第2話

「なつめちゃんたすけてぇぇぇ!」

 二学年になってからの、いつぞやの昼下がり、篠葉が唐突に泣きついてきた。潤んだ瞳があまりにも綺麗で、少しばかり硬直してしまった。

「なつめちゃん?」

「あ、ごめん。何、どしたの?」

「あの、宜しければなんだけどね…」

 なんだか申し訳なさそうにして、でも甘えてくれているようにも見えて、その姿を愛おしく感じながら、私はつい手を伸ばし彼女の頭をそっと撫でた。

「なーに、どうせ英単見せてとかそんなんでしょ?いいよ、これで良ければ使って。」

「え、いいの?!ほんとに、ほんっとにありがとうなつめ様ぁぁぁ!!あ‎、時間やばいや、じゃね!ほんとにありがとね!!」

 泣いて拝んで笑って、まるで嵐のように去っていった。もうそこに篠葉はいないのに、ニヤケが止まらなかった。クラスが違くなって、あっちからは滅多に来てくれなくなったのに、ちゃんと私を頼ってくれた。それが物凄く嬉しくて、今会ったばかりなのにまた会いたくなってしまった。

 あの元気に咲くひまわりのような笑顔が見たい。

 あの少し落ち着きのある、でも時々甘く聞こえる声を聞きたい。

 そばにいたい、そばにいて欲しい。

 触れたい、触れて欲しい…。

 ただ、この関係を崩したいのではない。

 怖いんじゃない。単に一線を超えたくないだけ。

 私のこの愛は、「友情」だって信じてる。

 この美しき友情を、今までの私の手が入れたかったモノを、もう手放したりはしたくない。

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消えぬ心のヨリドコロ @rin_yamatogawa_

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