このまま

@yuuha0627

第一話 高校時代

 希望、友情、青春これらすべてが手に入るのだと思っていた。胸を弾ませながら受験番号を目にしたあの日、2個目の私ができあがった。

初めてのことばかり待ち構えていた3月があっという間に過ぎていった。

高校生活にも徐々に慣れはじめた頃私に高校生活を狂わす大きな事件が2つ起きた。

 私には光という彼氏ができた。私はバスケ部、彼はサッカー部だった。

青春ドラマに出てきそうな組み合わせだなと我ながら思う。

でもドラマみたいに恋愛って滅多にうまくいかないことを私はこの時まだ知らない。私には光ではない好きな人、いや頭から離れない人がいた。中学時代に唯一自分から想いを伝えた相手だ。しつこいほどに何度も好きという言葉を発した。

今思うと気持ち悪っと言える自分は少し吹っ切れたのだろうか。こんなことを考えている時点で光とは、 別れた方がいいと思った。だから、私は、決断を光に委ねることにした。なんて卑怯な手口だろうか。選ぶということは、責任を問われることだと誰かが言っていた。でも、光は自分で自分の責任を重くした。

彼の答えは、「咲が忘れられないなら無理しなくてもいい、俺がそいつを超えてみせる。」というなんとも衝撃的な返事だった。その時の私は、この何も根拠のないふわふわとした返事を心の底から愛しいと感じた。ここからは、まるで少女漫画の最高のシーンだけをきりとった恋愛が再スタートした。

 8月。そんな恋愛は幕を閉じる。田舎の普通の花火大会ですべて水の泡となった。

私はこの田舎の花火大会になんとか毎年参加している。

友達 家族がこれまでの私の夏の救世主だ。

花火大会といってもそんな大それた花火は上がらない。

中学3年の時三年間花火大会に誘い続け、断られ続けた陽太と三年越しの花火を一緒に見たのだ。その時の花火は、どこの花火よりも美しく繊細に見え、この世のどんな人よりも自分は幸せなんだと思えた。

人混みの中普通の中学3年の男子なら真っ先に手を繋ぐ場面でさえ彼は、タオルを私に差し出し握らせた。こんな最高のシチュエーションのこんな訳のわからない行為は絶対世の恋する乙女は許さないだろう。だけど、私は違った。彼が隣に居るだけで、それだけで満足だった。と思う。

その翌年、私は、光と花火を見た。このとき見た花火の美しさ繊細さは去年とは全くの別物だった。花火の上がる音がする度、私は去年の世界に戻っていた。それが、どういう意味を示すのかすら気づかずに。

次の日、中学から友達の香に女子特有の行事報告をした。素直に包み隠さず陽太を少し思い出したことも何もかもを一から十まで説明をした。それが友達だからと私は、思っていたから。その次の日、電話で光は、私に「まだ、忘れられない?」となんとも恐ろしい質問をしてきた。私はすぐ「え?何のこと?」と角に頭をぶつけたのかというくらい馬鹿な返答をした。自分でもわからない。何で光がそう思ったのか。何で香にしか報告していな行事報告が光に知られているのか。もうどうでもよくなった。光が本当に好きだった。それだけは、はっきりと言える。そんな感情を信じてくれる人は多分誰も居ないと思うけど。私はこの時点から男垂らしというスタンプを色んな人の視線によって押された。光もその中の一人として高校3年間を過ごしただろう。こういう不幸があると、友情は謎に深まる。香は、心配してくれた。と思う。「男は一瞬女は一生だからね。」と根拠のない励ましをしてくれた。人間というのは、どうもこう、根拠のない気持ちを思いつくのだろうか。誰もその答えがわからない、だからこんなにもいとも簡単に嘘みたいな気持ちを言葉にできるのだとそう思うしかない。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

このまま @yuuha0627

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る