第11話 夢が、叶いつつある
美味しく美味しく、飛び切り美味しく―。
そう念じながら、とっておきのブレンドでお茶を淹れた。あら、そんな組み合せをするのね、それはどんな効用が? お茶を調合して淹れる間、ハナさんはずっと質問しどおしだった。私のスペシャルブレンドなんです、基本的に、私のお茶は、どれも女性の体にやさしいことを心がけています―、そう言いながら注いだお茶を差し出すと、いい香りね、とうっとり目を瞑って言った。それからゆっくりと口をつける。その間、私の胸は緊張で張り裂けそうだった。そんな表現がぴったりくる気持ちが本当にあるなんて、今まで知らなかった、そんなことを考えていると、ハナさんは幸せそうな吐息を漏らして言った。
「とても美味しいわ。香りもいいし、なんだか落ち着く感じがする」
すごいわねえ、まだお若いのに。すごい才能だわ。心からと思われる称賛の言葉に私の緊張の波はすぅっと引いていき、代りに心の中がさわさわと揺れるような感覚を覚えた。
お互いにレシピについて質問し語り合い、そうして1時間ほどが過ぎても、話が尽きることは無かった。だけど、いつまでもこうしてはいられない。こちらの世界に滞在できる時間は限られているんだから、残り日数と時間のことを考えて、計画的に行動しないと。5時の鐘の音が響いたのをしおに暇を告げると、ハナさんは、楽しかったわ、よろしかったらまたぜひお寄りになってと言ってくれて、その言葉に、私は、はい、ぜひ! と答えた。
「実は、1週間ほど近くの親類宅に滞在するんです。人手が必要なので、その手伝いで。でも、午後の1時間ほどはすることが何も無くて、こちらのことはよくわかりませんし知り合いもいませんし、暇で困っていました。
もしもご迷惑でなかったら、明日もまた、お邪魔させていただけると嬉しいです。よろしければ、また別のスペシャルブレンドを、お淹れしますよ」
「まあ、そうなの? 本当に? ぜひいらして、明日といわず明後日もその次も、メイさんがここにいらっしゃる間、ご都合のよいときにはいつでも!」
「ありがとうございます。嬉しいです」
望みどおりの展開に内心ガッツポーズをしつつ、なるべく慎ましく、そう応えた。明日からが、楽しみ。どんな話ができるかしら?
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