第5話 間接キスとお弁当 (2)
「はぁーい。わっかりましたぁー。お母さん?」
「はぁ?!誰がおか――――」
「箸、持ってきたぞー!」
凪が何かを言い返そうとしたけど、月城くんに
「じゃ、いただきまーす!」
「どぞどぞ。」
今日の玉子焼きは塩味。更に、中に鮭フレークを入れてみた。これが中々に美味しくて、味にはかなり自信がある。月城くんの黒い箸に挟まれた玉子焼きが、勢いよく月城くんの口に運ばれていく。・・・・・どうかな?
「
月城くんはそう言って、あっという間に最後の一個も食べちゃった。よし、玉子焼き完食!美味しかったみたいで良かった。
「早乙女、この玉子焼き
「月城くん気付いてくれてありがとう!実はこれ、鮭フレークを入れてるんだ!美味しいでしょ?」
「マジか。玉子と鮭ってめっちゃ合うんだな。これ気に入った。また作ってきてよ。」
うん?ってことは月城くん、また食べに来るの?う―――ん・・・・・まぁ、いいかな?賑やかにもなるし。
「うん、いいよ。明日も作ってくるね。」
「よっしゃ!」
「はぁ?!ちょっと待て!おい月城!何凛から弁当強奪してんのよ?!っていうか凛、作るって何?そんなの聞いてないんですけど?!まさかの手作り?!だったら私が食べるのにぃ。月城ずるい・・・。」
「何言ってんだ水瀬。お前にはやらねぇし。早いもん勝ちなんだよこーゆーのは!!ははっ早乙女の弁当はもう俺のだ!」
あれ?いつの間に私の弁当が月城くんのになったんだろう。でも、美味しく食べてもらえるならいっか。
「どーぞどーぞ。食べてください。凪もそんなに食べたいならあげるよ?」
「いいの?ありがとう凛!どうだ月城!私も凛の手作り弁当ゲットだ―!!」
「クッ―――――でも、早乙女の弁当のファン一号は俺だから!!!」
バチバチって二人の間に火花が見える。何だろう、「喧嘩するほど仲がいいってやつかな?」
「「良くない!」」
「えっ聞こえてた?息ぴったりじゃん。っていうか突然叫ばないでよ。びっくりしたんだけど?!」
「ねぇ、君たち。そんなことより時計見なよ。あと2分!早く食べないと数学始まるよ?」
言われて時計に目を向ける。聞き間違いじゃないみたい。
「ありがとう、
「おう
「そう。それは良かったね。
「うおっ?!すまん。全く聞いてなかった。早乙女、残りも全部もらっていいか?」
「うん。いいよ。ありがとう、食べてくれて。」
月城くんは、ものすごい速さで弁当を食べ始めた。唐揚げが2秒でなくなっちゃった。1秒で2個、どうやって食べてるんだろう。
「早乙女さんと水瀬さんも、急がないと間に合わないよ?こんなバカのことは放っておいて、数学の準備でもしたら?」
「「ありがと」う。佐山くん。」
「よっし!間に合った―――。ご馳走様。」
「月城君。間に合っていませんよ。今すぐ席について!はい。号令お願いします。」
「ゲッ?!
「月城君!先生を付けなさい。森田先生です!」
教室の前には既に森田先生が居て、先生はこちらをじっと見ていた。森田先生は何か怖くて、ちょっと苦手。佐山くんを見ると、言わんこっちゃないって呆れ顔をしていた。
「はーい。森田センセー。」
「ごめん月城くん。」
「別に良いって。気にすんな。俺と水瀬がふざけ過ぎただけ。」
「ほら。何やってるんですか。月城君、授業始まっていますよ?」
「はーい。すいませーん。」
「はぁ―――――。」
あ――――先生怒ってる!ごめん月城くん後でもう一回謝ろう。
結局授業中ずっと指名され続けた月城くん。何問もあったのに、全部正解なんて凄すぎるよ。授業が終わった後月城くんに謝ったけど、数学得意だから問題ないって言ってた。いいなぁー。私数学全くできないもん。今日のお詫びに、明日の弁当はちょっと凝ったものを作ってみようかな?喜んでくれるといいなぁ。
『7月19日。 残り363日?
月城くんが、玉子焼きを喜んで食べてくれた。
でも、数学に遅れちゃって怒られちゃったから、お詫びに明日はもっと美味しい弁当を作ろう。
玉子焼きの中身、変えてみようかなぁ?
月城くん骨折してるから、カルシウムを増やそうかな。
月城くんがいると、何か楽しい。
あーあ。もっと早く月城くんみたいな人と会いたかったなー。
人生無駄にしちゃった気がする。ま、今までそんな人いなかったから、仕方がない。それに凪がいたからいいや。
この幸せが、ずっと、ずっと続けばいいのに。』
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