第12話 私の夢の日々

 それから、毎日(といっても、早送りしているから私にとってはほんの数時間のできごとなんだけれど)いろいろな話をした。本当に、いろいろな。

 ハナさんの、お母さんのこと(つまり、私のおばあちゃま)。

 夫のこと(お父さんね)。

 飼っていたペットたちのこと。

 学生時代のこと。

 ハーブに興味を持ったきっかけ(は、すでに一部聞いていたけれど)。

 そして、将来の夢のこと―。


「メイちゃんの、夢はなに?」


 私の夢、本当の夢は、今、叶いつつある。でも、そんなことは言えないから、


「ハーブティーを研究して、多くの人に役に立つレシピを作って広めることです」

 と答えておく。これもまあ、嘘ではないけれど…。わあ、私と一緒、目を輝かせながら、ハナさんは応えた。そんなあなたの夢を摘んだのは、この私なんです―。

 お茶、淹れ直しますね、目を伏せながらそう言って、立ち上がった。



 過去の世界に滞在を許された9時間は、それは貴重な時間だったけれど、実は100%、お母さんとのお茶の時間に費やせたわけではない。家を辞してまた訪れる、そんな“ふり”をする間には、わずかながら過去の街、近所の商店街などを垣間見ることもあった。

 それは、ちょっと不思議な体験だった。数年前に閉店したお店が、ここでは健在で賑わっていたり。あの店員さんたち、17年後に閉店するなんて、思ってもいないんだろうな、なんて思って、ちょっとしんみりした気持ちになった。

 そうそう、うさぎ公園で出会ったあの少年も、見かけた。あっちも私に気づいたようだけれど、何度も会うと未来へ影響が及ぶかもだから、なるべく会わないよう気を付けることにした。…あの子、私が元いた世界では、27、8歳? 年上に“あの子”も無いもんだけど、ま、出会ったのが子どもなんだから、しょうがないわよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る