第10話 謎の2人の説明(補足)

 結局、謎の2人との脳内会話で、こちらの時間にして1週間の間に合計9時間、自分がこの過去の世界に滞在できることを知った。9時間? もうすでに2時間、使っちゃってるんですけど? 残り6日間で7時間って、平均1時間ちょっとじゃない。余裕が無くない?


『うん、ごめん。僕が伝え忘れていたせいで。で、上司に相談したら、これは当方のミスですので、今までの2時間はノーカウントにいたします、って。だから、これからまるまる9時間、君には滞在時間があるよ。

 もちろん、それより早く戻りたければ強く願ってもらえれば戻すからね、強くね、そうでないと、聞かないようにしてるからね!』


 そう念を押してから、脳内の声は消えた。私が、心を読むな! と怒ったことが、よっぽど堪えているらしい。まあ、いいことだけど。…でも待って! まだ、聞きたいことがあるのよ! 私はその間、着替えも持ち金もなく、どこに寝泊まりすればいいの? 一人あわあわし出した私を、ハナさんが不思議そうに見ている。ごもっとも、でも、せっかく1週間、“お母さん”と過ごせるのに、着の身着のままでお風呂も入れず、だんだん臭くなって行ったら、会いづらいじゃない。いったいどうしたら??


「あの、ねえ? だいじょうぶ?」

「ああ、はい、だいじょうぶです。はい」


 咄嗟にそう応えると、ならいいけれど、と、若干の思案顔のままハナさんは引き下がった。まさか泊めてと言うわけにはいかない。けど、このまま野宿で1週間はきつい。きつすぎる…。


『あ、あのう…』

『今度は何!?』


 またも脳内に響いてきた遠慮がちな声に、余裕のない私はいらいらして、でも、今度は不審がられないよう、心の中だけで応える。だからぁ、怒らないで、という情けない声に続き、これも言い忘れたけど、とすまなそうに話が続いた。

 で、結果、話を総合すると、こうなった。


 ・この世界では、普通の人間に見えても生きた人間としての実態は無いも同然

 ・ゆえに、お腹が空いたり、眠くなったり、体が臭くなったりの変化は起きない

 ・服装も、イメージするだけで変えられる(着の身着のままは避けられる!)

 ・念じれば、時間を自由に進められる(録画の早送りみたいなイメージ?)

 ・ただし、時間を逆行はできない


 つまり、野宿しなくていいし、服も念じるだけで着替えられるということよね。進める分には、時間をどこまで進めるかはコントロールできる(ただし、5月26日の午後2時まで)とりあえず、これで問題はなさそう。

 まったくもう、こういう大事なことは、事前にきちんと説明してほしかったわ。独り言にかこつけて強く強く念じると、またも『ごめん』という声が聞こえ、再び何も聞こえなくなった。


 とにかく、これで心配事は無くなった。そう思いながら改めてハナさんを見る。心配そうにこちらを見ていたハナさんは、ほっとした顔の私を見て同じようにほっとした顔になり、ねえ、よかったらお茶を淹れてくださる? と微笑んで言った。

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