第2話 疑問は尽きねど
銃声が鳴った後、
「え…?」
「何を呆けているのですか?だらしない顔をしてないで、貴方も早く構えてください」
「いや…え…?俺を撃ったんじゃないの?」
「やはり一人で逃げますか…」
「待って待って!?分かったから!」
酷い言い様なのはこの際置いておくことにした
改めて握り直した
「貴方にはあまり期待できそうにもないので、基本的には出来る限りの援護をお願いします」
「わ、わかった」
「間違いがなくとも私には当てないように」
「間違っても当てないように気を付けるわっ!」
「では」
本当に期待していないのか、少女は
期待されても困るが当てにされないのもそれはそれで傷付く、思春期男子の
少女の冷淡な判断によって傷は付いたが、しかし落ち込んでばかりもいられない状況ではある。
(なら少しでも見直されて、信用されないと…)
しかし
(こんな化け物…どうやって対処すりゃいいんだよ…)
援護と言われても、
(荷が重すぎる…でも考えろ…!こんな何もわかんねぇまま死ぬなんて冗談じゃねぇ!)
リィィン…
「…!?」
「ぼさっとしないで下さい!」
「えっ!?」
パァァン!
パリン…!
振り向いた後の
直後に驚く
そして模様はガラスが割れるような音と共に、砕け散っていった。
模様を書き消された化け物はどこかに逃げ去って行く。
(さっきからしてた音はこれか…!)
「魔法陣は完成させないのが鉄則です!そんなことも知らないのですか!?」
「知らないよ!理由を話してる暇はないけどさ!」
「なら今覚えて下さい!」
「そりゃもう思い知ったよ!」
かなりきつい口調で言われ
そして今度こそしくじるわけにはいかないと、そう心に刻み込んだ。
リィィン…
(そっちか…!)
今度は左側で耳鳴りのような音が
すかさず
サバイバルゲームはかじった程度だが、
的は大きく距離もそうない為、自分でも当てられるはずだと意気込み、引き金を引いた。
パァァン!
「んぐっ…!」
パリン…!
反動に対しては何とか呻くだけで耐えることに成功するが、やはり手に持つものが凶器である事実は隠しきれないと悟る。
しかしそれを受け入れる間もなく事態は進み、先程から何度も聞いてるガラスの割れたような音が聞こえ、何とか魔法陣を壊すことに成功したことを先に喜んだ。
「うしっ…!」
「伏せなさいっ!」
「うぇっ!?」
パァァン!
直後、反射的に伏せた
その銃弾は
「うっ…ぷ…!?」
加工された肉を見慣れていたとしても生き物を解体する現場に抵抗があるように、フィクションで見慣れた光景はリアルの衝撃に通用しない。
(グロ…過ぎ…だろ…)
「何を狼狽えているのですか!」
(無茶言うな…!)
しかしそんな事情があると思いもしていない少女は、
リィィン…
「っ…そっ…たれがぁ!」
パァァン!…パァァン!
そんな苛立った
まさにすべての不満をぶつけるにはうってつけとばかりに、
少女のように華麗に、とまではいかないが、銃を撃つのが三度目にしては上出来な射撃であった。
「…やれば出来るじゃないですか」
リィィン…
「次はそっちかっ!」
「「ギャギャギャッ!」」
「新手ですか…!」
「さっき逃げたヤツか…!?」
「なんで逃がしたんですか!?」
「俺は状況を飲み込むのに必死なんだよ!さっきからずっと!」
「普通は逃がしませんよ!」
「普通がわかってたらそうだろうな!」
しかし新手の登場により現状は悪化した。
そのことを
「反省だろうが謝罪だろうが後で全部やるから!今をどうにかしようぜ!」
「貴方がそれを言いますかっ!」
しかし
余裕があるなしの違いはあれど、二人は油断なく化け物に相対していた。
新手というイレギュラーは起きたものの、化け物の数は着実に減っていく。
(やっべ!弾が…!)
しかし銃弾は無限ではなく、やがて
(マグは…ある!だけど中身は…どうなってんだ…?)
本来であればサバイバルゲームに参加するための玩具に過ぎないが、その中身はしっかりと実弾と思えるモノに変わっていたからだ。
(まぁいい…!使えるなら使うしかねぇ!)
銃を買ってからひたすら早替えの練習をしていた成果が、遊びではなく命のやり取りで生きるとは、
「くたばれっ!」
パァン!…パァァン!
「ふっ…!」
パン!パァァァン!パン!パァァン!パン!パァン!
さらに言えば、
「これでっ!」
「最後ですっ!」
パァァン……!
二人を中心に化け物の死体が数多く転がっており、その惨状とは裏腹に、落ち着いた静寂が夜の森に訪れた。
(終わっ……た…?)
その静けさに一足遅れて、
「っ…ぶ…えぇぇ…!」
そして
疲れと混乱、さらには生き物の大量の死体に、血と肉と鉛と火薬の混じった匂い、ただの一般人でしかなかった
先程まで必死で考える余裕がなかった分、それらの要素が一気に押し寄せた結果、
「軟弱ですね」
「ぅ…るっ…うっ…せ…」
そんな状態の
だが
「はぁ…はぁ…」
「分かりませんね。何故、貴方のような人がこんなところにいるのか」
「はぁ…お…んっ…俺が…聞きてぇ…よ…」
「自分の事でしょう?ますます理解出来ません。怪しいとしか言いようがありません」
「だから…俺が理解…出来てねぇんだよ…」
(あぁ…!俺が一番この状況を教えて欲しいわ…!怪しいのもわかるけど…!)
息を切らして俯いている
しかし少女は何も答えになっていない返答に納得するはずもなく、一度解いた警戒を復活させて、
そして
(はぁ…もう疲れた…)
「とりあえず…さ」
「はい…?」
自らが怪しいことも、この状況の理由を教えてくれる人間もいないことも良くしている
「一回休ませてくれね…?」
「……はぁ………」
問題の先送り。
一番の理由は疲れたという他にないが、結果としてはそうなる。
そんなある意味度胸のある選択をした
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