゃったの?
「まぁ、食べて貰えるならいいかなぁ?って思って。」
「はぁ――――――――。
何か先生、凪と全く同じ反応なんだけど。
「勘違いって何をですか?まあ良いです。それで、月城くんが私のお弁当の味を気に入っちゃったみたいで、また食べたいと。そして、そんな話をしていた
だから、先生が言うような関係とかじゃ決してありません!」
そう言い切ると、先生は凪みたいに残念なものを見るような目で私を見てきた。
「ちょっと何ですか?!その目!!高橋先生今、凪みたいな目をしてます!」
「早乙女さんって鈍感なんだなぁ、と思って。」
「鈍感なんかじゃありません!凪と同じ事を言わないでください!」
「私、ナギちゃんと友達になれそう。」
「ならなくて良いです!凪は私の友達なので取らないでください!!」
私のことを散々からかった
「取らないから安心して、早乙女さん。もうそろそろ時間よ。またねー。」
「はい。また来週。」
『8月16日。残り335日?
今日は定期検診だった。
高橋先生とも仲良くなってきた気がする。あくまで患者と医者の関係ではあるけど。
でも、先生が恋バナ好きだとは思わなかったなぁ。
私には良く分んないけど。
先生、可愛いしモテるのかな?あんまり興味ないけど来週は仕返しに先生の恋バナ訊いてみようかな?
でもなー、先生調子に乗りそうだし。
きっと今日もちゃんと笑えていたよね?
みんな良い人だから、心配なんて掛けたくない。明日も笑わないと。』
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