第23話 一触即発!?
「ルシードです。宜しくお願いします」
最早スラスラと出て来る自己紹介、これから俺が通う事になる教室にはまばらな拍手で歓迎された。
シルヴィオとモアとは同じクラスのようだ、目が合うとシルヴィオは口元だけ笑い、モアは満面の笑顔で手を振って来た。
そんななか鋭い視線を向けてくるのが金髪う〇ことその取り巻きだった。
昨日、今朝とシルヴィオと食堂まで一緒だった事から、シルヴィオと同室である事が既に知れ渡っているようで、
「シルヴィオさまにケガでもさせたら承知しません事よ!!」
等々、食堂でギャーギャー喚かれてげんなりした。
何?お前シルヴィオの母ちゃんなの?
因みに担任の先生はファナル先生だった。
ビシッとした雰囲気を纏わせたファナル先生は、なるほどきっちりとした先生に見える。向こうは会った途端に頬を引きつらせながらも挨拶をしてくれた。
そのファナル先生に指定された席へと向かう、この教室は長机を二人で使うらしい。
けれど俺の隣には誰もいない、長机を独り占めとはなかなかに気分が良い。
朝の連絡事項を伝え終えたファナル先生はそのまま颯爽と教室を出て行く、そんな姿が”自称デキる先生”では無い事を物語っていた。
それと入れ替わりに一時間目の授業を行う教師が入って来る。
ファナル先生の時とは比べ物にならない程の緊張感が漂う、どうやら厳しくて怖い先生らしい事を察した。
張り詰めた緊張感の中、授業は粛々と進んで休み時間。
クラスメイトが俺の所に競い合う様にやって来て質問責め――――――……なんてのを警戒していた俺だったが、至って普通に皆思い思いの休み時間を過ごしていた。
盛大に肩透かしを食らった気分だったが、ギャーギャー騒がれなくて寧ろ良かったと思う事にした。
「ルシードくん、同じクラスだね?」
教室で俺に初めて話しかけて来てくれたのは満面の笑みのモアだった。
そんな嬉しそうにされると、何か照れくさいじゃねーか。
「助かったよ。わからないことがあったら頼らせてもらう」
「うん。任せといて!」
そうしてモアと談笑していると、
「オイ!!お前!何モアちゃんと馴れ馴れしく話してんだよ!?」
俺は突然肩を掴まれて、力任せに無理矢理振り向かされた。
そこには俺の肩に手を置いた同い年にしてはガタイの良い男児が、鼻息荒く俺の事を睨みつけていた。
コイツはアレか?ガキ大将的な奴か?まだ異世界には生息してたんだな?
「デラくん、やめて!!私が誰とお話してもデラくんには関係ないでしょ!?」
確かにそうだ。
デラとやら?ストーカー気質でキモいぞ?
「モアちゃんは黙っててくれ!これは男と男の問題なんだ!!」
何処がどう男と男の問題なんだ?何の事かさっぱりわからん!
モアとお前の問題か、他の男と話すのが許せないとか言うお前の度量の問題だろ?
なんにせよ決闘か?カチコミか?受けて立つけど負けてもビービー泣くなよ?
「ルシードとか言ったな!?モアちゃんは既に俺とペアなんだ!!お前はひきこもりがり勉とペアでも組んでろよ!?組んでもらえるもんならなぁ?」
「…………あのさ、えーっと誰かはわからないけど、ペアって何の事?」
「しらばっくれるなよ!!イザベラちゃんから聞いたぞ!?お前、モアちゃんを昨日から狙ってるだろ!?」
「え!?そうなの!?」
待てモア、どうして嬉しそうに目を輝かせてこっち見てるんだ?
ややこしくなるからちょっと黙ってろ。
それとイザベラって誰だよ?俺はまだクラス全員の名前とか知らないからな?
いつでも殴り掛かって来そうなデラ?くん、その後ろでは金髪う〇この取り巻きたちがニヤニヤと陰険な笑いを浮かべていた。
あ~コイツ金髪う〇この取り巻きたちに踊らされやがったな?
きっとコイツはモアと何らかのペアを組んでいて、俺が現れたせいでモアとペア解消になるのが嫌だから俺に文句つけに来たって事か?
めんどくせえ………けどさっき男と男の問題なんだって言ったよな?
良いぜ?俺に文句があるって事だよな?ルシード・エンルムの文句は俺に言え!!
「止さないか、フェデラー!!教室で喧嘩しようなんて野蛮にも程がある。ルシードは本当にまだ何も知らない、寮の事だって碌に知らずに昨日到着したばかりなんだから」
これからって時に横やりが入る、シルヴィオだった。
俺とフェデラーとの間に手を振り払って割って入り、俺を背に庇う様にして対峙した。
「チッ………なよなよした”王子様”に庇われやがって弱虫野郎が、もう二度とモアちゃんに近付くんじゃねえぞ!?」
「それを決めるのはキミじゃない、モアさんだ」
シルヴィオを通り越して俺に向けた言葉に、シルヴィオは律儀に言い返す。
フェデラーはもう一度忌々しそうに舌打ちした後、ずっと俺を睨みつけて威嚇しているらしかった。
おーおーイキってんなぁ………それにしてもモアも案外って言うと失礼かもだが、モテるんだな?クセはかなり強い奴のようだが。
「ありがとう、本当に意味が解らなかったから助かった」
手を出しそうになっていたところを止められて不完全燃焼ではあったが、助けてくれたのは事実なので素直に御礼を言う。
転入初日から問題を起こす所だった………ロイさんとヘレンさん、それにアルフォンスがそれ見た事かと嘲笑うのが容易に想像できる。
「構わないよ、ルシードは僕のルームメイトで親友だからね?助けるのは当然さ」
ん……?いつの間にか親友に成ってるが、まあ良いか。
「シルブィオ、ペアって何のことか教えてもらっても良いか?」
何かモアも話したくてうずうずしてたけど、フェデラーがまだ睨んでるから余計なトラブルを避けるためにシルヴィオに訊いた。
金髪う〇こどもも何か睨んできてるんだが、フェデラーを
「今度学校全体で開催される模擬戦闘試験の大会があって、そのペアの事だよ」
「模擬戦闘試験?大会?」
「男女二人一組ペアを組んで授業で模擬戦闘の実技試験を行うんだけど、学年でそれぞれ6組が代表に選ばれて別の日にトーナメント形式での大会を行う、結構大きなお祭りみたいになってね?その日だけは家族の観戦も認められるんだ」
「つまり授業参観って事か?」
「まぁそんなようなものだね?でも6組に選ばれないと観てもらえないからみんな結構必死なんだよ」
なるほどな、代表に選ばれれば1年に一回の長期休みにしか会えない家族に元気な姿を見せられるだけじゃなく、頑張ってる姿まで見てもらえるって事か。
ロイさんは正直どうでも良いが、ミューレさんには見てほしいな………そこで優勝すれば喜んでくれるだろうか?
ミューレさんが誇れるような息子に一歩近付けるだろうか?
迷惑と心配をかけたからな、こういうところからしっかりと実績っつーの?を創って行かねーとな。
そんな思案に耽っていると休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り響き、思考を中断した俺は説明してくれたシルヴィオに御礼を言い、模擬戦大会に参加するためにファナル先生にペアの事等を相談してみようと決意した。
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