第74話 ボスバトル!!
「くっそ!数が多い!」
「ロウファ!」
ヨードがロウファの背後から突進してきたイノシシの魔物を盾で防ぎ止める。
そこへ俺が横から魔物の身体に剣を突き刺して絶命させる。
最初の方は順調に討伐できていたんだが、徐々にこちらにも魔物たちが集まり始めてさっきから今の様なギリギリの行動が多くなってきた。
そろそろキツイな……………。
まだ大事には至っていないがこれ以上進めば俺たちまで魔物の群れに呑まれる可能性が高い、この中を一人踏ん張ってるオーズさんをマジで尊敬するわ。
「これ以上は闇雲に進むのは危険だね、体力が持たないよ」
「だーもう!邪魔だこいつら!!」
大規模範囲魔法で蹴散らすのもアリか?けどオーズさんたちの現在地が分からない以上、下手に撃てば巻き込むかもしれねぇ――――――ってそうか!!
俺は真上に向けて魔法を撃ちだした。
指先程度の光を上げて破裂音がするだけでそれ以外の何の効果も無い魔法、けど俺の意図をきっとオーズさんなら察してくれる。
この暗い樹海の中でもこれだけの光で照らせば――――――遠くの方で何かが光った気がした。
「オーズさんはあっちだ!!そう遠くない、一気に押し切るぞ!!」
「おっしゃあ!!」
「う、うん!頑張るよ!」
囲みこもうとしていた魔物の群れを強引に突破する。
そして向かった先には、魔物たちが俺たちに背を向けている場所があった。
きっとその向こうにオーズさんたちが居るはずだ。
「オーズさん!!」
俺はそう叫ぶのと同時に、つい最近使えるようになった雷の魔法を背を向けてる魔物たちに御見舞いする。
俺たちに対応する隙も与えず囲みの一部が焼焦げ、崩れ落ちたその先にオーズさんの姿が見えた。
負傷して動けない男子生徒を庇う様にして睨みを利かせていたところへ、俺たち三人がそれらの屍を越えて合流する。
「ルシード、それに貴様ら………良くぞ来てくれたのである」
「負傷した奴らは俺たちに任せて下さい!」
「オーズ先生は魔物をお願いします!」
「任されたのである!!」
負傷した生徒って足枷が無くなったオーズさんは頼もしく、堂々と言い放った。
「覚悟せいよ魔物ども…………吾輩の生徒を傷つけた罪はその命を以て償うのであるッ!!」
そこからは圧巻だった。
俺たちの周囲から魔物たちが次々に屠られて行く、オーズさんは爛々と目を輝かせながら、鬼気迫る勢いで、嬉々とした表情で魔物を駆逐していった。
ティムの件で相当ストレスを溜め込んでいたらしい、今滅茶苦茶良い顔していた。
「これで実習の間、肉には困らぬであるな」
粗方群れを一人で壊滅させかけていたオーズさん、ゆとりが出来たのかそんな軽口までもが飛び出す。
俺は負傷した生徒に治癒魔法をかけながら、それらの光景に圧倒されていた。
俺のまだ拙い治癒魔法でも応急処置程度にはなったらしく、負傷した生徒の顔に生気が戻る。
ホッと一息つく間もなく、気を失った生徒をヨードに背負ってもらい拠点へと駆けだした。
「オーズさん!!拠点に戻ります!!」
「うむ!周囲の魔物など気にせず駆け抜けるのである!!」
負傷者を背負ったヨードを俺とロウファが気遣いながらも駆け抜ける。
そんな俺たちを逃すまいと襲い掛かる魔物たちからオーズさんの餌食になって行く、それでもやっぱり数が多いので俺もロウファも迎撃できる分は多少手伝ったりもした。
「ヨード!あと少しだ!行けるな!?」
「……………やってやるさ!!」
ヨードの限界が近い、ロウファも魔物たちの牽制をしているので疲労の色が濃い、それでも拠点が見えた事で奮起してくれていた。
そんな時だ。
樹海全体に響き渡るような重々しい音が聞こえてくる。
走っていて分かりにくいが地面が揺れてる気がする。
そして、
「ぬぐっ!?」
オーズさんが呻き声を上げた。
見るとオーズさんの正面にはイノシシの魔物が突撃して来ていた。
けれどそいつは象くらいの大きさがあった。
その突撃から俺たちを守る為にオーズさんは身を挺して守ってくれていた。
「群れのボスであるか…………」
突撃の勢いを完全に殺されると、そいつはオーズさんから離れて行った。
オーズさんが追いかけない所を見るに、俺たちがロックオンされているらしい。
樹海の闇にボスの漆黒の毛並みが溶けて行き、こちらからは完全に見えなくなっちまった。
すると再び地響きが起こり、闇の中から突然ボスが現れたように見えた。
獣のくせに目の錯覚を利用した随分と賢い戦い方だった。
けれどそれも、相手が悪すぎた。
「二度は通じぬのである」
オーズさんはボスの突撃を難なく受け止めると、その鼻先に拳を叩きこんだ。
ボスは踏ん張りを利かせてその一撃に耐えたようだが、
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
一人数の暴力――――――とも言えるくらいの激しいオーズさんのラッシュに、ボスの上体が浮いて来る。そして、
「吾輩に勝つにはまだまだ筋肉が足りぬのであるッ!!」
地面スレスレから振り上げられた拳が下あごに直撃し、ボスの巨体がその衝撃で仰向けに重量感のある音を響かせて、地面に倒れ伏した。
「すげぇ……………」
「とんでもないね…………」
ロウファとヨードが呆然とそんな事を言っている。
オーズさんのこういうところは今までに見て来てる俺でも、ちょっと感動した。
だって、あの巨体が仰向けに倒れるんだぜ?
格闘技ファンってわけじゃねーけど、間近で見ててすげー興奮した。
それは拠点に居た連中も同じだったようで、拠点の方からは大歓声が聞こえてくる。
「皆無事であるか?」
「はい、負傷者は多いですけどリズ先生が付いてるので問題無いと思います」
「うむ!では凱旋である!」
拠点に戻った俺たち三人は、後続班のみんなに囲まれて無事を喜ばれた。
こそばゆい感覚になったけど、悪くない。
何より、みんな無事だった事に一番安心した。
感極まったリズ先生がオーズさんの胸に飛び込み、周囲は囃し立てる事も無くそーっと二人から距離を取り、見ないふりをしてあげているのが何とも微笑ましかった。
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