また、桜の咲く日に
黒沢さんの結婚式の写真が送られてきたのは、9月の半ばになっての事でした。"貴女だけには話しておきたいの"と、事前に"ささやかな結婚式を挙げる"事を話してくれた時の、愛結さんの申し訳なさそうな顔を今でも覚えています。
"今はただ、静かに2人の時間を過ごしたい"
その時に、黒沢さんの願いを知る事ができました。同時に、それが1人じゃなくて2人の願いだったという事も。舞台に組み込まれていた彼と、知らず舞台に飛び込んだ彼女が、これからは誰にも邪魔される事なく幸せなこれからを送って行ければと、陰ながら思っていたりしてます。
愛想の無い新郎の笑顔と、青いドレスが良く似合って一層綺麗な新婦が、仲睦まじく写っている写真だけでも眺めていて嬉しくなるのに、"馬場ちゃんにだけ"、"馬場さんにだけ"って、2人が私に書いてくれた手紙は嬉しくて泣いちゃいました。
でも1つだけ、我儘を言わせて下さいね。
"ごめんなさい"って言うなら、私の事を心配するなら、そんな言葉で始めないで下さい。"ごめんなさい、いつも振り回してばかりで"って書いてたけど、私はそうやって引っ張ってくれる黒沢さんがいてくれたのが嬉しかったんですよ?
それが"仕組まれた舞台"であった事を忘れて、何があっても堂々と、それでもって何者にも縛られない黒沢さん。奥さん思いで家族思い、それに皆が"カッコいい"と口を揃えて言いたくなってしまう黒沢さんが私は好きです。
いつも笑顔で、悲しそうな顔も夫の悪口も絶対に見せない愛結さん。いつだって誰よりも美しくて、女性のお手本みたいな貴女が大好きです。
私は2人に会えて、本当に幸せでした。
こんな手紙をくれたから、ちっとも寂しくなんてありません。これからの事や、本当の気持ちを話してくれた事が嬉しくて。でも、暫くしたら寂しくなるかもしれません。その時は黒沢さんに会いに行くので待っていて下さい。
―――それではまた、桜の咲く日に会える事を祈って。
Grano-La~花嫁は頂いた~ Fin.
Grano-La~花嫁は頂いた~ うましか @Pudding_Bugyo
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